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「SEASON 0;the dark chronicle」あとがき

まずは第0シーズンという、新ジャンル『エロ黒い』話を読んでくださり、誠にありがとうございました✿
『SEASON 0;the dark chronicle』、
つまりは題名そのまま『黒歴史』的なお話でした(wwwwwwww)

シーズン締めにはお約束のあとがきです(`・ω・´)9m
長いですし、夏場ですのでちゃんと飲み物をご用意下さいね❤(マジかよwww)

一人称で各キャラの心情をキッチリかけて非常に楽しかったです!
「このキャラに愛着を持てた!」といったご感想コメ、うれしかったです~(*>∀<)
ただ一人称ゆえ、『同じシーンでも他キャラが本当は何を考えているか』『事実はなんなのか』が
実は出しきれてなくって、予定より捕捉のため長くなったり、いっそのこと削ってしまえーとなって部分もありました。
んもう、完全なる私の力不足です(|||´д`)! っていうかこれを書きながら、途中で三人称にすりゃ良かったと今更気付く!


当該番外編で実は悪役としてキャスティングされた、わが息子の弁護は記事後半でじっくりしてます(爆笑)
マジイアン、相変わらず不憫 。゚。゚。゚(゚ノД`゚)゜。゚。゚オーイオイオイオイ  







使用したワールド&LOT



■『エリン達の隠れ家の島』のワールド
・国は芸術の国イタリア!芸術家肌で古めの物好きのアレックスは、ハアハアもののルネサンス発祥の国ですね
 白尽くしのサントリーニ島ぽいイメージが脳内にありましたが、
 第一シーズン当時はそんなの作る能力も探す能力もなく、やっと見つけられました!

サントリアーニ島ぽい海岸部、ヨーロッパの町並み、田舎の風景(アデルの田舎とか)が含まれている、
奇跡のようにピッタリのワールド!!!!
スペイン・カタルーニャを基調にした、「Nilxis Designs」さんの「Empordà
住民付き。ワールドサイズは、なんと「World size: 2048x2048 (large)」
  ( ゜ д ゜ )!?ででででででででけえええええええええー!!!最初はもうただただびっくり!


本当に素晴らしい大作ワールド。町並み撮影だけでも楽しかった!
確か、「サントリーニ シムズ3」とか「ヨーロッパ シムズ3 ロット」を、英語検索して見つけたサイトさんです。


season0-01 (40)[1]
もちろん住宅ロットの中は軽量化のため基本家具はありませんが、
「海岸部(白い街)」と「中心部(カラフルな街)」、そして点在するお城や灯台(入れる)を見ると
ここでの通常プレイは絶対たのしい!とサンセットバレーばかりの私は大興奮(´∀`* )
ホントどこもかわいいかわいいかわいい!



「エリンが育った寺院」や、「蜘蛛看板のレストランのお宅」、「アレックスに食べられたモブ子のサマーハウス」などなどなど、
隠れ家の島で登場した建物は、勿論全てこのワールドのLOTです。
話にあうように看板を作ったりし、内装や庭だけなどをいじらせていただいて使用しました✦


ただ、かつて使っていた隠れ家『ウェイブ』のLOTは第一シーズン終了と共に、
 「もう、ここは君タチ夫婦には必要ないね(かつてないドヤ顔」で消去してしまい、再建築と言うアホな事態に(遠い目)

当然CCもかつてと同じものを集めなおしましたが、壁紙など一部入手先が分からず完全再現はムリでした(;´-ω-`)
でも外見はほぼ再現&変えたいところは開き直って変えてます。

第一シーズンの隠れ家。SSちいさっ!w
元々フリーウィル用だったのと、
建設当時は「moveobjects」チートで沢山デコるということを知らなかった管理人が作ったのですごいガラーンとしてる。
ちなみにここは元々、1階が寝室、2階がリビングキッチンダイニングという、日本でも流行りだしてる形式です✿
(1日でいちばん長居するリビングが一番日当たりがいい&見晴らしがいい)


番外編中盤まで通常の本編と違って建設&改装ラッシュだったので
(いつもは基本エリン達のサンセットバレーの家が舞台ですし^^)その楽しさに目覚めました。


元々第一シーズンでも登場してなかった箇所も楽しく改装。
初登場なアレックスの部下時代の寝室。
全景入れたくって魚眼レンズぽく歪んだSSになっちゃった。ずっと見てるとグラッってする(笑)

アトリエ部屋はないので、エリンがいるときは自室で絵が描けるようにもしてあります。
いないときはリビングで描いてますが。
でも油絵臭いのでベッドから一番遠く、かつ空気の入れ替え(ドア)しやすい位置にイーゼルを設置しているアレックス。
個人的に注目してほしいのは、床にきっちり敷いてる汚れ防止シートです(ノ∀`) キレイズキ!wwww




■若イアンのモノトーン時代の家
もちろん場所はサンセットバレー。

第1シーズン当時のSSのモノトーン部屋。懐かしい。


連載本編第2シーズンでは、イアンの家は南国風に『パンプキン』影響で大きく改装されてます。
外装はいじってません。


・・・・かつて使っていたイアンのモノトーン内装は第一シーズン終了と共に、
 「もう、君には必要ないね(かつてないドヤ顔」でデータ消去してしまい、再改装と言うアホな事態に
(このくだり上でもあったぞ!!!wwww)
コレに懲りて今回使用したLOTはちゃんと保存しようと誓いました。

で、番外編のために改装し直したモノトーンのがこちら。
ちゃんと白天井に戻してますwwwww

第1シーズンで、初めてエリン達を出迎えたときにはなかった黒浴槽。

イアンとしては要らないし、さっさとどかしたいのに、自分ではどうしようもない理由でどかすことが出来ない。
若イアンの置かれてる状況の象徴の浴槽です。
このとき所詮まだ22歳の若造なので、自分じゃどうしようもない何かに縛られ振り回されて、色んなことが手に余ってます(´∀` )
あとアデルと風呂エッチさせたかったんすけど(たぶん皆さんお気付きでしょうwwwww)
第1シーズン、アレエリのお風呂での初ウフフとの対比で、衝動的だけどその結果が真逆というのも面白いかなと思いました。



■スターライトショア、ツインブルック
スターライトショア!この街の作りがもろLAハリウッドだったので私、小躍り状態です。
ところで私の中で、サンセットバレーはアメリカ西海岸のLAなイメージがあって、
ブリッジポートは東海岸NY&ワシントンのミックスかなぁと(*´∀`*) もしかしてモデル都市とか決まってるのでしょうかね??

だから東海岸育ちのアレックスは真面目で落ち着いてて、あと無意識にちょっとなんだか「お高い」。
西海岸育ちのイアン&ダイアナは比較的陽気で軽いと考えてます(笑)  

LAの「映画スタジオを置ける土地の余裕があるちょと郊外のバレー地区=サンセットバレー」と
「娯楽街=スターライトショア」だとして、
この2つが車で10分くらいという脳内設定をしていたので、
スターライトショアで遠景でバレーのものらしき灯台の光が見えたときには、うおおおおおおおおお!!!!////

トムの家@スターライトショア

スターライトショアに元々ある住宅ロットで、一番凄い豪邸を街シムから徴収しました(すまんね、フィネガン:笑)
オタク家として本棚づくしにし、台所は完全改装。
庭をお花をセットしました。
本当はあのお庭でトムアデ夫婦イチャつかせたかったけれど、文字数の関係上カット。


イアンと3バカとアデルが通ったクラブ@スターライトショア

既存のクラブを改装しました。
チートで元々天井が高く設定されてたのかな?ITFの2階ブチヌキ本棚がすごく役立ちました(*´д`*)
ここでの照明が紫なのは特別な意味はありません(笑)もしあるとすれば、私が好きな色だからwww
20140818.jpg
最終話ラストで懐かしきお立ち台的なところで踊らせたかったのですが、文字数の関係上カット。
檻モチーフになってるのはエリン仕様のためでした(;´∀`)




トムの実家@ツインブルック

TSRのchristmasテーマで絞って、「The Night Before Christmas」(CCあり)を頂戴しました。
こじんまりしてて、むっちゃくちゃかわいい////本当にかわいいLOTです。
全て全てがクリスマスカラー(*>∀<)!(テンション↑↑) 駐車場&書店部分を増築・改装してます。







登場人物について




■3バカについて
ちなみに3色のヒントは、某教育テレビの「お●ゃる丸」からwwwww  あのおばかカワイイのは反則(*>∀<)
ライトショアの街シム整形して青をつくって、
さらにそれを整形して・・・という形で、おしゃれチャライを目指して3人を作成。

彼らは個体じゃなく集合体でした。
そのためセリフは誰が何を言ってるのか、また名前は出たものの「ケン」「ロン」「ドン」はそれぞれ誰なのかなど
分かりにくようにしてます。名前も実際決定もしてません。
脇役にまで沢山の名前を出してしまうと情報過多かな~と考えて、色区別にしました。



イアンが本命だった赤色くん。
当初からVIPルームの手配したり、アデルに最後の忠告したりという気遣いさん。
防衛大卒の将来のエリート軍人という設定で、イアン達と遊んでたのは大学卒業まででした。
4月になって国外基地配属になったという脳内設定ですが・・・軍人でぴんと来た方素晴らしいwwwwいつかきっと彼は何かの形で再登場するでしょう。でなきゃ彼だけこんなに設定盛り盛りしません(*`・ω・´)ハアハア



青色は一番年下だと思います。
黄色はアデルには「もっと(一番)バカ」と言われていたM疑惑のある彼(笑)
惜しみないM的な愛をアデルには捧げてましたww もちろんオフザケですが。
黄色もサイドストーリーで思いついた話があるので、いつか書けたらいいな(*´ω`)







■若エリン&若アレックス
第1シーズンの補足設定を全部ぶち込んだ彼ら!!!(*´д`*)-3-3-3
楽しかったですが後半は擦れ違いっぷりが書いてて切なくなってきましたww
第2シーズンの隠し子騒動で、アレックスの過去の恋愛遍歴に触れられたことでワンクッション入れましたが
若アレックスのアレックスが荒れックスだったことを容赦なく書けて非常に楽しかったです。

若アレックス20代前半だし、
本命落とせそうにないから、とりあえず他と・・・・って結構フツーにあると思うのですよね( ´∀`)
幻滅した方がいらっしゃったらごめんなさい。だってアレックスが右手じゃイヤだって(んちょおおおおおおおおおお)

でもこの顔が撮影できたのは最高に楽しかったです。うははははははははは!!!/////

お気付きでしょうが意外にベッドで荒々しく、いけずな言葉を言っちゃうのがアレックス。
モブ子へのいけずは愛がありませんでしたけれど。
結婚した現在でもエリンとの1回戦目は結構がっつきさんだと思います。そしてそのあとちょっと照れる。絶対照れる。
でも2回戦目いけたらいく(爆笑)マジアレックス、エリンエリーン。

でも実はアレエリ夫妻のウフフって、第1シーズンの例のシャワーしかないんですよね(超絶滝汗!!)
だからこりゃいかん!と思って、過去編では頑張ったけど、アレエリそれぞれが頑張ったのモブ相手だった。
頑張りどころ間違えてた・・・ ( ´・ω・)


久し振りの赤ルージュ&EAヘアのエリンは、懐かしくて、不思議と幼く見えました(*´v`*)

もう既に書き終えている第1シーズンですが、
ずっとあったエリンへの「愛憎」の「憎」がエリンの生い立ちと正体を知ることで全部消えて、
やっと自分でも「愛であるもの」と自らも認められるものに昇華できたアレックス。
アレエリの当時を書けたのはすごい達成感でした。
そして確認するたび、第1シーズンのSSを直したくなる葛藤!(爆笑)
あとは君たちは思う存分にバカ夫婦すればいいと思うよ!!!!!!!!!!!!!!!!!(*>∀<)






■トム・バーネル
どこかの途中でメガネ放棄してしまったメガネキャラとは違い、初志貫徹でメガネメガネしてもらいました!!
正直今回書いてて前半は一番書きやすかった(ノ∀`) 脳内暴走系オタク・トム。
よくオタクを主人公にしたマンガとかって、勝手にマイナス捕らえ方して恋愛フラグ逃したり、
変なところで食いついたりとかあるので、それを意識しました。でもヘタレなわけでは決してないんです。

特質は「硬派」「仕事中毒」「家族志向」が入ってますよ!!( ´v`)   ちなみにアデルにも「家族志向」あります。
若イアン(第1シーズン当時)は「誘惑的」入ってるので、完全相反する感じですね!
だからトムはイアンが大嫌いですwwwww(ノ∀`)アッハッハッハ!!!

私のキャラは皆が皆仲良くなりがちなので、そうう意味でもここには仲悪くいて欲しいと思っています。
それぞれ理由や信条があるからこそ、仲が悪いことだってあるかと思うのです。
あと、そのほうが面白そう(ひでえwwwwwwwwwww)


名前は、管理人が大好きな某ハリウッド俳優から。
レスタト様ね、レスタト様!/////
顔は実は当初はあんまりカッコよくない、男くさい感じを目指してたはずが・・・・
気付いたら相当気に入った顔にできあがってました。(*´д`*)黒目がちいさめの三白眼がポイント。


一応34歳ということで恋愛経験はありますが、付き合ったのは3~4名くらい。
3年4年と全て長く続きし、大切に誠実に付き合うタイプ。でもきっと女性からのアプローチで始まってたものが多そうです。
なので、いわゆる付き合う前の駆け引きだけが非常~~~~にヘタ(というより鈍い)という感じです。
逃した恋愛フラグは山盛りかつ、自覚はなし!すがすがしい!(笑!)


まさか30過ぎの男がチェリーだと思ってたりなんてなかったですよね?(・∀・)ニヤニヤ
恋愛人数は少なくてても、経験回数が少ないわけじゃないですからね。
30代男の「しつこうまい」感じ。
時間をかけまくって、初回からアデルも翻弄するしつこい前戯。(さらっと何書いてんだ)






■アデル
Egoistで、「カッコイイオトナのオンナ」ですんなり身を引いたアデル。
ただ短編当時でも「結婚するの」は試しの言葉だというのは決めておりました。
(イアン側モノローグでも「面倒になりそうなら気づいていないふりをするのも心得ている。」ですので、
 アデルが本当はどうして欲しいのかには気付いてました)

でも「本当にプロポーズを受けるか悩んでいるときに、イアンと寝てた」だと、そんな女嫌いなので書きたくない(だよね笑)
そのため最終的に”トムの名前を利用した”というアデルに決まりました。

番外編を書くにあたり、すでに第2シーズン本編で子煩悩&ダンナとフツーにうまくやってるのは既に決まっていたので、
そこから根っこをつくって、今回のアデル像に。
アデル自身は「ちゃんと真面目に付き合ってる恋人」「結婚」には敬意を払うタイプです。
両親が別れてるので、そーゆーのは大切じゃんっていうのが分かってる。ここは母親を亡くしたイアンと実は共通してる部分。

彼女の特質はもちろん「ディーバ」(`・ω・´)9m✦非常に攻撃的・衝動的・短絡的・自己完結型。
ただトムと同じ「家族志向」ですが、そしてさらに「臆病」もあります。
臆病ゆえ仕事では全力投球したりというのもありますが、そのせいでイアンとちゃんと向き合ってませんでした。
そして彼女自身は自覚してませんが、イアンという人間を黒化させた要因のひとつになってしまった女性。(詳しくは後述)

ちなみに劇中のこの映画は某超有名映画『プラダを・・・』パロディでございます(ノ∀`)アハハ
なぜかというと、アデルは管理人が大好きなモデル・ジゼル=ブンチ/ェン(身長180!)の情報を、
ちょいちょい拝借していたからです。(※顔は似せてないですよ!恐れ多い!///;)
ちなみにジゼル様の彼女の旦那さんの名前がトムだと知ったのはストーリー中盤でした(まじでwwwww)

のちにアデルが女優転身する所はミラ=ジョヴォ/ヴィッチですが、トムと離婚なんてさせないよっ(滝汗)
実は淡い色が好きだけど、似合わないの分かってるから密かに楽しんでる。
このあたりも、「オトメオトメしてる」アデルです。

ブラジル系の黒人移民の家系のイメージです。肌の色&ちょい吊り目なのは、ビヨン/セ意識。
Egoist書いた当時、わが家のシムが白人系シムばっかりだなーと思って、アデルを作りました。
以来、偏らないように昔つくった日本人シムの庸一をストーリーに投入することにしたりしました(*´∀`*)

生まれつきの髪はオレンジで、息子のジョナサンと一緒。
途中で栗色+毛先ピンクにして第2シーズンではなぜか黒髪に(・∀・)黒髪(重要
s0-09 (112)








■トム×アデル
最終話が難産だった最大要因がトムです。
私は一応メモ帳にごくごく簡単にあらすじを作るのですが、大抵それは6割は使われません。
キャラが動くうちに相当脱線する(笑)

プロット段階での当初のトムアデは、
完全にアデルが両方とも二股をしてて、でもまあ大人だから的な煮え切らない3者(ひええええ)
でも彼女があのイアンとわかり、「最初のパーティでアデルを侮辱した男だろう」と怒るトムがアデルとケンカ(ひえええ)
トムが「じゃああいつに確かめてみろ、臆病者」的にけしかけるという(ひええええ)
で、それに破れたアデルをトムが包み込む的な(ひえええええ)

『大人の男女が最悪にドロついたけども、収まるところに収まった的』構想でしたが、
そもそも書いてる人が大人じゃなかったんでムリでした(爆笑)だから7割ボツ!書いてて疲れそうだしねっ(;*´∀`*)

最後は完全にアデル視点にしたので、一人称だとアデルが気付いてないことは書けなかったので、あとがきで補足。
トムは結婚を尊重するアデルの性質を分かった上で、
そして付け込むかたちになってることも分かった上で、結婚をもちかけてます。

アデルも最終回で「(トムを)結婚して捕まえておいて正解だった」と言ってますが、彼女の場合は結果論であり
トムは最初からそうするつもりで一気に畳み掛けて囲い込んだわけです。
本当にずるいことはアデルに明かしてません。
そんな30過ぎた男の、実はずるくて抜け目のない部分。大好物(真顔)
ただの暢気なオタクが、仕事で成功するわけがありません(・∀・)!
20140819-top.png
勢い的に結婚することとなったアデトムですので、子供を作る前に、
「もう少しちゃんと結ばれる必要がある気がする・・・(´・ω・`)、」と煮え切らない気持ちになった、画面の前のあなた!
正解です!(`・ω・´)9m✦  そこは本編第2シーズンに実は続くのです❤








■若イアン
kijikoさんヘアが似合い可愛いすぎて、親ばか大爆発。
ちなみに「ラテン系アメリカ人」イメージのイアンは、ラテン系の曽祖父らへんが移民だったという脳内設定です。
今、決めました。スペイン系という事でお願いします。闘牛の国。(テニス選手・ラファ/エル=ナダ/ルの国:ハアハア)
比較的裕福に育ちましたが、移民家系だから東海岸系の古参の「成功者ジジイ共」への対抗意識が強かった的な感じ。

若いゆえに金と顔に任せて遊んでました。
しかしイアンの相手のモブ女性も、どこかでイアンは「私とはそうならない」「今だけ」と勝手に考え、
本気で飛び込むこともなく。
こういうのは「卵が先か鶏が先か」的に、どちらが先に始めたから悪いではないですが、
そんなのを自分で繰り返しながら、繰り返し幻滅してったのが若イアン。

まだどこかウブさがあったイアンが自分の成功に振り回され、周りに振り回され、
さらに実はアデルの言動に再三傷つけられ、過去のケイティの二股切捨てられたことを振り切れない。
本編じゃ大人になっちゃってるイアンの、そんなところを書けて楽しかったです。
20140818.jpg
ちなみにイアンが第1シーズンで「アレックスを待ちたい」と言うエリンに食い下がったりできなかったのも、
これが根底にあります。
プライドもありますし、そもそも彼は自分だけを見る女性でないとダメなのです。
イアンはかつての自分の両親のような、普通だけれども正面から想い合ってる男女が理想です。

ストーリーでは2回、アデルに触れる描写がありました。
2回目は拒否されましたが。
2040818.jpg
アデルはさっさと忘れてしまってましたが、チラっと見えてはいたがずの、イアンの弱い部分。
一人ぼっちが恐いのです。だからあんな3バカともつるんでました。











■イアン×アデル
今回の番外編の後半は完全にアデル視点からのイアン像なので、イアンがすごい悪い男です。
それでよいのです////
連載再開する第2シーズンの南の島で、イアン達はアデル夫妻と会うこととなります。
その前情報として、特に「トムはイアンには最悪の印象しかない」ことを出したかったというのがあります。

もちろん最初はイアン視点ももう少し多くして、
イアンにはイアンなりの・・・というのもきちんと書きたかったのですけど
一人称だと文字数かさむし、私の文章力じゃ二兎追ったらますます無駄に長くなるだけだ~ということで
イアン視点をばっさりカットしましたww  
20140818 (2)
不憫イアン(´;ω:`)ポロリ ←w
なのでただ実はイアン視点もあると、ちょっと見え方が違います(そうだと思いたい!!:滝汗)

あとがきでいいわけとかみっともないんですが、これから本編で主役になるイアンのために、ちゃんと弁護をををを(笑)
3人称的+捕捉付で振り返ってみます(✿^v^)
文字数の関係上カットされてしまった、イアンの上半身裸SSでいきます(あざといwwwwww)

イアンとアデルの関係は精神的殴り合いの連続でした。
前提として、和解して互いにある程度好印象から始まったはずのイアン宅訪問。

①本物の家でないと見破ったアデル、イアンに「最後は札束の中で一人ぼっちで野垂れ死ね」

前述の通り、イアンは基本寂しがりで人と群れるのが好きです。
Egoist編でもありましたが、仕事と成功により恋人も友人も親戚も失ってるイアンには、
実はアデルのこのセリフはクリティカルヒットですwww


20140818 (4)
②イアン、アデルの携帯でトムの名前を見て、他の男の気配を察知(確信はない) トラウマ、パカーン。
③アデルはイアンに「釣り合わないからパパラッチされんのはゴメンだ」と言い、男としても仕事人としても傷つける
④さらに「それがイヤなら自分が変われ」とイアンに言う


こうして振り返るとアデルさんからの先制攻撃、無自覚ですが結構連続で効く感じのを入れてます。
「媚びるな」って何でも言って傷つけていいよということじゃないのですが。
四方八方に攻撃的だった若アデルの残酷さ。

⑤イアンの苛々ウフフが嫌なアデル自ら「てめーでオナる代わりにするなら他の女とやれ」と言い、イアンも同意

実はこれって決定打です。アデルはイアンのそんなもんまで、つまり全てを受け止める気はないと突っぱねたわけです。
確かに女性としてはイヤかもしれないですが、
じゃあセックス以外で・・・という器用に包み込むことなんてできないのがアデル。
また終始アデルは「イアンに弱さがあるわけない」というのがアデルのイアン像でありました。
20140818 (1)
なお、ストーリーではもはや真偽は重要じゃないかったので入れてませんでしたが、
このあたりでイアンは自分の本物の家に、女を引き入れ始めています。
偽部屋の意義もどうでもよくなるほどイアンの迷走開始。(ノ∀`)アチャー


⑥アデルは『どうでもいいやつら』への優越感を持ち始める
⑦お葬式にいないイアンからの花を見て、アデルは愛情を自覚し始める
⑧アデル、イアンが他の女とのウフフでも、「自分にするのと同じようにしてる」らしい話を立ち聞きし、嫉妬


このあたりから、
アデル自身も起因のひとつになってしまったイアンの奔放さに彼女自身がダメージくらい始めます。
かといって愛情の示し方もわからず、
自分が唯一のイアンの理解者であるという自信が唯一の支え。

⑨ちょっとヤキモチ表明しだすアデルだが、明確な愛情表現はやはりしない
⑩理性で制御できる恋がよいイアンは現状維持を希望し、流す

20140818.jpg
当初からイアンはアデルと恋愛じゃなく、まずはただ親しくなりたかったはずなのですが・・・。
互いのズレが、どんどん大きく(^ω^) ジェンガがズレて重ねられ続けてるイメージ!!

ここでのイアンは残酷です。
アデルの気持ち分かってても、依然としていつも通り。
かつての中華モデルモブ子心を込めてお別れしていた、あのイアンはもう居なくなってます。

⑪モトカノ襲来。イアンはブチギレ黒化してやろうじゃねーか状態、アデルは疎外感。
⑫モトカノ去った後、またアデルに触ろうと甘えたかったイアン。勝負かけるつもりのアデルはその場限りの触れ合い拒否。


(ノ∀`)アチャー (ノ∀`)アチャー (ノ∀`)アチャー (ノ∀`)アチャー (ノ∀`)アチャー (ノ∀`)アチャー

⑬ちゃんとした告白でなはなく、最後通牒として「嘘の結婚話」でイアンを試す
⑭嘘話とわかっていたイアン、そこまでの覚悟がなんて全然ないため知らないフリ
⑮アデル、さらに平気なフリして帰る

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カッコつけ同士がカッコつけまくった結果、お互いに痛いところをつつきまくって、
すべてがズレまくって、一緒に堕ちていってるイメージでした。
でもアデルはトムのおかげで、そこからまず脱出できたということです。.

残された黒堕ちイアンが、どんな醜態を晒して目を覚ましたのかは、第1シーズン当初でご存知の通り(爆笑)
そしてイアンとアデルの最後はここ。

⑯反省したイアン(第1シーズンでエリン&ダイアナに出会った後)は、アデルの復讐をノーガードで受け入れる
2040818.jpg
自分の胸にエゴイストと描かれる写真が出回るという侮辱を甘んじて受け、
そのまま謝罪の代わりに写真にGOサインを出したわけです。
こうしてEgoist編の最後で2人の軋轢は再度ゼロに。
南の島を経て、息子ジョナサン交えて、食事するくらい交流が復活。

ま、それでもトムは本編現在でも嫌ってるんですけれどね(*థ౪థ)www







ここまで読んでくださった方。
神だ。(マジで)

ここまで捕捉書いてて、本当お恥ずかしい・・・///; 一人称、むっちゃ難しいですよおおおお(´;ω・`)
一人称だと文章構成をもっとちゃんと作りこまないと、破綻しかねないというのが非常に勉強になりました。

でも一人称であったために、
フォーカスされたキャラに深い愛着を持っていただいたというのは嬉しい誤算でした!!
とってもうれしかったです。ありがとうございました❤


ここまで読んで頂き、ありがとうございました!お次の更新で、人気投票結果発表をさせていただきます❤

SEASON 0;the dark chronicle[Final]

本日、当ブログは2周年となりました。ありがとうございます!ということで、最終回です!(*>∀<)
開設1年半記念番外編として、半年間お付き合いいただきまして本当にありがとうございました。

分けようかどうか悩みましたが区切りどころが難しいのと、相変わらずの自分が書きやすい観点でいきました。
ごめんなさい。
なお明らかに恋愛に関係ない部分がありますがシリアス続きすぎて私が無理でした。
あとは、この番外編でいちばん主役張ったアデルへのプレゼントでもあります(*´v`*)
書いてから1年数ヶ月経過している「Mr.Egoist」を、アデル視点で書き明かすことができて、すごく楽しかったです。

そしてブロ友&閲覧者さまにお願いです。
コメ欄or拍手コメにお言葉くださることがありましたら、
本当に読むだけで相当時間もかかりますし、申し訳ないくらい長いので、
内容全てに触れていただくというお気遣いいただかなくて大丈夫です////
(*´∀`*)本当に、本当にいつも読んでくださってありがとうございます。

それでは、長くなりますが。
いってらっしゃいませ(お辞儀)






前回のプレイバックs0-pre-08.jpg









■「SEASON 0;The dark chronicle」ご注意■
今の本編連載とは少しストーリーの色が違いますので、以下の点をご了承ください。
・現在連載中の シーズン2の最新話まで出されている情報が前提になります。
・連載本編シーズン1以前なのでエリン/アレックス/イアン3名が、改心&成長前であるため人物像が若干異なります。
・暴力・流血表現はありませんが普通にアダルト描写・SS含みます(「番外編Mr.Egoist 」と同程度)


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「このような権威ある賞を受賞できる名誉をいただけたことに、まずは御礼を申し上げます。
 そして今日までここまで共に歩んできてくれた━━」
s0-09 (1)
古参のジジイ共の目が、世界の目が、明らかに俺を見る目が変わっているのを肌で感じる。



ざまあみろ。






授賞式のその夜の興奮が抜けた頃、今日アデルのマネージャーの葬式があったことに思い及んだ。
前にウォーレスのショーでちょっと話したが、優しそうな爺さんだった。
行く代わりに花は贈ったが、あいつどうしてんだ?
・・・・まあ、こういうときは電話だのはしないほうがいいか。
s0-09 (4)
高校時のおふくろの葬式は、弔問客の相手で酷く疲れたのだけ覚えてる。
中学から俺とくっついては離れてたケイティが、結構色々やってくれたりしたんだっけか。
ケイティ。久しぶりに思い出した。

世話してる自分に酔ってるっつーのもあったんだろうが・・・・結果的にやられるほうにとっちゃ、相手の意図なんざ関係ない。
助かったもんは助かったし、気も紛れた。
結局そんな腐れ縁のまま、たぶん結婚すんだろうなんて考えたが━━


どこかでナメてかかってた女に振られると分かったら情けなくもなじり、相応しいほど軽い理由でやり返されて、
別れ方にまで難癖つけられる。
あんな惨めで情けないザマを晒すなんざ、二度とごめんだ。
まだ20代で結婚を見据えた付き合いなんざ、そもそもする必要もなかったんだ。
バカバカしい。
独りの方が気楽だ。

━━━ なんであんな二股女を思い出す?
s0-09 (3)
オヤジにはさっき、テレビ取材の最中に生中継されながら電話での直接報告はした。

でも会社の仲間以外で、それ以外この喜びを報告する相手がいない。
唯一浮かぶアデルは無理だ。いつも遊んでる連中にも別にそんなこと、する意味もない。

さっき興奮しすぎて、その落差のせいか。
最大の目標を達成した俺は、たった2時間で虚しさを抱えこみ始めた。
s0-09 (6)
・・・今日はテンションがおかしい。








何週間かぶりに会ったアデルは、不思議と年相応の落ち着きを身につけ始めていた。
俺が無遠慮を装って、その豹変ぶりを訊いてみると、
マネージャーを亡くした後、自分のスタッフとの関係が微妙に悪くなった感じがしたらしい。
「だから今まで通りすんのをちょっとやめた」とあっさり言うコイツは、
頭の回転はそんなによくはないが、仕事の勘のよさは霊感じみてる。
s0-09 (8)
死んだマーネージャーの爺さんがたぶん影で舵取りしてたのを、肌で感じ取ったんだろう。

「イアン、あんたクリスマスは?」
「年明けまで香港」
「そう。あたしはこっち」

俺はもちろん犬派だが、落ち着きを身につけ始めたアデルの様は猫っぽい。
擦り寄る、というほどでもないギリギリの境界で、俺の思惑を探るようになった。

「合わないね。しょうがないか」
s0-09 (11)
アデルはねだりはしない。
俺も「来い」と言いもしない。
最初に寝たときに感じた他の男の影は、あれきり一切ない。
俺と続いてることで消滅したのか、結局俺の先走った勘違いだったのかも分からない。

「お前、髪切らないよな。やっぱり長いほうがいいとかあんのか」
「ある程度長さがあった方がいいっていうのはあるね。長いほうが単純にウケがいいから、そのままってだけ」
「その方が仕事取り易いってか」
「そう。正直邪魔だよ」
s0-09 (7)
「じゃ、切ればいいだろ。今更仕事取る取らないだの、関係ないだろ。 お前短い方が合ってそうだしな」
「考えとくよ」

俺は、理性で制御できる程度の方が仕事に支障がなくて丁度いい。
アデルは無茶苦茶な面もあるが、
節々では仕事人の視点ってやつも持ち合わせてる。
仕事だと俺が言えば、他の女みたいにくだらないやりとりは要求しないのがいい。
s0-09 (12)
でも俺としては身体から入ったせいか、それとも俺自身が余裕がないからか、こいつに対して恋愛感情は持てそうにはない。
そいつをアデルに悟らせるほど・・・当然言うほどアホでもない。
切る必要もなけりゃ、現状維持でいいだろ。
恋だの愛だのかまける余裕は、暇な一般人の特権だろ?

対岸で、今じゃ誰も住んでない俺の実家を見ながらアデルを中に入るよう促す。
もう俺は、二度とあそこには戻れないとこまで来たんだ。












「よう、戻ってきたのか。意外に暇なんだな」
「暇じゃなわけないじゃん。次の予定があるから40分しかないの」
s0-09 (14)
あたしは出会った頃から変わんない答え方を通す。
けど、いざヤるってなると気持ちが入る。
特にキスはヤバい。

あたしはイアンとのインタビューの後に引き返したホテルの部屋で、
時間がなくてもおかしなくらいにちゃんと滑って、いつもの通り息が上がった。

「誰か来たりして・・・とか言われんの、お前好きだろ」
s0-09 (14)
いつもの投げるような言い方の低い声で、そうぶつけられるのが堪らない。
鳥肌が立つくらい、そうやって言われるのは好き。一番好き。
あんたの言う通り、誰でもいい。見られたい。
口の軽い誰かに見られて、あたしらのことが表に出れば、難しいことを考えないでいい。

世界中に向かって、
この男はあたしの物だとドサクサに紛れて大声で言えんのに。












クリスマスが近くなると、トムは死んだジョナサンとの約束通り、
あたしを「自分の家に連れてく」と珍しくしつこかった。
s0-09 (16)
「だからあたしはどーでもいいって・・・・適当にゴロゴロするよ」
『頼むから、俺に彼との最後の約束を守らせてくれないか?アデル』

本当は言いたくなさそーに電話でこう言われたら、あたしでもどうしようもない。
あたしは初対面のメンツに愛想笑いなんかするダサい人間でもないけど、
駐車場に並んでる車にうんざりする。
s0-09 (17)
郊外の街の小さな本屋。
集るのは、長男のトムに、妹夫婦とそのガキと、トムの両親だって。
あたしは縁のなかったフツーのご家庭ってやつ。
どっかのフライドチキン屋のクリスマスCMみたいだよ、どうせ。

「アデル、別にそう構えなくて平気だ。俺以外がよく喋るからうるさいんだが、わざわざ会話に入る必要もない」
「ふーん・・・・」
「あー・・・あとな」

が、こんな直前になって、
トムがすんごい言いにくそうなのをゴマかすように、唸りながらタバコの火をつけた。
s0-09 (19)
「なに?言いなよ」
「あー・・・実家は禁煙だから外で吸うようになる」
「別にいいよ、あたしも最近本数減ってきたし」
「いや、言いたいのはそうじゃないんだ」

なんだよ。

「トム。いつまでも黙ってないで言ったら」
「あー・・・俺の両親には・・・結婚前から、ちょっとした・・・まあ秘密があるんだ。もう35年か。
 家族全員・・・この街の人間も、それに気付いてはいるんだが、まあ・・・目を逸らしてるというか。
 言わないようにしてるんだ」
s0-09 (18)
妹とこいつが父親が明らかに違うとか、そういうやつ?
この歳になると、そうは見えない奴が意外に重いもん持ってたりってのがある。

「でも何というか正直見れば分かるんだ。
 たぶん君もすぐに気付くだろうし、中で訊かれるのも困るからここで言っておくことにする。
 悪いが一応問題がデリケートなものだし、わかってはいても口にはしないで欲しいんだ。直前にすまない」

「気にしなくていいよ。言いにくかったんでしょ」
「すまない。じゃあオヤジのヅラの件にだけは触れないでやってくれ」
s0-09 (20)


「・・・・」
s0-09 (21)
聞き間違いだよね?








「ただいま。雪でスピード落としてたから遅くなった。こちらがアデルさんだよ」
「まあまあ、ようこそ~。いつも息子がお世話になって!田舎道で大変だったでしょー、酔わなかった?平気だった?」
「トムのオヤジです。狭い家ですが、まあ適当にくつろいで行って下さい」
s0-09 (22)
玄関に入るなり、映画みたいに参加者全員で出迎えに来た。
隣の『クリスマスしてる』リビングでは、妹夫婦のちっちゃいガキがぐりぐりの可愛い頭で遊んでる。
あたしは呆然としながらコートを脱いで、
1点にだけ目が吸い寄せられた。

「アデルさん、脱いだものをいただきましょう」

あたしは目がもう逸らせない。
s0-09 (23)
結婚前からこれなわけ?マジで?
隣に立ってるトムの母親が明らかにこっちの動向を見守ってるのが分かって、ますますあたしはパニックになった。
え?あんたがソレ脱ぐの?

「ぬ、脱、ぐ・・・ぬ、ぬ・・・・ぬ」
「アデル。コートだ、コート。脱いだそいつをオヤジに渡せばいい。コートだ
「! ああ、コートね。 ブフッン!・・・・・コート、スミマセン。アリガトウゴザイマス」

あたしは込み上げて来た笑いを咳で、ニヤけそうな顔はいつも使うわけない敬語で誤魔化した。
そんな言葉なんざ出てこないあたしに、トムのオヤジは笑いながら、
s0-09 (24)
「しかし最近の若い人は背がすらりとして、いやあカッコイイもんだ。うちの孫も、あなたみたいに伸びるかな?」
「の、伸びるかは・・・いや、それは、ちょっと、あたしには」
「アデル、身長の話だ」

こーゆー会話を上手く処理できる余裕はない。ムリ。
表情筋と冷静さくらい、仕事じゃ鍛えられてるはずなんだけど、こんなんムリ。
オフの日のせいか『スイッチ』も上手く入らなくて、あたしは何回も咳を繰り返した。

「そういえばちょっと車で冷えたんだったな、アデル。こっちの暖炉で温まってもらうよ、オヤジ」
s0-09.jpg
「ああ、そうだったのか。ごゆっくり」
ンゴフッ・・・・ スイマセン、失礼シマス」

リビングの壁の陰に隠れたと同時に、
あたしは『なんで!あんなの!隠してたんだよ!』と口パクして、それに合わせながらトムの背中に遠慮なくビンタかました。
なのに映画オタクは笑いながら「上出来だ」なんてかますから、ますますムカつく。

そのあと揃って教師やってるっていうトムの妹夫婦も来たけど、
仕事を訊かれて正直ビビった。
綺麗だから女優だと思ったらしいけど(このあたしだしね)、売れてない奴だと思ったらしい。
s0-09 (30)
でも考えたら、あたしだって田舎にいたガキの頃はランウェイモデルなんざ顔も名前も知らなかった。
あたしの顔が広告としてテレビと雑誌と街中に出るのはフランスが殆どだし、
ファッションにもゴシップにも興味ない田舎のマジメなご一家にとってみりゃ、このあたしでもただの一般人か。
異世界だね。

「まあ、そのうち慣れますよ」と、妹のダンナ。何に、ってのは言わなくても全員分かってる。
「・・・どのくらい?」
「俺は1年で乗り越えましたね。すぐです、すぐ!」
s0-09 (32)
長すぎるだろ。

そしてトムはいつものように、テレビの映画解説。
いつものように聞いてたら、妹には「よく平気ですね」なんて、どうしてだか驚かれた。
楽しいし分かりやすいんだから、別にいいじゃん。








あたしに対して誰も馴れ馴れしいおしゃべりはない。
映画観てた時以外、トムは実家だと口数が少なくて、あたしと揃ってクッキーの家を食ってる。
悪くない居心地なのは意外だった。
s0-09 (33)
飾り付けはすごいけど、誰も歌いださないし、ドラマみたいなクリスマス感も本当ない。
ちなみにあたしはトムのヅラオヤジが視界に入らない席をゲットしたけど、
・・・・・本番はそこからだった。

昼間に止んでたはずなのに、吹雪き始めて思いっきり窓が揺れてる。
ヅラオヤジが唸りながら、

「こりゃあ何十年ぶりの大雪になるぞ。ちょっと店周りだけ雪かきしてくるかな」
s0-09 (34)
あたしらは全員固まった。
いや・・・・風・・・すごいじゃん。飛ぶよね、アンタの頭。

「お父さん、寒いわよ。止めたら?」と、まずトム母。
「ちょっと食いすぎたし、運動に丁度いいだろう」と、ヅラオヤジは笑顔。

あたしは咳払いをまだするハメになった。

「でもお父さん、屋根から雪が落ちたりしたら危ないよ~」とトムの妹。
「うちの屋根は傾斜が強いから、積もらないようにできてる」と、ヅラオヤジ。
s0-09 (35)
「・・・僕がやってきましょう!いやあ、もう最近太ってきちゃいましてね!」と、妹ダンナ。
「はっはっは、私もだよ。一緒にやるか?スコップならあるぞ」とヅラ。

あたしはまた「スイマセン」と嘘の敬語で笑いをゴマかしながら、咳払い。

「オヤジ・・・・・あー・・・危ないだろ?」と、トムも一緒に心配したところで、
「お前達、まさか私をジイサン扱いする気か?去年肉離れやったのも、フットサルで転んだだけだろう。
 学生だって同じケガくらいするんだぞ。もう別に問題なんかないんだ」
s0-09 (37)
大いにあるだろよ、あんたの頭に。

運動好きらしいヅラオヤジは、年寄り扱いされたのがムカついたみたいで手袋をしだした。
何だか今日ハリキッてるみたいで、皆して焦ってる。
あたしはちょっと思いついて、わざと呟く。

「飛んでっちゃうかもしれないから、やめたらいいのに」
s0-09 (28)
ヅラオヤジも一緒に、全員が石みたいに固まった。
悪いね。トムのオヤジさん。
あたしは気づいてないフリをしながら、

「トム、さっきのなんてキャラだっけ?さっきの映画の、空飛んじゃってたオバサン」
「!! ああ、メリー・ポピンズな!あれは元々雲の上に住んでる魔法使いだって言っただろう。 
 なあ、オヤジ。まだ車もチェーンしないで走ってるのがいるみたいだ。
 車が突っ込んでくるかもしれないし、夜はやめておいた方がいい。明日になったら俺もやるよ」

そうして雪かきの話はなくなって、全員が好き勝手にしだした。
s0-09 (29)
しばらくして変なサイレンが街に流れたと思ったら、帰り道の大橋が通行止めになったらしい。
当然日帰り予定だったあたしは、ここに泊まる流れになる。

━━━ あたしは、当たり前のよーにトムの部屋をあてがわれた。
わざとらしく恋人扱いもされなかったけど、フツーはそう思うか。
訊かれもしなかったんで、黙ってたけど。
死んだジョナサンの話をパーティーでするのもなんだしね。
s0-09 (38)
「狭いもんで客間もなくてな。定期的に掃除はしてくれてたらしいから、ここで休んでくれ。
 無理してリビングでオヤジ達と話すこともないし、気を遣わず好きにしててくれていい。俺は店で寝る」
「アンタの部屋、あっちと変わんないね。小さいだけで」
「そうそう中身なんざ変わらないさ、でもあっちの方がいいテレビだぞ」

トムが出てった瞬間に、あたしは地面にへばりつく。
なのにドアが閉まりきる前に、トムが「あっと!」なーんて言いながら、すぐ戻ってきやがった。

「言い忘れてた!風呂は一階にあるのを使っていいんだが、あとで俺の昔の服を着替えに━━━━ 何をしてるんだ、アデル」
「エロ本探し。
 初対面のあんたの家族と話すのも疲れるからやだけど、暇だし。あたし一人でテレビは観ないっつったでしょ」
s0-09 (35)
「・・・言っておくが、そんなところにはないぞ。一緒に下の店に来るか?本なら読み放題だ」
「あたし本は読まない。ガキ並みに集中力続かないし」
「なら、ちょうどいい!」

何故だかトムが嬉しそうに手招きした店に降りてって、納得した。
いわゆる絵本だのおもちゃまで置いてる、子供専用って感じの本屋には昔よく食べてた安菓子まであった。
でも実際は駐車場経営で食べてるとか、トムは珍しく映画以外のことでよく話す。
s0-09 (41)
「あんたが映画じゃない話するのは珍しいね」
「彼の・・・スミスさんの話を俺が知ってるのに、君が知らないのも不公平だろう。
 それに映画の件も意外に関係あるんだ。映画っていうのは児童向けの作品から相当生まれてる。例えばさっきの━━ 」

結局、映画の話。
貧乏なトレーラーに暮らしてたときは、こういう旧式の薪の暖炉が憧れだった。
トムからOK出された、こういう菓子の食い放題も。

「アデル。そういえばオヤジのヅラの件、最後までよく合わせてくれたな。
 正直初対面の頃の君なら、黙るなんて選択肢もなさそうだったが ━━ もうオヤジ達も寝たみたいだしな。
 この店は防音がいいから笑っても平気だぞ?」
s0-09 (40)
「あんたの母親が結婚前から黙ってたもんを言えるわけないでしょ、それで別れたら悪いし。それにもう全然余裕だね」
「・・・・結婚にはちゃんと敬意を払うタイプなんだな。ありがとう」

そこで何でお礼なのかは分かんないけど。

「でもせっかくのオヤジネタだしな・・・面白い話をしてやろう。このバーネル書店ってのはこの街の子供のたまり場なんだ。
 街の子供は俺のオヤジを見て、『言っちゃいけないことっていうのが、世の中にはある』ってことを学ぶ」

あたしは菓子を詰まらせかけて立ち上がった。

「・・・・・ングフッ! ちょっと やめて」
s0-09 (44)
「小学校じゃ上級生から下級生に、ヘタすりゃ幼稚園児にまで語り継がれる約束事だ。
 しまいには『この店で万引きすると、将来ハゲる』 っていう標語が生まれた ━━━━ 子供ってのはひどいよな」
「ブハッ ・・・・ッ!・・・・あんた、自分の親でしょ。ジジイになったらどうせ似るんだから、やめておけば」

「仲のいい家族でも、こういうのくらいはあるさ。
 どうせ俺だっていないところじゃ『映画観るとき邪魔』とか『ひどいオタク』だとか言われてるんだ。お互い様だ」
s0-09 (45)

「あっはっはっはっは!そりゃ確実に言われてるね。あんたのオタクっぷり、妹も引いてたし」
s0-09 (46)
オヤジをネタに結構キッツイジョークをかましてきたのは意外だったけど、悪いけど笑えた。
それでもまだまだトムが色々言うんで、笑い転げて気付いたら、
すぐ近くでやっぱり笑ってたトムと、髪同士が掠めるくらい近付きすぎてたことに気づく。

相手もこっちを女として意識してるフンイキ、ってのは
すぐ分かる。
s0-09 (48)
いや、
・・・・ 最初にあんだけ脈ナシだったし、今更ないか。





そうじゃないの?
s0-09 (49)
どういう事か分からない。
自分で仕掛けたりとか、いかにも分かりきってたモンじゃないと恐い。



「・・・━━━ 小さいよな」
s0-09 (50)
男にそんなのを言われたのは生まれて初めてで、
あたしは何について言われたのかも分からない。
あんたとそんなに変わんない身長?
顔?
あたしの何が?

イッパイイッパイで流されるまま ━━━
s0-09 (54)
がち。
トムのメガネが思いっきりあたしの鼻にぶつかって、
あたしはさっきの笑いを無理矢理戻した。

「はっは!やっぱ現実は映画みたいに━━━━ 」
「そんなもの、リテイクだ」
s0-09 (55)
トムがまだあたしから目を逸らさないで、
放り投げた。
トムが恐い。


「笑ったこと怒ってんの?」
「いいや。でも相当緊張をしてる、すまないが余裕がない」
s0-09 (56)
後ずさりしたあたしは、完全に追い詰められた。
ずんずんと真顔で歩いてくるトムはむっちゃくちゃ恐い。

「正気は失ってないから大丈夫だ、アデル。そんなに怯えないでいい」

キッパリ言われて、
あたしはやっと臆病虫を押さえつけながら言葉を出せた。

「じゃ、なに?」
「アデル。色々あったがそいつに付け込むつもりなんてなかった。
 今日も実家に連れて来たが、周りから固めようなんていう卑怯なことも考えちゃいない。信じてほしい」
s0-09 (58)
それを疑ったことなんてない。あんた、あいつとの約束守っただけじゃん。あたしだって見てたし。
そう言ってやったほうがいいんだろうか。

「・・・・トム、その信じてやるって件だけど」
「アデル、すまないがまだ本題を言ってない」
「ああ、そう」

なんなんだよ。

「愛してる。大したデートもまだできてないが、もう好き過ぎてどうしようもない。
 あー・・・何て言えばいい。こういうのはだ。つまりは要するにゾッコンてやつだ、アデル」
s0-09 (60)
「は・・・・」

ゾッコンて。
心の中でオカシすぎる言葉にツッコみながら、意味が分かるほど心臓が勝手にデカく動く。

愛してるなんてドストレートなダッサイセリフ、
ばーちゃんにだって、ジョナサンにだって、付き合った男にも、んなこと言われたことなんかない。
この世で、マジで言う奴が、いんの?

「さっきは勢いでキスしそうになったが、君の気持ちを無視してそんなことはしない。いや、正直今もすごくしたいんだが、
 そういう暴行まがいのキスじゃ良くないだろう」
「ぼ、暴行・・・・ いや、まあキスぐらいなら、まあ流れであるんじゃないかな」
s0-09 (59)
「アデル、煽らないでほしい。態勢的にまずいだろう。
 ただ、あれだ。そもそもこんな態勢に陥った時点で、正直に打ち明けると、そういう意図がないわけじゃないんだが、
 俺はちゃんと同意の上でしたいと思っている」

暖炉近くで緊張しすぎて、身体中から汗が流れる。
いつものカッコいいあたしはどこにいった。どうしてたんだっけか、いつもは。

「ちゃんと訊く。あー・・・どう思う?・・・他に、誰かいるのか」

あたしがイアンのあの憎たらしい笑顔を反射的に思い出して、あたしは頷いた。
s0-09 (63)
「・・・そうか。そうだよな。そうに決まってるよな」

途端にガッチガチだったトムの身体がグニャッとなって、
ぶっ倒れるのかと思った。
あたしの肩にトムの頭が乗っかる。

「まあ、そりゃあそうだ。この前の━━━ 葬式の時には俺がむしろ邪魔だったな。勝手に居て、・・・・すまなかった」
「別に。あいつ来てなかったし。仕事で」
s0-09 (61)



「・・・・・お前より大事な仕事なんて、あるのか」
s0-09 (64)
ああ。
こいつと付き合ったり結婚する女は、むちゃくちゃ幸せになれんだろうな。
単純にそう思う。
でもあたしだけがあいつを分かってるし、あいつにはあたしだけなんだよ。
言葉はなくても、あたし達はそういう風に繋がってる。

「・・・・ ━━━━━━ そういうのは、わかんないけど。イアンはいつも会社のことで忙しいから大変なんだよ」
「イアン ・・・グレンツなのか」
「そう」
s0-09 (66)

多分トムとあたしは会うことはない。
イアンに迷惑かけるようなことするわけもないだろうし、
あたしは洩らしたついでに認めた。

「・・・・ そんな奴やめて、俺にしないか」
s0-09 (68)
「できたらいいね。あんた話面白いし、楽しいし。あと頭が良くなる気がするから好きだよ」
「そう言ってくれるのはお前くらいなんだよ。アデル」

大人のトムは少しだけそのままでいた後、"暴行"なんてするわけもなくて。
いつも通りに戻って、あたし達は次の日にフツーに別れた。







あー・・・・今更だけどさ、こんときイアンだって言わなきゃよかったよね。
『偉大なるジェダイ』のトムは長男が産まれた今でも、イアンを『ダース・シディアス』並に嫌ってる。
あの『ダース・ベイダー』の産みの親玉並の、クソ野郎ってわけ。
s0-09 (69)
おかげであたしがダイアナと会うのすら、トムはいまだに嫌がる。イアンも当然。
ただあたしは従いもしないし、そもそも文句も言われはしないけどさ。
いいダンナでしょ?











葬式の後から、あたしはクラブに殆ど行ってない。
でも3バカからは、ちょくちょく報告みたいな電話がくる。
イアンがモトカノをダシにして、嘘のプロポーズでコイツらと賭けしたらしい。
やるじゃん、あいつ。

あたしがそう言ったら、
赤色がケータイをスピーカーOFFにした。
s0-09 (119)
『最後はおれとサシでお話しよ❤ 姐さん、あれからちょっとは大丈夫?』
「別にヘーキ。ありがと」

『んーん。ね、イアンの賭けの話だけどさ、俺すごいびっくりしたんだ。姐さんの時は無茶苦茶反省してたのに、
 今じゃトーゼンって感じでさ。何かスレちゃってさー・・・・なーんでかなあ?』
「金目当てのバカのあしらい方を覚えてたってことでしょ。前にイアンともそーゆー話したね」

あたしは最初イアンと寝た朝に、
イアンに言ってやったことを教えてやった。

『・・・・ふーん・・・・あのね。姐さん。俺、来週から国離れるんだ。もう会えないから、最後に言っとくけどさ。
 俺、あんたみたいな無自覚で頭の悪い女って、すっげえ嫌いだよ・・・姐さん自身は好きなんだけど』
s0-09 (115)
「あたしはあんたが最初から嫌い。コソコソ嗅ぎまわるようなマネしてきて、うざいんだよ」 

『だって好きな人のことは気になっちゃうよ。
 だから色々つっついちゃったんだけど・・・ごめんね?でもそういうのは、わかってくれる?』
「へえ。あんた以外にもあたしにそう言ってくる男は多いから、別に驚かないけど。そういうことなら許してやるよ」

『あっはは!!ホントそういうトコ、いいよねー!
 自分の中で始めて、自分で終わらせちゃう、見かけによらず乙女乙女してる感じ!
 あのね、姐さん。逆っていえば分かる?』
s0-09 (117)
驚きすぎて、あたしは息が止まった。

『でもコレ、あいつらには内緒ね?ガキだから。イアン本人は知ってるだろうけど。
 じゃーね、姐さん❤イアンのこと、あんまイジめないでやってね』
「はあ?!あたしがいつそんなことしたんだよ!!訳わかんないんだよ、あんた」

ちなみに赤色と話したのは、この電話が最後だ。
















赤の言われて、初めて気付いた。
モトカノに同情はしないけど、イアンがやったことは結構らしくなくエグい。
嘘でプロポーズか。
頭はいいはずだけど、やったことは、ばーちゃんと観た昼メロドラマでよくあるやつだよね。
s0-09 (71)
あいつ、それで本当は何をしたかったんだろ。

いつものようにあたしが泊まった朝。
イアンは珍しくマジにイライラと電話を叩きつけて、このペントハウスのエレベーターが止まる上の階に消えた。
・・・・まさかイアンのオヤジ?

さすがのあたしも服を着ようとしたら、
枕元に置いてといたピアスを床に落として・・・ ベッドの飾り棚にあった、あたしのじゃないピアスと目が合う。
s0-09 (73)
知ってたよ、フツーに。
あたしと会わないとき、あたしと会えても、他の女とどうしてるのかぐらい。
それは知ってた。

でも、なんで。
なんで、ここにまで入り込んだの。

ここはあんたの本物の家じゃん。
前にどうでもいいって言ってた偽物の、どうでもいい奴ら用の部屋じゃないんでしょ。
s0-09 (74)
写真も前見せてくれた、子犬の頃から一緒の犬のブーツが居る場所じゃん。

ここもニセモンの部屋?
この部屋に来たのは「あたしが初めて」だったのもウソ?全部最初から?
それともモトカノをハメるために、ヤったわけ。まさかここで?

あたしが安モンのピアスを握りつぶしたら、簡単に壊れてく。
s0-09 (72)
こんな安モノに、こんな安いやり方で、このあたしを傷つけたのが許せない。



上の階で甲高い女の怒鳴り声がして、
あたしはゆっくり立ち上がった。






「イアンが悪いんでしょ!私はちゃんと謝ったのに・・・お父さんの会社をグループの傘下に入れたって
 さっき聞いたの!あんな嘘つくなんてひどい!
 ━━━━ 忘れられないって言ったじゃない!!!」
s0-09 (75)
・・・・あの二股のモトカノ?
その辺にいそうなフツーの女が、いた。

「・・・・・何事?」

あんたみたいなのも、この家を知ってて入れるんだ。
呼び捨てすんなと言い返しはしたけど、そこからあたしは目の前で起きてることをぼんやり眺めた。
s0-09 (76)
イアンはあたしを罵ってきた女から庇いもせず、謝りもさせず。
あたしを完全に忘れたよーにモトカノと痴話げんかして、娼婦扱いして、・・・内容よりも何よりも。
そもそも、あたしはこいつが本気で怒鳴るなんて見たこともない。

━━━━ あんたの中じゃ、いまだにあたしはその女以下か?
その瞬間、
イアンがその女の鞄をすごい勢いで踏みつけて、何かが割れた。


「帰れ。二度と顔見せんな」
s0-09 (77)




そうして2人だけになって、あたしは触ろうとしてきたイアンの手をどけた。
知りたいことがある。
そのウソを言う前に、あたしは心の中でトムに「ごめん」と謝った。

「あたし結婚すんの」
「俺と?」
s0-09 (78)
「違う。・・・・・トム。トム・バーネルっていう業界人。だからあんたともこれっきり」

あんたにとっての、あたしの価値が知りたい。
『そんなの止めろ』って言うくらいには、トムみたいに言ってくれるくらいには、
・・・・冗談でも言えるくらいには。
あんたの中にちゃんとあたしはいるよね?

「だな。俺は不倫はしない主義だし。お前に会えなくなるのは残念だけど、おめでとう」
s0-09 (79)
何て返事したかは覚えてない。
モトカノと同じように二股のふりしてみせても、怒鳴られも文句すら言われない。
頭のよろしいあんたにとっちゃ、
あたしが二股すんのは当たり前だってことか?

黙りこんだあたしに、
イアンは平然と「めでたいことだろ、笑えよ」と投げつける。
s0-09 (82)
このクソむかつく言い草で、こっちが何考えてるのかも全てバレてるのが分かる。
なのに、コレか。

ぶん殴る愛情すら消えうせた。
早くここを出たい。

「あんたはつくづく自分勝手だね」
「今更だな」

極めつけに、トムとよく観た映画みたいなダチぶったキスまでされる。
s0-09 (70)
あたしはせめて終わり方だけでも、
『アデルらしく』終わらせるので精一杯だよ。

「帰る」
s0-09 (83)
イアンの心の底が暗すぎて見えなすぎて、全然知らない奴にしか見えない。


”自分の中で始めて、自分で終わらせちゃう、見かけによらず乙女乙女してる感じ!” 
 ━━━・・・・あたしが知ってると思ってたイアンは。
あたしのものだと思っていたイアンは、本当にいたんだろうか?










次の週、あたしはこの国の家を処分した。
ここにはジョナサンもいないし、仕事はフランスだし。
最後の片付けは全部自分でやった。
s0-09 (85)
深く考えないで買って溜め込んだもんが消えて、空っぽだ。
トムの言った通り、業者が出入りする毎にあたしの部屋は、今のあたしそのものになっていった。
今日で何回目かも分かんないマンションの下玄関のチャイムが鳴らされて、
しゃべんのも面倒くさいあたしは、さっさと下のセキュリティを開ける。


「・・・なんで来たの?トム」
「断っておくが、ストーカーじゃない。
 スミスさんのスタッフも、一緒にフランスに移転するって電話があって、一応寄ってみた」
s0-09 (86)
くそ真面目に言われて、
あたしは笑った後で「謝りたいことがある」って切り出した。

あいつにぶつけた嘘に、必要もなかったのにトムの名前を使ったことを話す。
その意味もいっしょに。
イアンと違って何年も前から業界で認められてて、礼儀正しくて、大人の余裕があって、
『あたし』に見劣りしない男でしょ。

「どう?あんたも、よく分かったでしょ」

ジョナサンを大切にしてくれた人間に、
生まれて初めて愛してるって言ってもらった人間に、こんなことしかできないのか、あたしは。
ぶっ叩いてほしい。
s0-09 (89)
「ステージでどんなにおキレイに歩いてようが、カッコつけることばっかで、いっつも間違えてばっかで、
 中坊のときからなんも変わってない。ただのバカなんだよ!」

しかもイアンからは事実を確認もできないヘタレっぷりで、そのまま逃げてきた。
結局イアンよりも、自分がカッコよくいることばっかり優先させてんだから、
バカすぎてどうしようもない。

「あいつのことは俺にはどうでもいい」
「・・・・・・・」
「お前は、俺にするかは決められたか?」
s0-09 (87)


「あんた、バカなんじゃないの!そんな話してないじゃん、ちゃんと聞いてた!?脳みそ腐ってんの?!」
「いや。俺は、どっかのバカな中退してるガキと違って、ちゃんと大学も出てるから頭はいい。 
 ただ、ほんのすこーしだけオタクではあるかもしれないが、常識的な範疇だ」

どこがほんの少しだ、バカ。大バカ。
笑い声になるはずだったものは、
あたし自身も初めて聞く、幼稚園児みたいなむちゃくちゃカッコ悪い泣き声になって出た。
s0-09 (93)
「アデル、お前は全然悪くない」

うそつき。
あのイアンなんかよりも、あたしよりも、ひどいうそつきだよ。あんた。
ばーちゃんが言ってた、2種類の嘘のはなしを覚えてる。
イアンの嘘と自分の嘘でズタズタになったあたしは、トムの嘘に救われる。

「ごめんね、トム。くだらないことに、あんた使って、本当にごめん」
s0-09 (94)
「アデル・・・卑怯ですまないんだが、そういう顔をすると、あー・・・・・ 付け込むぞ」
「ひぃっく」

十何年かぶりに人前で泣いたせいで、目が痛い。
しゃっくりで苦しい背中を、トムが撫でる。

「・・・・言葉で説明するよりも、した方が早い」


s0-09 (95)
涙のせいで絶対ファンデがぐっちゃぐちゃになってるし、
さらに「ひっく」とかダサすぎる状態のくせに、あたしはトムに縋りつく。
しゃっくりが死にそうにひどいあたしは、
とりあえず軽々と壁の作りつけのソファーに運ばれた。

「・・・ひっく、ひぃっく、ひっく 、ごめ、・・・ひっく・・・止まら・・ひぃっく・・ひど・・・」
「!! ・・・・くっ・・・・アデルめ!もういい。
 つくづく卑怯だが、俺はもう止まらん。嫌だったら、右ストレートでも何でも顎に入れていいから、殴って逃げろ」

「ひ ━━━」
s0-09 (96)
あたしのしゃっくりは何度か出てこようとしては出れなくて、
喉が変に震えた。






「・・・ぃっく・・」
「寒いか?」
「へーき ・・・ひっく」

別に寒いせいでしゃっくりしてるわけでもないのに、
しゃっくりが止まらないあたしを剥く度に手で温めるみたいに、トムはぺたぺたと、ひどくゆっくり触る。
s0-09 (99)
その間もあたしはしゃっくりで、アホみたいにガクガク揺れる。
こんなにみっともなくてカッコ悪いのに止めないのか。
かなり嬉しい。


・・・あと。
かなり久し振りに、あたしはとんでもなく恥ずかしい。


いい歳して恥ずかしいあたしはトムにしがみついて、
大切にされながら、拷問かってくらいのしつこさで全然動けなくなる。
ぜんぶ受け止めるために身体硬直させて、気持ちいい通り越して熱い。
s0-09 (128)
感じすぎて痛いとかもないのに。
いつもはガンガン動きまくって、運動の汗かいてたけど、何コレ。
サウナより暑い。
のけぞって声を出せないでいたら、ふいにトム離れた。

「アデルお前、ずっと壁に頭ゴンゴンぶつけてるぞ」
「・・・へ? 壁?そう?」
s0-09 (101)
「痛くないのか。たんこぶになる」
「わからなかった」

頭を抱えられながら2人して少しずれたら、革のソファーが汗で音が鳴って気付く。
全然動いてないのに、
夏でもないのに、雨被ったのかってくらい汗がすんごい。
何コレ。

「・・・・なんでさっきからずっと顔みてんの?ずっと目が合うんだけど」
「そりゃこんな可愛けりゃ見てたいだろう。もっと見たい」
s0-09 (102)
「・・・っ・・・・━━━━ 」

あたしは完全な受身に回って、
ひたっすら見下ろされながら足首だけ揺らして、また汗だけ流す。

あたしは、
・・・あたし達は。
業者がドアベル鳴らしまくってたのを完全に無視して、気付いたら夕方になった。



「・・・喉かわいたよ」
「まさか水道まで止まってるとはな」
s0-09 (106)
会話が止まる。
お互いエネルギーが残ってない。
あたしは歯でタバコを上下させてして、しばらく一人で遊んだ。

「危ないからやめろ。アデル」
「顔洗いたい。化粧ひどそう」
「綺麗だから大丈夫だ」
s0-09 (110)
しばらく、2人で何となく時間を過ごして、
あたしはもうカッコつける意味もないからストレートに訊いた。

「あんた、何で今日はいきなりヤッたの?」
「? どういう意味だ」
「最初にあんたんち遊びに行ったときは、あたしが誘っても帰れつったじゃん。まだあたしを好きじゃなかったから?
 1回目のデートだからカッコつけた?真面目なトーマスちゃんは、やだったの?」

答えを催促して、靴の爪先でトムの足を軽く撫でる。

s0-09 (107)
「俺が?お前に誘われて?
 まさか。 そうじゃなくてそっちが『俺が家に行く』って言ったら、いきなり不機嫌になったんだろ」
「嘘だよ、あんた『帰れ』っつったんじゃん」

「違う。正確には『車を呼ぶか?』と訊いたんだ。
 2人とも酒飲んで、運転手もいなかったんだから、そうしないと行けないだろう。・・・・・じゃああれは、やっぱり据え膳か」
「スエゼンて何」
「すぐ食べられる料理のことだが・・・本人に言うべき表現じゃないな。すまない」
「別にいいけど、なるほどね。・・・・なるほどね!! はっは!じゃあ2人して勝手にバカこいてたんだ、しょーもな」
s0-09 (108)
あたしは、イアンのことはもう喋んないけど、あの時トムをどう思ってたのを言った。
逆にトムがあの時に色々一人で悩んでたことも聞く。

「ドッキリ?!秘書に確認!!?あんた、バッカじゃないの!!」

あたしは足をバタバタさせながら、暫く一人で爆笑した。とんだオトナだ、こりゃ。

「あたし恋愛とかカケヒキとかさ、無理なんだよ。なんか構えるし、カッコつけようとするしさ。
 多分そうゆーのやったらダメだわ、あたしは」
s0-09 (111)
「それなら俺だって同じだ。18だろうが、34だろうが・・・40になっても、どうせ俺はこのままだ。
 そもそも世の中の連中は、どうやって、その気があるのか、ないのかを判断するんだ?」
「さあ?わかんないよね。どうしてんだろ」

あたし達はいまこうしてるけど、じゃあこれからどうなるんだろ。
デートするとして、またああいうことしなきゃいけないわけ?言葉の裏読んで、一人で考えて、間違えて?
・・・たぶん、あたし、また間違えそうだな。やだな。
そう思ったら、同時にトムと目が合った。

「アデル、俺たちは完全に恋愛には向いてない。なら思いついたんだが結婚しないか」
s0-09 (105)

「したい」
s0-09 (112)
我ながら、この答えは最高だと思う。









結婚してしばらくして。
珍しくイタリアで仕事してたあたしのとこに来たトムが、空港で面白いことがあったって話してくれた。
空港乗継待ちのときのラウンジで、
旅行先で偶然会った知らない人間がオススメする場所に旅行してるっていう女に話かけられたらしい。
s0-09 (129)
「バックパッカーって感じじゃ全然なかったんだが、面白そうだよな」
「ふーん・・・・・ どんな女?」

そんなんもん、逆ナンじゃん?明らかに。
こいつ、やっぱり恋愛むいてねーな。
結婚して捕まえてホント正解だった。

「それが目の前で胸がボインボインしてて、すごくてだな。・・・・・それしか覚えてないんだ」
「死ね!!」
s0-09 (109)













あたしは、あれからイアンには会っても連絡も取ってない。






3バカの中では一番頭がよかった赤色が居なくなって、あいつらがどういう感じになったのかも知らない。
一番気が遣えてた奴が抜けて、
たぶん、もっとバカになったとは思う。
s0-09 (124)

イアンもどうなったのかも知らないけど、
誰かあのバカに痛い目見せてやればいいのにって思う。

s0-09 (127)

あたしみたいに大恥かいて、
あたしみたいに泣いて
カッコつけてたもん、一回全部ぶっ壊れればいいのにって思う。

そうやって痛みつけてやっていいから。

s0-09 (120)



あたしの代わりに、あいつもどうにかしてやって。






- SEASON 0;the dark chronicle(Ian&Adele&Tom side) THE END-






SEASON 0;the dark chronicle[8]

場面転換が多かったため撮影がいつもよりかかってしまいました。
既に皆さんお気づきでしょうが『イアン&アデル&トム』サイドの主役は、アデルです。
アレックスサイドとはまた違う愚かさが皆ありますが、見守ってやってくださると嬉しいです。

今回はシリアスが多かったので冒頭が少しでもクッションになりますように・・・
次が最終回となります( ´∀` )計算より1話多くなりました。ええ・・・
なお今回ラストのアデルの髪CC。
同じ長さの別の髪CCにしてますが既に以前書いた、とある話のシーンと同じです。
エリン隠れ家もマイナーチェンジしましたし、思い切って変えてます( ^v^)






━━━━『イアン&アデル&トム』サイド 前回までのあらすじは━━━━
今まで身近に居なかった『落ち着いて見える年上の男』トムに大いに興味をもったアデルだったが
言葉足らずのトムとアデルは、結局何もないまま1回目のデート(だったのか?)が終わる。
女としてのプライドを大いに傷つけられたアデルは、彼女が望むまま振舞ってくれるイアンを誘い込んだ。
s0-07-prev_2014070212213064b.jpg
アデルと寝た直後、イアンは彼女が自分を他の男と同時進行していることを察すると
過去の苦い経験を思い出し、アデルを静かに見切った。










■「SEASON 0;The dark chronicle」ご注意■
今の本編連載とは少しストーリーの色が違いますので、以下の点をご了承ください。

・現在連載中の シーズン2の最新話まで出されている情報が前提になります。
・連載本編シーズン1以前なのでエリン/アレックス/イアン3名が、改心&成長前であるため人物像が若干異なります。
・暴力・流血表現はありませんが普通にアダルト描写・SS含みます(「番外編Mr.Egoist 」と同程度)


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「パパは仕事に行くからな・・・相変わらず小さい手だな。バイバイだ」
「ぱーぱ、ちごっと。じょなぁ、ばいばい」
「おしゃべりが本当に上手だなあ、ジョナサン。バイバイの合図は?」
s0-08 (109)
抱き上げたジョナサンの小さな手を持ち上げて、男同士のお約束の挨拶は、ぱちと小さい音を立てる。

「いいぞ、ジョナサン。フォースと共にあれ」
「ぱーぱ。ふぉしゅと、ととにあえ」
「聞いたか、アデル。我が家の息子は生まれながらのジェダイだ」
「はいはい」
「ふぉしゅと、ととにあえ」

・・・・あたしらの長男のジョナサンは、自分の名前をフルネームで言えるようになる前に、
この父親のトムが仕込みやがった、くっだらないオタクの挨拶を覚えた。
どうすんだよ、これ。
s0-08 (110)
「トム、あんたヒゲ剃る時間もないの?」
「風呂はちゃんと入ってるし問題ないだろう。外の人間に会うときはちゃんとしてるよ」
「あたしが痛いって昨日言ったじゃん」
「じゃ、そっとな」

まるであたしがプリン並に壊れやすいモンみたいに、
ヒゲの感触が伝わらない掠める程度のキスがあたしの頬にやってきた。
その手抜きが気に食わない。
あたしはジョナサンを奪い返して下ろしてやると、トムを”多少は”優しく、壁に突き飛ばす。

「ちゃんとしな」
s0-08 (108)
悪いけどあたしの方が男前。
次に会えるのは、今夜か明日か明後日か分からないし━━━━ 確かに、ヒゲ剃るよりこっちの方が大事。


「ぱーぱ、ちっごと。ちっごっとは?ないない?」
s0-08 (112)
舌足らずのツッコミに負けて、あたしらは同時に噴出す・・・・父親に似て可愛すぎだ、このクソガキ。
こんなアホみたいに可愛い奴らがいるなんて、あの頃は知りもしなかった。
もう何十年も前のことみたいだ。




















コーヒーの匂い。
あたしが目を開けると同時に窓のシャッターが音もなく全部開きだす。
初めてイアンの家で迎えた朝。

「へー・・・・シャッターとか付けてんだ」
「昼間寝ることもあるからな。アデルお前、今日仕事はいいのか」
「仕事はこっちではしばらく入れてない。いま何時?」
s0-08 (1)
「7時半。風呂なら昨日のやつでも、こっちの普通のでも、どっちでも勝手に使え。
 俺は8時半には出る。悪いが俺と一緒に出てくれるか」

別にあんたが出かけた後まで、ゴロゴロするつもりはないけどさ・・・・
このイアンの、どことなく、ぶっきらぼうっつーか、このフンイキ。
何となくムカついた。

「朝メシは8時に届くよ。お前も食うタイプだろ?フライドチキンがっついてたくらいだしな」
s0-08 (2)
ま、あたしが起きたら、ちゃんと寄ってきてコーヒー差し出すだけマシか。
ヤッた途端に偉そーになる男ってのは多いもんだけど、こいつもそのクチだな。

「なに偉そうな口聞いてんの、あんた。
 このあたしを偽部屋に連れ込んだ分際で、ちょっとヤッたくらいで調子こいてんじゃねーよ」
「誰がだよ。━━ あと、あれは悪かったって謝ったろ。どうすりゃいいんだ」
s0-08 (3)
「世の中、口で謝って済むと思ってんの? その身体で払ってもらおうか」

あたしは笑いながらイアンの膝裏に軽く蹴りを入れると、
そいつは絶妙の位置とタイミングだったみたいで、あっけないくらい簡単にバランスを崩してベッドに倒れこんできた。
とはいっても、あたしに無様には倒れこまない。
やるじゃん。

「へえ、反射神経もいいじゃん」
「ばっ・・・おっ前!!モデルが火傷したらどうすんだよ!」
s0-08 (5)
イアンの分で手に持ってたマグカップは、床に中身をぶちまけて転がった。
ここまでクリティカルヒットすると思わなかったんだよね。そんなん、カッコ悪いから今更言えないけど。

「しなかったならいいじゃん」
「・・・今のはたまたまだからな。もう次はすんな、本気で怒るぞ」

こっちのためを思って本気で怒ってくる男って、いい。いいね。
かなりいい。

「マジで怒ってる?」
「・・・結構な。バカは嫌いじゃないが、こういうバカさ加減は嫌いだ。てめえのことだろ、しっかり考えて行動しろ」
s0-08 (7)
すごくいい。
冗談で身体で払えつったけど、この態勢も手伝って完全にこっちはムラっときた。
ちょうど目の前にあったイアンの耳に、あたしは強めに噛みつく。

・・・・男の弱点ってのはさ。掴みやすくていいから好きだよ。
良い悪いの本音が素直に出るしね。あと特にこいつのは掴みやすい。
少し触ったくらいで即おっ勃てやがって、本気で怒ってたのはどこへやら。あっけなく始まる。
s0-08 (8)
昨日よりも完全要点だけの短縮コースとはいえ、互いにきっちりイッて、
終わったのもきっちり8時・・・・・ますます、やるじゃん。コイツ。

風呂場に引っ込んだあたしは、いつも通りデブマネージャーの定期連絡をケータイで確認する。
これは10年前あたしがケータイ持たされた時から、毎朝のきまり。
でも待受画面の一番上に表示されてたメールは、トム。名前だけであたしのプライドの傷はまだ痛んだ。

『一昨日、うちに指輪を忘れていっているが大丈夫か?』 ━━━ うそ。
s0-08 (40)
そういや着いてすぐにトイレ借りて、手を洗ったときに外して、そのまんま!?
大きく舌打ちしながら、あたしはさっさと取り返しに行くことを即決めた。
あれはデブが前にあたしに寄越したやつだ。替わりはない。

「ったく、身体で払えとか山賊かよ。信じらんねー女だな」
s0-08 (11)
あたしが風呂から上がると、
イヤミなほど髪まで完璧に仕上げたこいつは、やっぱり完璧な朝食の横に立っていた。
届けさせたにしても、出来すぎな奴。

「イアン、あんた夜はいつもの店くんの」
「今日から来週までは日本だ。しばらくあっちの上場準備でちょっとバタつく」
「上場?」
「昨日話したろ、"認められる"って話のひとつだよ。戻ったら電話する」
s0-08 (14)
あんな世界の端まで行くとはね。
にしても朝っぱらから飛行機・・・・本当にあたしとヤる気なかったっていうのが分かって、すこぶる気分がいい。
あたしを軽く見てたわけでもないけれど、結果的に魅力に屈したってことじゃん?

「"上場"ってなに?教えな」
「・・・・お前、昨日も思ったんだけど結構話するのが好きだよな。まあ俺もお前には教えてもらったけどな」
「目の前の奴に訊くほうが早いし、楽じゃん。
 で"上場"って?そこのブーツにも分かるように教えなよ、あんたの弟分だろ。出かける理由くらいちゃんと教えてやんな」
s0-08 (12)
イアンはあたしの隣の犬のブーツとあたしを交互に見ながら絶句して、
直後に一人で爆笑しながら勝手に降参宣言した。

朝食をかっこんだあたしたちは、このペントハウス専用のエレベーター前へ。
犬のブーツはあとでコイツの親父が引き取りに来るらしい。
あたしの車を呼ぶためにイアンが電話を手に取る。

「あたしは地下の駐車場で1時間くらい潰してくから、そう言っといて。あ、喫煙車。目立たないフツーの車」
s0-08 (20)
「1時間って相当だぞ?パパラッチ避けんのに、お前そこまですんのか?」
「いつもこうはいかないけど。あんたは仕事だから優先したげるよ。
 ちょうどこのビルの店が開いて混みだすのも、そんくらいでしょ。買い物客になってから帰る」

イアンは不満そうながらも、
あたしの頼んだとおりに誰かに依頼したらしい。

「ちょっと訊くけどな━━━あそこまでしないといけないもんなのか?」
「今まであんたが相手してきたようなのと、あたしは格が違うってことだね。事実としてね。
 ・・・・あんたはまあ、好きだけど。やっぱりあんたと撮られる気はない」
s0-08 (17)
こいつが「世間に認められてない」って事に拘るってことは、それって相当ってことじゃん。
あたしが仕事とってる幾つものブランドやらは、「もう世間で認められてる」奴らが着てるもの。
・・・・このイアンとの関係をおおっぴらにされるのは、あたしが『売ってやってる』モンの価値を下げる。

頭は良くないけど仕事に関しちゃカンが鋭いって、
あのデブにも合格貰ってるから確かだ。

イアンは大いに不満そうだ。
s0-08 (18)
そりゃそうだ。
昨日「認められたい」って打ち明けたこいつの背中を、当のあたしがぶっ刺したんだし。
でも年下らしいとこを見れたことに、あたしはどこか安心もした。

「あんたは社員を背負ってるけど、あたしも同じだし。昨日の話があっても、あたしは流される気はないね。
 トドメ刺すようだけど、これがあんたが自分で選んで登ってきた場所だよ、イアン」

イアンは低く低く笑ったあと、笑顔すらしまいこむ。

「お前。本当にムカつく女だよ」
s0-08 (51)

「媚びないのがいいって言ってのはあんただろ。そもそも世の中の人間が、あんたの思い通りに動くわけないじゃん。
 自分が変わったほうがよっぽど早いっつーの」
s0-08 (19)
あんた程頭良くないけど、
この世界での生き方ならあたしも教えられるし、そのイラつきも理解してやれる。
かわいそうな・・・まだボウヤだよね。
あんたはさ。










あたしはすぐにトムに指輪は回収しに行くとメールで返事はしたけど、わざと時間を空けて週明けにいくことにした。
こっちとしてはもうそーゆー狙いとかないっつー意思表示。
が、あっちもあっちで全然変わった様子なんざなくて、(くそムカつく)

『今日はもう仕事がないから家に居る。いつでもいいから・・・━━そうだ、前の約束通り、庭を見せよう。
 できれば夕方前までに来るといい』

女に、しかも他でもないこのあたしに恥かかせたくせに、ふざけてんのか?コイツ。
でもここでブチ切れれば、指輪を捨てられる可能性もある。
郵便だので失くされたら冗談じゃない・・・・・・面倒なもん人質にされた。
s0-08 (22)
トムの家に行くと、本人と顔合わせないでメイドとかから受け取りたかったのに、
玄関対応に出てきた奴はヘラヘラと「庭にどうぞ」しか言わなかった。

「指輪は?」
「ああ、アデルようこそ。俺が持ってる。高そうだったんで人には預けにくくてね。・・・・・・恋人からのじゃ大切だろう?」
「は?何言ってんの。そいつはあのデブからだよ・・・昔死んだあいつの奥さんの、形見分け」
s0-08 (24)
「! それは・・・大事なものじゃないか」

トムは申し訳ないとばかりに慌てて、すぐあたしに向かって差し出した。

「メッキの安モンらしいから、水つけないように外したんだけどね・・・失くしてるの気付かなかったとか最悪だね。
 普段しまいこんでたから正直忘れてた」
「毎日つけてる物じゃない限り、しょうがないだろう。郵便とかも考えたんだが・・物が物なんでね。
 失くされる事を考えると手渡したかったんだが、正解だな。返せてよかったよ」
s0-08 (23)
会話が途切れる。
しばらくトムは咥えたタバコをぼーっと楽しんで、あたしの方が限界になった。

「で、あんたは庭を見せたいってのは?」
「! ああ、すまない。そこの階段だ。古いタイルだから、ヒールで転ばないよう気をつけて。
 この屋敷は前に話した通り━━━」

この屋敷で撮影された映画のことを、ベラベラベラベラ。
s0-08 (28)
こいつのこういうとこ、嫌いじゃない。
あの口も頭も回るイアンのですら聞く気がしなくて切り上げさせたけど、
本当にトムはあたしに、この良いものを教えたくてしかたないんだろうってわかる。
時々「つまらないか?」と我に返るのが可笑しいんだよね。ガキが、一瞬で年上の男に戻る。


途端に目の前が真っ白になって、思わず目を瞑った。


「眩し!?」
「花の階段だよ、もう何十年も維持してる。
 レフ板要らずってのは大げさだが、これだけ密集すると花びらが光を強く反射するんだ。この古風なのが好きでね。
 ・・・まあ、実際はどの撮影スタッフも踏まないように作業するのに苦労したらしい」
s0-08 (26)
「すごいね」
「だろう!?こいつは絶対見せたかったんだ、花自体は雑草みたいなもので珍しくもないんだが。
 ちょうど今の季節しか咲かないものだ。一番良く咲く時期に見れた君は運がいい」

それはアートとか分かんないあたしでも分かる、綺麗さだ。

「そこの丘の上、全部咲かせりゃ良いのに。階段の下でぶつ切れてるじゃん」
「あそこから先は他の家の敷地で、無理なんだ。現実は映画と違って世知辛い。だからこそ作り物の価値があるんだがね」
s0-08 (25)
こいつ、本当映画が好きなんだ。









俺は階段の下で途切れざるをえなかった花畑を誤魔化すために、
この家で映画撮影してきた人間がどんな技法で誤魔化してきたかを話す。
と、アデルが日差しを気にする素振りをみせた。

「すまない、日差しが強かったな。家に入ろう」
s0-08 (21)
当たり前の事を全く気付いていなかった俺が悪い。
別に予定はないということなので、俺はアデルに家を見せた。
先日はろくにこの家も案内できなかったからな。

「ここで撮った映画も全部ライブラリーにある。庭のシーンだけでも観てみるといい。年を追うごとに花畑が広がってるのが面白い」
「あのさ、あたしがいつ観たいつった?」
s0-08 (29)
かなり強めに返された気もするが・・・・まあ、こういう口ぶりはしょうがないんだろう。
この業界でやりあってきた俺だ。既にアデルの態度への耐性はついている。
見たか、アデルめ。これが大人の男の余裕と言うものだ。易々と動揺なぞしないのだ。それがジェダイだ。

「言われてないが勧めるくらいは良いだろう?」
「・・・あんたさ、何考えてんのかサッパリ分かんないよね」
「それは、君ほどじゃないだろう。古い映画なら君のマネージャーのスミスさんも楽しめるだろう。一緒に来ればいい」

まるで水面のように、今日の俺は落ち着いているぞ。素晴らしいじゃないか。
それに、彼女のマネージャーのあの人からは、人間として色々学べる気もするし実際親しくなってみたい。

「テメエ、あいつ目当てのデブ専か」s0-08 (30)

「なんでそうなった」
s0-08 (31)
誰がデブ専だと!?デブ専だと!?この俺が、デブ専だと!?しかもデブであいつはオッサンじゃねーか!
誰がゲイだ、まだゲイとでも思ってんのか!!?

「言っておくが!
 いいかアデル。これだけはちゃんと言っておく。差別なんざないが、俺自身はソッチ方面には一切気はない!断じてだ!!」
「あー、そ。クソデブと仲良くやりたいなら、あたし挟まないで直接やんなよ」

アデルはくっくっくと笑いながら、

「デブにあたしが電話かけてやるよ。自分で恥ずかしがらずに誘ってみな、トーマスちゃん」
s0-08 (36)
本気で電話されそうだが、それじゃあ彼に悪い。

「アデル。頼むからそういうジョークはやめ━━━」

止めようとしたのと同時に、目の前のアデルの表情が能面になって、俺の方が言葉を止めた。
待ち受け液晶に表示されてた着信履歴か何かか?

「どうしたんだ?」
「っ、あ。ぁー・・・・・・・メール、あの、デブが倒れたって。とりあえずあたし行くよ」
s0-08 (33)
声が上ずるほどアデルは最悪に動揺していた。
何通かメールが入ってかいるのか、指だけはいきなり忙しく動く。

「こういうときは自分で運転するな。俺が病院まで送ろう。車を呼ぶより早い」
s0-08 (35)












「くたばったかと思ったけど、元気そうじゃん。どいつもこいつもパニクって、メール寄越しすぎ」
「そう言うな。誰だって倒れてたら、ポックリお迎えかと思うだろう」
「階段でズッコけて気絶とはね。骨折ついでにそのデブ具合でいいのか、身体中いじくり回してもらいな」
「そうしてもらうよ。心配かけたな、アデル」
s0-08 (45)
彼のこの無事具合を見るまで顔中強張らせていたアデルは、それで明らかに緩まった。
しかし年齢も年齢だし・・・正直俺自身、危ないんじゃないかと思ったから安心はした。
アデルに連絡入れてきた連中は、肝心の続報をアデルに入れなかったらしい。

「だからあいつらヘナチョコだっつーんだよ。ちゃんとスタッフ教育しとけ、デブ」

オッサンの大きな顎が笑って揺れ、頷く。いいコンビだな。
彼は俺の方を見て、

「まさかアデルと一緒だったとは思いませんで・・・・バーネルさん、あなたまで巻き込んで申し訳ない。
 若いつもりで携帯触りながら、近道にと階段を使ったのが悪かったようで。年内はずっと病院でしょうな。お恥ずかしい」
s0-08 (43)
「気にしないでください。ちょうど彼女に、今度あなたもご一緒に会いたいと話していたくらいです。
 お元気そうな姿を見れて安心しました。彼女から既に奥様を亡くされてると伺いましたが、身の回りのことは大丈夫ですか?」
「うちの会社は人使いが荒いんでね。アシスタント共にやらせますよ。
 いやはや、どっかの跳ね返り娘と違って、よく気がつく。つくづくあなたはいい方ですな、バーネルさん」

彼ぐらいになれば、そのくらい頼める財産もスタッフもあるか。
一時代を築いた立役者だ。
s0-08 (44)
アデル達は仕事の話を始めた。飛び交うのは、俺の祖母でも知ってるような超有名ブランド名。
専門用語ばかりだが、要するにオッサンがいなくとも問題ないらしい。
話題は雑談になり、彼は本すら玩び始めた。

「そうだ、アデル。今年のクリスマスは私はここに居ることになる。さっそく古株の他患者にパーティー会費を回収されたよ」
「あ?別にいいよ。いつも特別なことしてないじゃん。その辺で遊ぶよ」
「まったく、お前は・・・・・・・━━━━ときにバーネルさんは、クリスマスは?」
s0-08 (49)
急に話題を振られて、俺は心底驚いた。同時に、このオッサンが俺にアデルの世話を任せたいらしいことが分かる。
そりゃそうだ。
実際はまだ俺たちには何にもないが、一緒に駆けつければ普通はただならぬ関係だと思うだろう。
その誤解に便乗する卑怯さなぞ持ってはないが、・・・・そいつを否定してやらない方がいい。

「前にお話したとおり、小さい実家で食事するくらいです。もし良ければ、彼女もうちに混ぜましょう。
 どうせいつも食事は余ります」
「は?何それ、あたし別に頼んでないじゃん」
「いいから混ぜさせてもらいなさい。クリスマスを一人で過ごすのなんか初めてだろう。・・・賑やかな方がいいんだ」
「・・・・・・・」
s0-08 (47)
俺は正直こういうことには鈍感じゃない。
確かに彼は両足にギプスはしていたが、ただの骨折の人間が心電図計を常時つけて、年一杯入院なんてなるわけがない。
心配事はないほうがいい。

「賑やかさだけなら、うちはうってつけですよ。スミスさん、安心してください」
「・・・・・ありがとう、バーネルさん。本当にあなたはいいひとだ。申し訳ない」
s0-08 (48)
気づいているのに黙っててくれて、ありがとう。
オッサンの目がそう言っている。
アデルに詳細な病状について知らせなかったのは、重すぎてスタッフもメールなんぞで知らせられなかったんだろう。

この部屋でアデルだけがいつもの通り、不良少女のように悪態ついてることだけが救いだ。
彼の目が語るとおりに俺も同じく、
・・・・そんな彼女を愛しいと思った。














季節が初夏から秋になって、
仕事で国を跨いで移動するのも当たり前のあたし達は、お互いのタイミングのいい時に連絡し合う。

ヤることヤッた後は、あたしは仕事の話をさせた。
s0-08 (63)
その話題の時のイアンこそ、一番素なのが分かったから。
弱音なんか吐くようなヤワい奴じゃ勿論ない。
そこがまた良かった。


あたしはこっちに来てヒマしたときは、イアンの根城のクラブに出入りした。
そこじゃ単なるダチの一人としてツルむし、赤黄青の3バカと一緒にこういう光景もフツーに見る。
s0-08 (53)
何かを耳元で言った後で、イアンが座位よろしく女を膝上に乗せる。
女は明らかに喜びながらも口では「恥ずかしい」だのほざいて、

「すごい部屋なんでしょ、どんななの?」
「んー?じゃ行くか。二人で」
「やーん、うそうそ!いいの?ほんとにー?」

イアンにまとわりつく女ってのは、どうしてああいうブリッコ系が多いんだか。
あたしが「聞いた?」と眉毛を上げるだけで、3バカも隠れて笑う。
イアンとあたしの関係はコイツらは気付いてない。
s0-08 (55)
こういう仕事から直行してきてるあいつは、仕事の疲れやら苛々をヤッてスッキリしたがってるときだ。
ずっと前に「てめーでオナる代わりにするなら他の女とやれ」って蹴り入れたら、
「じゃあそうさせてもらう」とあいつもあっさり同意した。
別にあたしが言わなくても、どうせそうする奴だし、関係だしね。イアンの右手代わりの女になんざ、何も思わない。

「アデル姐さんはどう思う?あのイアン」
「別に」
s0-08 (61)

「・・・・そっか。いやね?今までイアンと仲良くなったコは、やっぱりイアン~とかってなるんだよね。
 アデル姐さんほど長く俺らに溶け込んだオンナノコって居なかったんだ。イアンってああだから。
 ま、イアンは巧いから自分が振られるように仕向けるんだけど」
s0-08 (60)
赤は頭がいい。「若い今だけ」って決めて遊んでるタイプだ。
好きじゃない。
コイツだけは、イアンとあたしがヤってるのを気付いて黙ってるくせに、
こうやって探りを入れるのも嫌いだ。
また3バカは勝手にあっちこっちで一斉に喋りだす。

「まっ、オイシイトコ取りもあるけどねー。
 ダチのフォローは俺らきっちりするから❤ヤケになってもらっちゃっても俺はオッケーだし」
「あーあ。今頃あの城みたいな部屋に行く前に、駐車場でエロいことしてんだぜー、きっと。考えるだけで勃っちゃうよ」
s0-08 (58)
青はバカ。

「見に行く?」
「行っちゃいますか?」
「どうしますか?姐さん。久しぶりに妨害しちゃいますか。姐さんの命令なら何でもしちゃうよ。命令してして!むっちゃしてよ!」
s0-08 (57)
黄色はもっとバカ。

「しねーよ。行くならてめーらだけで行きな。そしたらあたしは帰るよ」
「姐さん行かないなら、俺いかなーい!」
「俺も❤」
「え・・・じゃあ俺も」
s0-08 (59)





どうでもいい女共が連れてかれんのも、あの偽部屋だ。
それにイアンの本当の家すら知らないのに、ダチだと言い張る奴ら。
s0-08 (66)
あいつの苛立ちも怒りも目標も疲れも、
結局分かってやってるのはあたしだけ。
本物の家に入り込んで、本物のあいつのダチといえる犬に会えてるのは、あたしだけ。

そんじょそこらの恋愛ゴトとは違うレベルで、あたしらは共有してる。
あたしだけが理解してやってる。
その事実にあたしはどんどんのめりこんでく。
s0-08 (62)
いつの間にかボウヤなんて見くびりも、消えた。







秋から冬になって、
あたしの仕事はデブなしでも回せるのが当たり前になった。
s0-08 (82)
あたしはイアンのことはよく分かるけど、
トムについては完全に何を考えてんのか分かんなかった。

2週間に1回位にひょっこりやってきて、ガキのような顔でオタク話を相変わらずしてる。
勿論あたしは、やっぱり口説かれるわけもない。
デブも口説かれてないらしい。(訊いたあたしがデブに叱られた。理不尽じゃね?)

s0-08 (83)
互いに仕事で飛び回るから会える回数は多くはないけど、
トムとあたしは、デブを挟んでダチみたいな関係になってる。
こいつに相手にされなかったコトも、もうどうでも良くなった。

もう全然、あたしの傷なんてなくなった。

理由?
s0-08 (64)
説明する必要ないだろ。









アデルの父親代わりの彼が病床にいるときに、俺は彼女と進展するつもりはなかった。
きちんと根底にはある、病床の彼への気遣いや愛情が分かりにくい形で見えるたび、強く、そして深く俺は惹かれた。

「爺さんの図々しい質問ですが、・・・あなたはアデルをどうお思いで?いわゆるデートする程度か、あー・・・それとも・・・」
「・・・・私は遊びでとりあえず、というのができない人間です。
 彼女に何も言っていないのに、最初にあなたに言うべきか、少し迷うのですが私は」
「おっとっと!それではそこまで!!そりゃいかん。 あぶないあぶない」
s0-08 (85)
そういって彼は笑ってくれたが、遮られてでも言うべきだったのかは俺には分からない。


そしてクリスマスを迎える前に、スミスさんは逝った。
エージェントとして数々のモデル達を世に出し、影に徹した彼の病室には最期の日まで花が絶えることはなく。

大人数を捌くことになる葬儀は、当然イベント会社が仕切ったが、
彼の意向の通り、彼の功績に不釣合いなほどの町の小さな教会で行われることになった。
・・・・まだ駆け出しだった頃に、彼が奥さんと挙式した場所だったらしい。
s0-08 (87)
60代から30代まで彼が送り出したモデルや、彼と関係のあった華々しい業界人たちが時間制で入れ替わり、
棺を運び出す前に教会の外ではお別れパーティが行われてる。
彼が亡くなるまでの3ヶ月間、一番彼と時間を過ごしていたアデルと俺だけが残された。

「・・・・一回も棺に寄らないが、いいのか。アデル」
「マジであいつ、あん中に入ってんのかね」
s0-08 (90)
彼が人生最後に自ら見つけ、育てたアデルは相変わらず”一見”ふてぶてしかった。
時間を重ねるうち、俺はなんとなく分かるようになったことがある。

「なんか嘘くさいよね。実はあいつ、どっかでバカンスでもしてんじゃないの?」
「いや。これで最後だよ」

目を逸らすな。

「アデル、そんなに彼を愛してると認めるのが怖いのか?彼がどれだけ君を愛してたか、ちゃんと知ってるんだろう。
 ちゃんと誤魔化さないで言った方がいい。最後だ」
s0-08 (89)


「あたしが怖がってるって?知ったような口きくんじゃねーよ」

「知ってるから言ってるんだ。
 君は映画でも、家族でも恋人でも愛だのを口にするのをよく馬鹿にしていたが、
 あんなものは確かにフィクションで作り物だが、実際に現実で大切だと皆思って知ってるから、ああいうものを描くんだ。
 ・・・・・アデル、人を素直に愛してると認めるっていうのは、カッコ悪いことじゃない。大人になったほうがいい」


「大人なら言わなくても分かる」
s0-08 (88)


「大人だからこそ最後くらい認めて、ちゃんとお別れもするべきだ。・・・俺も席をはずす」

アデルだけが都合よくここに取り残されるわけがない。
彼女自身はわかってなくても、亡くなった彼にも、そのスタッフにも、・・・弔問客にすら、娘同然だった彼女は一番気遣われてる。
しかし、すぐにアデルは「居て」と俺を止めて、腰を上げた。

彼は最後の仕事にと、アデルの喪服まで作らせるよう生前に手配したらしい。
美しく、典型的でなく、そして今後の彼女の仕事に一番利がありそうなブランドを選んだそうだ。
つくづくその愛の深さに恐れ入る。
━━━━ 俺もそうでありたいと、最後に彼からさらに学んだ。
s0-08 (94)
「おやすみ、ジョナサン。奥さんと一緒に、いい夢見て」

死んだ彼の名前を初めて呼ぶアデル声は、幼さすらある声で。
間抜けなことに見守っていた俺の方が耐えられず、目を押さえてしまった。

アデルは泣くでもなく、入り口近くの花を見て立ち止まる。
献花は故人の意向の通り、ささやかなもので統一させたらしいが、手持ちされた物も沢山あった。
とはいっても、そいつは手持ちにするには大きすぎる。
s0-08 (91)
ただ空気は壊さぬマナーを守ってはいる、相当に上等そうだ。

「愛とか何とか・・・ダッサいけどさ。どんだけ離れてようが関係ないよね」

俺は勿論、アデルがそう言っているのは亡き彼だろうと思う。
距離なんざ・・・

「ダサくなんかない。
 それに、物理的な距離は関係あるわけない。相手と心がちゃんと重なって、寄り添ってればいいんだ」
s0-08 (92)
アデルは「だね」と言って、教会外の集まりに溶け込んでいった。






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夜。
ジョナサン・スミス氏の葬式を終えて家に戻った俺は、
いつもの通りBGMにとテレビをつける。

『━━━ 本日経済誌が発表した"本国内 大企業ベスト400"に、とうとうあの新進気鋭の実業家が迎えられました。
 この権威あるランキングに、創業5年未満という短さで食い込んだ実績に、市場は即反応。
 国内外の機関投資家からの買い注文を中心に、グレンツ社株は史上最高値で本日の取引を終了しました。
 先程行われたCEOイアン・グレンツ氏による受賞スピーチを、ノーカットでお送りいたします』
s0-08 (95)
すごいな。
国内の色々な企業を統合してグループ化してってるのは知っていたが、
ここまで駆け上がってく人間はそういないぞ。

映画プロデューサーなんていっても、俺自身が仕事で時間を費やす大半は、資金集めの銀行と投資家相手だ。
目利きが厳しい機関投資家が動きだしたなら、こいつは本物になる。
いや、もう「なりつつある」と認められだした。
s0-08 (98)
といっても今日は心がくたくただ。
頭を使わないもんを観たい。
俺はすぐにチャンネルを映画ケーブルに切り替えた。











「・・・・そういえばこの前、イアンと消えてたじゃん。あの後どしたの?」
「そりゃあ、アレだよぉ❤」
「アレっちゃったー?」
s0-08 (72)
キャハハハハ・・・・


「もうねー、聞いてよ!イアンってばむっちゃくちゃ優しいの~気持ちいいの~。っていうかエロいのー!」
「やだー、あたしシモいのムリー。でも聞いちゃう~」
s0-08 (73)
キャッハハハ・・・・


「ウチのカレシなんかよりも、むっちゃ一杯チュッチュしてくれたしさー❤ぎゅーして寝てくれるんだよ~❤
 お願いしたらフッツーにカバンとかね、朝になったら届いてんの!プレゼント!すっごくない!?
 もうさ、『あたし愛されてる!?』ってむっちゃメロメロだよ~~」
「図々し~~」
s0-08 (74)
「いいのいいの~~ どうせ一回だけだもん。どーせあたしじゃマジに付き合ってもらうなんて無理だしさ!
 つか、イアンにカレシのこと言ってないし。
 でもねー、むっちゃ『きゅん❤』ってした~、しかも超うまかったー。でもうまいからじゃないのー、もうむっちゃ好きー」

キャハハハ!!サイテー!

・・・・。
トイレの個室に誰もいないか位、確認しろっての。
s0-08 (75)
でもあたしは舌打ちすらできないで息を潜める。
あいつが、イアンが他の女をどう扱ってるかは知ってる。遊び、その場限り。

でも、どう抱いてるかは知らなかったし考えたこともなかった。
てっきり手抜きして、適当こいてんだとか思ってたよ。
イアンあんた、あたし以外でも、そーゆー・・・・やり方してやってるわけ。あたしだけじゃないわけ。

前にステージで転んだときくらい、あたしは頭の中身が揺れる。
s0-08 (76)
━━━━ "そんなに彼を愛してると認めるのが怖いのか"
あのオタクの言葉が不意打ちで浮かんで、そのせいでこんな余計なコトにあたしは気付いた。

トイレの個室のドアの外の女共が、
クラブのフロアに戻った気配が分かった途端、あたしは花瓶を蹴り倒す。
・・・・ひとの男なんだと思ってんだ。



イアンはとうとうあたしの場所へと登ってきて、
国内で一番高級を売りにしてるファッション雑誌で、あたしと一緒にグラビアを飾るほどになった。
その撮影の後、あたしはすぐに奴のところに戻る。

「よう、戻ってきたのか。意外に暇なんだな」
s0-08 (86)


「暇じゃなわけないじゃん。次の予定があるから40分しかないの」
s0-08 (105)
さっき雑誌のエディターがこいつに投げた質問は、『付き合ってる相手はいるか?』
当然、そんなもん当たり障りなく答えるに決まってるけど、
この野郎は当たり前にそう答えた挙句、『その質問してくれた読者さんの連絡先を』なんて言いやがった。

そこまで媚びる必要なんざねーだろうが。
ムカついたまんま、あたしはイアンのタオルを剥がしに掛かると、

「おいおい、いきなりガッつくな。ドラマかよ」
「あんな質問、すっごいムカつく。バカなエディターの考えそうな感じでさ。あんたもヘラヘラ答えちゃってバカみたい」
s0-08 (106)
今更ぶつけ方が分からないあたしの愛は、自覚した途端に暴れだした。






→LAST EPISODE "Intersect"



SEASON 0;the dark chronicle[7]

アレックス&エリンサイドは今回がラストとなります。
当時書こうと思ったけど削った第一シーズンの、とあるシーンの裏側。
1年以上経って、今だから書けるようになりました。書けて相当舞い上がっています。感無量です。
それもここのストーリーを長く読んでくださってるあなたのおかげです。本当に。
どうもありがとうございます。






━━━━『アレックス&エリン』サイド 前回までのあらすじは━━━━
楽しさと刺激を求めるために盗みを働くエリンは、命の危険を伴う高層ビルへの侵入計画を決める。
アレックスは悩みながらも諌めることすらできないまま、その当日を迎えた。
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エリンは自分の死後のアレックスのことに考え及び、人との繋がりを厭いながらも、その計画は頓挫となった。
アレックスはそれを手放しで喜んだもの、同時に強い自己嫌悪に浸る。









■「SEASON 0;The dark chronicle」ご注意■
今の本編連載とは少しストーリーの色が違いますので、以下の点をご了承ください。

・連載本編シーズン1以前なのでエリン/アレックス/イアン3名が、改心&成長前であるため人物像が若干異なります。
・暴力・流血表現はありませんが普通にアダルト描写・SS含みます(「番外編Mr.Egoist 」と同程度)


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新年を迎えて、数分。
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エリンから計画放棄の連絡を受け、情けなくも泣いて火照った頭のまま、いつのまにか冷や汗だらけの服を脱ぐ。
すぐに駆けつけられる距離にいない俺が、こんな格好でいる必要もなかったんだけれど。

彼女が命を賭けているときに、
ごろごろとした格好でなんか居たくもなかったんだ。
意味もないのに、そんなことでこの罪が晴れるわけでもないのに俺は馬鹿だ。
s0-07 (7)
エリンが無事だと分かって、
「もうそんなことはしない」と宣言されても気分が晴れるわけがない。

俺自身の中には、卑怯な自分自身への言い訳が残ったままだ。

━━どうせ俺が止めてもやめないなら、止めること自体が無意味じゃないか。
━━止めても止めなくても同じなら、止めなくてもいいだろ。彼女は俺みたいな凡人とは違う、死ぬわけがない。
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違うだろ、そうじゃない。
本当に俺が思ってしまったのは。

彼女が帰って来た場合に、余計なことを言わないほうが何も変わらずエリンの隣に居られる━━━━
最低なことに、そこに終着した。
そして簡単に引き返せなくなって、
彼女の命がかかっていようと結局いつもと同じように加担までした。
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盗みを手伝ってほしいと初めて誘われた数年前から、俺は全く進歩してない。悪化してる。

彼女が死ぬかもしれないのに、俺は彼女の隣にいる手段を考えた・・・・・本末転倒も甚だしい。
でもそうでなければ俺を傍に置こうとしないエリン。
俺はそんな彼女を、心のどこかでずっと厭うてもいる。

これはもう恋や愛じゃない。
こんなにも歪みきっているものが、そんな綺麗なものであるはずがない。
s0-07 (8)
天国のウィリアムと、はるか海の向こうのエリンのために、俺は自分のと同じように注ぎ入れる。
君たちは揃って2人とも、遠くの場所にいたままだね。

昨日から碌に食べてなかったから、酔いはすぐに回ってくれた。
酒の力で俺の願いは暴かれる。

俺はエリンと2人だけなら、この退廃的で愚かしい生活が死ぬまで続いてもいいと思ってる。
彼女は自分の意思で隣に誰も置こうとしないからこそ、誰も俺たちの邪魔にならない。
s0-07 (9)
そこに、俺は心の底から安心もしてる。
歪んでる。
捩れてる。
でもそうでいる限り、ここは俺たちだけの城だ。
誰も来なくていい。


必要もない。








s0-07-top[1]









「おかえりなさい、オーナー」
「アレックス、ただいま!帰って早々だけど、今電話しながら帰ってきたの。午後にお客さんが来るから準備してちょうだい」
「もちろん。どなたでしょう?」

エリンは社交界、なんていうほど堅すぎではないけれど、
この隠れ家がある島では「名家」「裕福」と言われるような人間とも付き合うようになった(島の外でもそうなのかは俺は知らない)
s0-07 (33)
エリンは派手な露出をして観光シーズンの街へ遊んだかと思えば、
俺も昔は馴染みもあった世界にもこうして平然と溶け込んでもみせる。
その手の堅い人間が、エリンの遊び癖を知らないはずはないんだけどね。

でも分かるよ。
彼女はどこか黒いものを孕んでそうなのに面倒は起こさなそうで、無条件で惹かれる不思議な魅力がある。
有閑な人間達が最も好きなタイプだ。
s0-07 (34)
「まあ。あなたのご主人がメイドと浮気を?間違いではないの?」
「確証があるわけではないんですけれどね、何となく距離感がおかしいのよ」

女性の勘は鋭いし、たぶん正解だろうなあ。
そして展開するのは相談というよりも愚痴大会。傍で聞いてる俺ですら、うんざりするほど退屈だ。
でもエリンは表情をくるくる変えながら、
尋ね、聞き流し、大げさに悲しんでもみせる。
s0-07 (25)
でもエリンは絶対飽きてる。
演技というのは俺にだからこそ分かる。本当にエリンは芸達者だ。
愚痴る相手が欲しかっただけらしいマダムは表情が明るくなってきた。
なるほど、それが狙いだったんだね。

頃合を見て、俺は庭の薔薇をいくつか摘み始める。
ついでに害虫チェック━━━━こればっかりはいつまで経っても慣れない。
ちょっと枝を横へやると、急に日向になったせいで、
木の根元でダンゴ虫やら・・・・名前が分からない茶虫が逃げ回った。
s0-07 (35)
・・・・すごく気持ちが悪い。
最悪だ、見たくない。
庭師さんは全く薔薇に害はないって言ってたけれど・・・綺麗な蝶だけ来るようにとかはできないのかな?

庭の管理は完全にプロに任せて、俺は飾るため摘んでゆくだけ。
でも薔薇に触る以上、こういう光景を見ないわけにはいかない。

枝の陰でささやかに巣作りしてる小さな蜘蛛を見つけて、つい溜め息。
そういえば、いつかも似たようなのを見た気がする。
s0-07 (10)
まさかお前、あれからずっと居るのか?居られると困るって言ったろ。
お客さんが帰ったら、またホウキでどいてもらうよ。

「ねえ、エリンさん。あなたならどうなさる?」
「そうねえ。全く同じ立場だとしたら、そのメイドの彼女を追い出すかな。
 だって私のおうちで浮気されてるって━━━おうちっていったら、私の領土だもの。敵は追い出すだけ!でしょ?」
s0-07 (27)
エリンらしい。
俺の頬が緩んでしまうのを隠すように背を向けると、玄関の呼び鈴が響いた。












アレックスが玄関の呼び鈴の対応のためにいなくなると、
彼女はわざとらしく辺りを伺った。

「エリンさん。実は他にもあるの。うちの大学3年娘のメルチェーデがね、あなたが居ない時にこちらに寄ったみたいで。
 ついでに寄っただけなのに、アレクサンドロス・・・アレックスさんがご丁寧にお茶を出してくださったみたいなの。
 とても優しい、良い方ね」
「そうだったの。まだ聞いてなかったわ」
s0-07 (29)
私はまだアレックスから留守中の報告はされてない。
今日この隠れ家に戻ってすぐ、アレックスには彼女を迎える準備をしてもらっちゃったし。
そもそも突然訪問って、母子揃って図々しい。

「ここだけの話、メルチェーデってば、すっかり彼が気になっているみたいでね。今日も少し来たそうにしていたの。
 彼っておいくつ?やっぱり代々執事をなさってるの?」
「確か今24歳かしら。アレックスは執事っていうよりも私の秘書で、本業は画家よ。
 ・・・それはともかく。つまりメルチェーデちゃんと縁を取り持ちたいってことよね?」
s0-07 (30)
「そうなの。とはいっても上司のあなたから直接的に言って貰うなんて、アレックスさんもお断りもしにくわよね。
 だからまた2人で会わせてやりたくて。娘も乗り気で━━━━」

彼女は、『偶然を装って、いかにアレックスと自分の娘を"運命の再会"をさせようか』の計画を勝手に語り始める。
できる限り色んな人間と付き合いして、色々と勉強してるけど・・・
これはハッキリ言って、不愉快。
この私ですら1回もヤッてもないのに。

「でもアレックスはゲイだし無理だと思うわ」
s0-07 (31)
当然、これは嘘。
でも他にも同じようなこと言って来る人間が出てきそうだし、こう答えれば勝手に広まるでしょ?

自分が欲しいものは自分の力で取るべきなのよ、メルチェーデちゃん。
アレックスみたいな上物を親任せで手に入れようなんて、甘すぎ。
自分で獲りにいけって話よ。












建物の脇を通って、外から玄関前のほうが近い。
俺は手に荷物を抱えたまま、玄関に来た人間を待たせないように早歩きで向かう。

玄関前に立っているのはエリンのスケジュールを取り纏めてる俺が、全く知らない人間だった。
ということはエリンの、"個人的な"相手ってことになる。
s0-07.jpg
「なんだ。誰も居ないのかと思ったよ!遅いじゃん」
「・・・・お約束はありますか?」

どうせないだろう?
ダブルブッキングなんて浅いこと、エリンがするわけもない。

エリンとここで過ごして年単位なのに、俺がこうして直接彼女の相手を迎えるのは初めてだ。
連絡も入れずに押し掛けるなんて、エリンは随分行儀が悪いのを釣ったみたいだね。
s0-07 (24)
俺は礼儀としての笑顔も出さず、なんとなく玄関ドア前に立って塞いだ。
相手も怪訝な顔をしながら退く。

「約束はないけど近くまで来たからさ。電話繋がらないけど今日あいつ、エリン居んの?
 まだ旅行してんなら、あいつのホテル教えて欲しいんだけど」
「申し訳ありませんが、お約束がないのであればお引取りください」
「・・・・・キミ、執事サンってやつだろ?
 うちにも居るけどさ。客がこーゆーお願いしたら、まず主人のエリンに訊いてみないとだめじゃん。 ね?」
s0-07 (21)
瞬間、身体中の血液が一気に頭に上がったかと思うと、氷の冷たさで下がった。
言葉が反射的に出る。

「私が知らない人間に、来客対応をする必要はないと言われてます」

当然、これは嘘。
でもこういうことをする男だと分かれば、エリンはどうせ同じことを俺に指示する。俺には分かる。
しかし物分りが悪い男は、随分と驚いたみたいで目を丸めた。
s0-07 (11)
俺を上から下へ品定めするように見たかと思うと、何やらイラついた舌打ちをされた。
なまじ歳が近いせいで余計な反感を買ったか。

着てる物と振る舞いからすると、田舎の小金持ち、ってやつかな。
外身と中身の価値の差が、随分と目に余る。

「お前、随分偉そうだけど何なん?」
「お答えする必要はありません」
s0-07 (23)
さっさと俺の、俺たちの家から出て行って欲しい。
あとエリンの部屋用の花を、早く水に浸してあげたい。
俺は手の中の荷物たちを持ち直した。

「雇われの人間が偉そうに、お前 何様だってつってんだよ!さっさと質問に答えろっつって━━━━」

途端に、
威勢よく言いかけてた男が奇妙な緊張をして固まった。

??
・・・・・・ああ。
s0-07 (16)
白い薔薇の中で潜んでいる庭バサミをお互いに見た後、
改めて目が合う。

この怯えた色に、俺はつい顔を緩めてしまった。
そんなこと、するわけがない。
s0-07 (22)
覚悟もないなら、最初から喧嘩を売らなければ良いのに━━━━ この程度か。

今までずっと、見えていなかったエリンの男達に渦巻いていた嫉妬が軽くなりだす。
遊ばれてる以下だっていうにも気付かずに恋人面して来て、結果この惨めさか。
可哀相に。
そのあまりの小ささに、怯えさせて悪かったと俺は優しくすらできるよ。
s0-07 (20)
「ご対応が至らず、誠に申し訳ありません。
 後日お電話で改めてお約束頂戴できればと思いますので、本日はどうかお引取りください」

聞こえないように小声で吐き捨てて、彼はおぼつかない足取りで出て行く。

その歩いた線は、さっき見た名前も分からない虫達のように奇妙で弱弱しい。
俺はわざと訪問者の名前を訊かなかった。必要もない。
s0-07 (68)
お前達はその程度の存在だ。
俺にも、彼女にもだ。


来客の女性が帰ったあとは、エリンは庭で本を読んだりぶらついたりと過ごして、俺も付き随う。

「あ。そういえばアレックス。さっき誰か来たみたいだったけれど誰だった?」
「名前を聞きそびれてしまいましたが、金髪の長い髪の男性ですね。
 応対した時に不注意で庭鋏を持ったままだったので驚かせたかもしれません。必要ならお詫びをしますので連絡先を」
「必要ないわ。もう会うつもりも私にはないし。むしろ悪かったわね」

ほら、やっぱり。
s0-07 (57)
「そんなことより、アレックス。さっき薔薇の木の根っこをじろじろ見てたけど枯れちゃってるの?」

よく見てる。やっぱり俺の思った通り、愚痴話はつまらなかったみたいだね。
俺は先ほどの男が去ってから初めて心から微笑んだ。

「いいえ。虫が色々居たので気になっていただけです」
「薔薇をダメにしちゃうようなのを放っておかれてるなら、庭師を替えたほうがいいわ」
「そういう類のではないです。ダンゴ虫とか茶色い・・・ただ居るだけの虫です。
 薬も撒けるらしいんですがプールの横で気が進まなくて。多少は木にも影響が出るみたいで現状を維持してます」
s0-07 (67)
「なるほどねー」
「ただ醜いので正直迷ってはいます」

そう、ただ醜い。
さっきの男みたいに、美しいものに寄り付く不快極まりない虫たち。
顔を上げるとエリンは猫のように目を細めて何やら楽しそうな顔をしてて、俺は驚く。
なんだろう?

「可愛くないとか好きじゃないとかなら分かるけど、会話で"醜い"なんて強い言葉、初めて聞いた。
 相当虫が嫌いでしょ、アレックス。弱点みーっけ」
s0-07 (58)
俺の中をすべて見抜かれた錯覚を覚えて、一瞬言葉が出ない。

「いえ、あの・・・・子供の頃は普通に虫捕りもしてましたよ。大人になると、触ろうとは思いませんが別に平気です。
 せっかく庭なので、例えば・・・そうだな。アゲハ蝶とか呼んだりできればいいんですけれど」

確かに大人になってからは虫はかなり苦手だ。気付いたら生理的嫌悪が先立つようになってた。
でも軟弱な男扱いされるわけにいかないから、俺は茶化しにかかる。

「残念ながら棲みついてるのは、なかなか図々しい蜘蛛くらいで。家賃を取ろうか考えてます。
 他の木に何回か移してはいるんですが薔薇にばかり集ってしまって」
s0-07 (60)
「クモ??手の平くらいとか、でっかい?」
「いや、見えるのがやっと位の、・・・・すぐ逃げる臆病な小さい奴ですが」

何も考えずにそこまで喋ったところで、俺は頭の片隅で「俺みたいだ」と思ってしまった。
臆病者で卑小な者。

するとエリンは俺がホウキを突っ込もうとしてた箇所を訊いて、男の子のように興味津々と覗き込む。
逞しいとは思っていたけれど、本当に君は・・・・。
と、エリンはいきなり蜘蛛に手伸ばした。

「!?」
s0-07 (61)
「なんて可愛い蜘蛛ちゃん。赤ちゃんかな。
 アレックス、これはこのまま居させてもいいじゃない。蜘蛛は益虫だし、花に付く害虫を食べてくれるの。知らない?」

エリンの行動と、全く知らなかった知識という2つの驚きに、俺は呆気に取られて口を開けてしまう。
そんな俺に彼女は「ふふ」と誇らしげに笑い、

「5ミリもないし、ホウキじゃ逃げられちゃうだけよ。
 でもアレックスは花のあるとことに住まれるのがいやみたいだから、引越しだけしてもらいましょうね」
「は・・・」
s0-07 (63)
確かに「ちょろり」という表現がふさわしいくらい、蟻より小さい蜘蛛だ。
俺でも直に触ろうとは思わないのに。

「・・・・毒とかあったりは」
「あるわけないでしょ。毒のあるやつは別のやつ」

そうしてエリンは、ふっと細く鋭い息をかけて蜘蛛を風に乗せる。
馬鹿なことに、その蜘蛛を自分みたいだと思ってたせいで、俺の心臓は一回だけ大きく揺れた。
s0-07 (62)
自由の風に乗ったはずの蜘蛛の姿は、当然俺には見えない。
でも視力がいいエリンの目の動きによると、奴はやっぱり図々しく、今度は違う薔薇に着地したらしい。

「あらら、・・・・・見かけの割に随分頑固なコね。もう放っておきましょ。
 大体アレックスも嫌ならジロジロ見なければいいじゃない。そしたら気にならないのに。でしょ?」
「・・・わかりました」

すごいな。まるで本当に女神のように思えてきたよ。

「あのね。私が昔住んでいた所にはね、大きなレモンの木があったの。酸っぱい実だけど、お花は甘くていい香りがするのよ」
s0-07 (64)
俺は称える気持ちと共に自分のハンカチを差し出す。
突然なんだろう?

エリンが寺院で育った孤児だというのは、家を出る前に俺一人で内密に調べたから知っている。
親のことまでは調べはつかなかったけれど。
でもエリンは、俺がそれを知ってるのは知らない。

だから今、俺たちは同じレモンの木々を思い浮かべてるはずだ━━寺院の裏手のやつ。
密かに俺の心は温まる。
s0-07 (56)
「でも春になると葉っぱがボロボロにされちゃうのよね。アゲハ蝶の幼虫の大好物で、みーんな食べちゃうの。
 アゲハ蝶って大きいでしょう?だから幼虫もすっごいでっかくって、すっごい食欲なの!
 だから嫌いよ、あんな図々しいの」

まさか蝶が嫌いと返されるとは思わなかったな。
俺は声を出して笑ってしまった。

「私にはさっきの蜘蛛ちゃんの方がいいわ。悪さしないし、目立って巣で汚してもなかったし。
 あのこがここが好きなら居ればいいのよ。薔薇のためになるなら、それでいいじゃない?深く考えることでもないわ」
s0-07 (65)
それだけだ。

それだけで、
俺の中でずっと自己嫌悪でぐちゃぐちゃとしていたものが瞬間すとんと落ち着いた。
たまたま俺が自分に見立てた、あの蜘蛛を偶然肯定されただけ。

「・・・・そうですね。深く考えるのはやめにします」
s0-07 (70)
ちゃんと分かってるよ。
これはただの偶然で、我ながら・・・・ひどく単純で。

でもこんな単純なことが、こんなに嬉しいなら離れられるわけがないじゃないか。
頭ではどうしようもないんだ。

「ほんと綺麗な紫色。このラベンダーの紫も好きよ」
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・・・きっと、愛よりも俺のものは醜い。



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でもこれからも蜘蛛はここで暮らし続ける。
腹を空かせては図々しい蝶を食べて、薔薇に群がる害虫を噛み千切りながら。












二週間ほどして、また島でダラダラするのも飽きちゃった私は出かけることにした。
目的地はもちろん未定だから、空港でいつも通り『旅の目的地探し』にかかるところ。
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アレックスってば自然の庭まで思い通りにしたいとはねえ・・・
彼にとっては、庭もキャンバスと同じ感覚なのね。虫まで思い通りに出来るわけなんてないのに。
そもそも『庭に余計な虫は要らない。薔薇と蝶がいい』なーんて、良くも悪くも踏襲的な構図。
『庭らしい庭』でつまんないし、・・・・アレックスらしさが皆無。

彼と居るようになってからのオリジナルの絵も、そういうところがある。
今の絵は、何となく『絵っぽい絵』っていうか。
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しかも何だか寂しい感じだし、売れてはきているけれど、実は好きじゃないから屋敷には飾らせてはない。
昔サウスの家で勝手に見つけた物の方が断然に良かったのに。
なんで?優しい、温かい。あの本物に出会えた感じ。
だからもっと見たいと思ったのにな。

・・・・あら、『旅の目的地探し』のご協力者さん、発見❤

いつも通り、いい男だなーっていうヒトを見かけたら、その人にオススメの場所を訊くのがお約束。
ま、早い話がナンパなんだけど。
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・・・・残念ながら話しかけた後で既婚だと分かって、珍しく空振り。
結婚指輪の確認なんて基本中の基本をすっかり忘れちゃってて、すぐに私は話を畳みに掛かる。

「じゃあオススメの場所、教えてくれる?私、こうして旅先で偶然会った人に訊いて、そこへ旅行するのがすきなの」
「成程それは面白いですね。仕事でよくサンセットバレーに居るんですが、海も山もあって良いところですよ」

「そちらにはどんな思い出が?」
「思い出というか・・・・職場なのでね。そこで仕事をしてなければ妻にも会えなかったでしょうから」
「まあ。新婚さんはお熱いのね」
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そこで初めて目の前の彼ははにかんで微笑むけど、
・・・・ナンパした身としては、この男の空気の読めなさ加減は純粋にムッカつく。

そして私は、その人と別れた直後にサンセットバレー行きをの搭乗手配をする。
ホテルは飽きちゃったし、適当にどっかの家でも貰っちゃおうかな?好きにいじれるし。













エリンの次の目的地は、サンセットバレーだったらしい。
ここ数ヶ月、彼女本人からの連絡より早く、
新聞やらテレビのニュースでエリンが今どこに居るのかを知ることの方が多くなった。

そして暫くするといつものようにエリンはふらりと帰って来た。
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戻って来た途端に、エリンには色々な招待の声が掛かかって、俺は秘書としてそれもさばく。
エリンは以前浮気について相談してきたマダムの開く、
テニス三昧のパーティに泊りがけで行くことにしたらしい。

「オーナー、何か召し上がりますか?」
「時間がないの。じゃあ明日の朝には戻るから」
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「しかし・・・・・」

食欲旺盛なエリンなのに、時差ボケ直しのために一日プールで泳いでたから、ちゃんと食事をしてない。
珍しく目の感じから睡眠も足りてない気がするし。
この時間からの集まりじゃ、食事も彼女には物足りない量しか出ないに決まってる。

なのにエリンはひらひらと指を動かして、出かけてしまった。
まあ・・・俺よりも相当しっかりしてるし、変なことにはならないとは思うけれど。





そう思っていたのに、エリンは酔い潰れて帰ってきた。
俺は彼女も普通の人間だと言うのを、こんな形で知ることになった。
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何回か水は飲ませて寝させておこうとしたけど、俺は廊下で引き返した。
やっぱりちゃんと確かめた方がいい。
急性アルコール中毒の対応方法、大学でオリエンテーションだかでやったな。

「エリン、ごめんね。痛いよ」
「!! ったいなぁ!!寝てんのに、さっきからごっちゃごちゃうるっさいぃ!!Silenzio!!あっちいけ!」

痛覚の確認のためにつねった俺を、エリンは罵りながら倍返し以上の強さと回数で叩き返す。
ご丁寧にイタリア語でも叩きつけられた彼女の罵りにびっくりしつつ、
俺は暴れ終わった彼女の腕を毛布に戻した。
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・・・・・理不尽なのは慣れてるけど相当な酩酊状態だな。
昏睡じゃないけど医者に訊いた方がいい。
こっちの公共の救急は軽症だと何時間も放置されるし、俺は電話で掛かりつけの医者に連絡する。

何度か部屋と廊下を往復して質問通りにエリンの状態を確認すると、
救急対応が必要ではないらしい。
ただし目は離すなと指示されて、あと。

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『さっきも言いましたが、体を縛り付けてるものを脱がせるのを忘れないように。
 うつ伏せで顔を横にさせて寝させてください。さっき話した症状が出たらすぐ救急に電話を』

・・・・・。
やっぱりそうだよな、分かってはいたけど。

なんでこんなことになってるんだ?
でも出先でこの状態にならなくて本当に良かった。
ドレスの胴回りを撫でながらファスナーの位置を探し当てる最中も、俺の心音はうるさい。
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できるだけ見ないようにドレスを脱がせたら、結局凝視することになった。
やらしい意味じゃない。

ドレスで出かけるってことで、昼間彼女にプロのヘアメイクを呼んだのは俺だけど、
・・・・・まさかコルセットまで着てると思わないだろ?!
普通なら寝間着を着せて、服の上からブラジャーの金具外しておく位で考えたのに、とんでもない大仕事だ!
結び目自体はエリン自身が解けるようになってたけど、
紐を穴から抜くのは他人がやるには相当手間だ。
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エリンは酒のせいなのかは分からないけど、さっきから軽くイビキをしながら寝たまま。
正直その方がいい。
作業。これはただの作業だ。人命救助、人命救助。それだけを繰り返せ。起きる前に終わらせないと。急げ。
背中の紐をやっとの思いで金具から抜ききり、
エリンに毛布をかけて俺はコルセットをゆっくり引き抜きにかかる。

う、わ・・・     ・・・・・

「~~~~~~」

流石に耐えられなくなって、脱がせたそれを床に放り投げると、早足で一旦廊下に出る。
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がん、とした痛さと冷たさを壁から貰いながら、素早く深呼吸。
泥酔してる女性、しかもエリンだ。そんなことを考えること自体、最低だ。しっかりしろ。忘れろ。
俺が目を離さず同じ部屋に居るようなら、何か服を着させないといけない。
当然の配慮だ。

・・・・それにしても、結局しっかり見てしまったエリンの胸、俺が考えてたよりも一回り大きかったな。
まさか下着で大きさを抑えてるのかな。
もったいない。
s0-07 (42)
?? パジャマがどこにもない。
これだけの付き合いだけど、エリンがどんな格好で寝てるのかも知らない。
まさか裸なわけもないし、Tシャツとかで寝るのかな。
俺は適当な柔らかそうなシャツを手に取った。・・・・もちろん、絶対に透けなそうなやつだ。


そこからは、ひたすら看視する。
大体、3時間かそのくらいすれば落ち着くかな?
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俺がしてることといえば看視っていうより、鑑賞に近いけど。
少しずつ赤すぎていた頬の色が薄くなっていた気がする。

全然食事をしてなかった上に、あの締め付ける下着のせいで、こんなになったのかもしれない。
そうなると脱がせたほうが、やっぱり回復も早いのかもしれないね。
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でも・・・・この寝相が悪いのは元々なのかな?
本当は下に何かズボンでも履かせられたらよかったんだけれど、それは躊躇われたし着せてない。
毛布が完全にずれる前に、俺はまた彼女の肩まで引き上げる。
これで今夜は5回目。

エリンの酔いは大丈夫そうだと素人目にも分かって来た頃には、
少しだけ地平線は白み始めていた。
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覚えてるかどうかも分からないし、もう1時間くらい見たら部屋から出た方がいいかな。

床に放り投げたままのドレスやらを片付けようとして、俺は手を止める。
エリンはいつも何でも脱ぎっぱなし、使いっぱなしだ。
片付けるのはいつも俺。
覚えてないかもしれない可能性があるなら、エリンが自分で脱いだと思えるように全部このままがいい。

最後に、エリンに悪さをするとしたらこれだけだ。
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寝てる彼女に何かなんてしても意味はない。
恩を着せたくもないし、恥もかかせたくない。
俺の目を見て、俺の名前を呼んで、俺の声を聞いて、・・・・・君からも俺を求めてほしい。


けれど、ほんの少しだけど君の知らない部分を知れてよかった。


s0-07 (54)
飲みすぎると悪夢を見るって言うけれど、この強いエリンには無縁か。
いい夢を。

































「島を離れる!?またそんな・・・・急な話だねえ!」
「うん、急用でね ━━━━ 事の次第によっては、もうここには戻れないかもしれない」
「ええ!?」
season0-01 (34)[1]
邪魔されるのが嫌いだと公言して憚らないエリンが、俺のサンセットバレーへの来訪に本気で怒ればそういうことになる。
そうなったら俺はここにはもう戻るつもりはない。

「でも、あなた達には本当にお世話になったから挨拶だけは寄りたかったんだ。今まで本当にありがとう。
 とっても美味しかったし・・・楽しかった」

国柄なのかは知らないけれど、俺のその一言で店主夫妻はみるみる涙目になった・・・・特にご主人の方が。
俺は窒息寸前まで締め上げられる。
俺の人生で、この店はきっとずっと一番だ。
s0-07 (73)
エリンがいない間の孤独を癒してくれたのは、紛れもなくあなた達だった。
ふつうの夫婦というのも初めて身近に知った。素敵だった。

「まだ船の時間はあるだろ!?飲んでけよ!」
「実はあんまりないんだ。船はタクシー呼んだんだけど、焦りすぎて早い飛行機を取ってしまってね。
 次の直行便は明日だし、もう出ないといけないんだよ。本当にありがとう」
「珍しく慌ててるなあ    ・・・・女か!?」

・・・・よっぽど俺の顔色は分かりやすく変わったらしい。
s0-07 (72)
『本場イタリア男からのアドバイス』とやらを早口で押し付けられながら、俺は後ろに下がる。
勢いで挨拶を済ませないと、・・・・ちょっと出られなさそうだ。
奥さんは俺がよく飲んでたオレンジジュースのパックを何故か手土産だと出して、急な別れを叱って泣いた。

「さよならなんて許さないから!どんだけかかってもいいから、いつかまた来て。ね!?」
「気をつけろよ!定休日でも来ていいんだからな!」
「うん、本当にありがとう。じゃあ・・・・・ いってきます」
s0-07 (69)
そして、さようなら。





俺はいつもエリンがしていたように、手ぶらで島を後にした。



- SEASON 0;the dark chronicle(Alex&Erin side) THE END-
→Go Ahead(back) SEASON1←





→EPISODE 8(IAN&ADELE&TOM SIDE)へつづく



SEASON 0 登場人物紹介



■IAN & ADELE &TOM SIDE


s0-adele_20140630005534bf1.jpgアデル ADELE
正式な名前は「アデル・エヴァンズ」
16歳の時ランウェイモデルとしてキャリアをスタートし、
10年経った今も第一線に立つ。口と性格が悪いと、悪名高い。
色々なスポーツ選手と、適当にくっついては離れたりらしい。



s0-ian.jpgイアン・グレンツ Ian Grenz
大学中退して立ち上げた起業が当たった、ITバブルの寵児。
ただし世間では「運だけで成功した」と見られている。
遊び人で、夜はほとんどクラブに入り浸っているらしい。



s0-tom.jpg
トム・バーネル Tom Burnel
正式な名前は「トーマス・バーネル」
映画プロデューサーとして成功した一人。
自身の映画にも並々ならぬ思いがあるらしい、非常に真面目な人物。
恋愛面において、どういう人物かは不明。



s0-chara (1)アデルのマネージャー 
本来の職業はモデルエージェントだったが
偶然出会ったアデルをスカウトし、マネージャーとなった。
アデルの手綱をさばく、父親のような役。



s0-chara (2)ウォーレス・オードリー Wallace Awdry
とある老舗一流ブランドメゾンのディレクターへ上り詰めた、
成功したファッションデザイナー。
アデルを心酔しているが、自身の仕事が第一で非常に利己的。



■ ALEX & ERIN SIDE


s0-alex_20140630005536e01.jpgアレックス・サウス ALEX South
双子の兄亡き後、公爵家の家督を継ぐこととなっていたが
画家の道を諦められず、心身ともに追い詰められる日々を送っていた。
そんな時にエリンと出会い、隠された彼女の強さに気付き、
密かに惹かれている。




s0-erin_2014063000553390b.jpgエリン・ウッドヤード Erin Woodyard
アレックスの家にある日やってきた『非常に気弱な』養女だったが、
それは仮初の姿だった。
ストレスで倒れた彼を連れ去り、共に国外へ脱出。
孤児だったらしい。
しかし、なぜ彼女が金銭に不自由がないのか。
また彼女の本名など、アレックスも殆ど何も知らない。




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