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WEB拍手機能の変更のおしらせ

先日の一件でご心配をいただいてる皆様ありがとうございます。
応援&心配&お怒りいただいてるお言葉ほんとうに嬉しかったです、本当に。
ゲームSS利用したストーリー中心のブログですが、
ゲームの話題以上のさまざまな交流もあって運営させていただいてきてましたので
画面の向こうにいる1人1人のかたの温かさが身にしみました。ありがとうございます。



さて本日はコメントを頂戴する方法の変更についてです。

というのも拍手コメントだと「拍手1回=1000文字」という文字数制限があって、
長文でお便りをいただくときに2通で分けたりしないといけないんですよね;
色々な皆さんからコメントやご連絡を頂戴するに当たって、WEB拍手=メールフォームとしては不便だなあと思い、
このたび変更することにしました。


■変更前
WEB拍手ボタンより「拍手」および「コメント(管理人のみ閲覧可能)」を頂戴する


■変更後
①WEB拍手ボタンにて「拍手」のみ頂戴する
 →コメント機能の削除

②新記事のコメント欄にて「コメント」を頂戴する
 →『公開コメント』 or 『管理人のみ閲覧可能の非公開コメント』はコメント投稿者の方が選べる


この記事からコメント欄を開いてゆきます。

なおコメント欄と考えるとどうしても敷居を高く感じられてしまうことも考えたのですが、
正直1行でも頂戴できれば全然嬉しいです///どうぞ気負わずにご利用いただければと思います。
もしも恥ずかしいという場合は引き続き拍手ボタンをぽち、といただければ幸いです(。☌ᴗ☌。)

なお次話は現在文章10%といったところです。



第13話 アンドリューの殻 Anima Ⅱ

←第12話



シムボット・アンドリューからの電話。
彼はふと思い立ってマリアの自宅へやってくるということはなく、古風にも必ず電話という方法でアポを入れてくる。

「こんばんは。アンドリュー。今夜来んのー?」
『いえ、今日は行けそうに・・・・というか、しばらく仕事以外での外出自体すべきではないんです』
「? なに、どうしたのよ。あ、あれだっけ。ダイアナさんが妊娠したんだっけ。それで?なんか忙しそうだね」
s3-13 (2)
このマリアと、アンドリューの”母”であり”オーナー”ダイアナとは直接の面識はない。
ダイアナにいたっては彼女の存在すら知らないが、マリアはアンドリューからよく話を聞いてる。

『・・・僕すごいやらかしてしまったので。自主的に謹慎をしようかと思ったんです』
「へえ?なにやったの?なにやったの?ねえねえ」

ここでお気の毒に・・・と引く面はマリアにはない。携帯をスピーカーモードにして放り出し、俄然長電話態勢に入る。
そして昔アンドリューがサニーに横恋慕していたころ、そいつを訊き出したときと同じように
マリアはぐいぐいと電話口から飛び出そうな勢いで迫った。

『・・・お・・・。━━━ いや、とりえあえず。大ポカです・・・』
「なに?なんで言わないのー?・・・っあ、ダイアナさん!?まさかなにかあった!?平気なの?!」
『あ!いえ、そういうことじゃないんです、辛そうだけど元気ですよ!・・・・。そういう意味じゃなく・・・』
「な~んだ!ビビるじゃーん。んで?だーかーら、なに!?」
s3-13 (1)
『いや、その』
「えー?じゃあ何のために電話してきたのー?!」

それでもアンドリューはイアンとアレックスの男性の沽券に関わることだからと今回の失態の内容を言えず、
どうしてかけてきたのかという問いに素直に答えるしかない。

『声が、聴きたくて』
「えっ」
『・・・・話を聞いてほしくて』
「あ、うん。そう。そっか、そうだね」

まいったな。そんなストレートなセリフ、言ってくれる男いないよ。男なんて身勝手でカッコつけばっかりだから。
こういう少年みたいなところ、本当なくさないでほしい。
じわじわと温かいものが胸から込み上げてマリアの顔を緩ませる。

「でも!どんな失敗したか話したくないんじゃ話聞くってムリじゃーん!」
s3-13 (3)
『あ、そうですね。意味ないや。でも、別なことでいいから話聞いてほしいです』

やっとアンドリューが電話の向こうで笑った。周辺の雑音がなにもしてこない。
ということはきっとまたシムボットの彼は私達人間と違って、電話の向こうでは別な行動をしながらコッソリ電子脳内で
こうして通話してきてるんだろう。
こっそり私に。
私の声を聞くために。
マリアは顔を緩ませながら、それ以上は彼の失敗とやら聞き出さないようにしてやりつつも適度にいじめて電話を切った。






イアンのプライベートジェットとヘリを使って、あっという間にイギリスから現われたタラ教授。
見覚えのない茶色の髪と紫色の髪をした女性2名を見て、挨拶よりも先に笑いが出た。

「ふっ・・・・ふはは・・・はーっはっはっはっはっは!
 実に愉快だ!!よくぞやった、ダイアナよ。流石わたくしの生徒だ!!なんとも誇らしい!」
s3-13 (48)
何のかんのといっても恩師に手放しで褒められ、ダイアナもついえへへへへと照れ笑う。
対して女性の身体にされた男性陣2名(と書くしかない)は死んだ魚の目で出迎えていた。
互いに『お前が飲ませたせいだ』『お前が水をかけたせいだ』と”水掛け論”を尽くしたが結局決着つかず今に至る。

「ビジネスはビジネスだからな、今から早速取り掛かるとしよう。アルテイシアよ、アンドリューからデータを受け取っておけ」
「は~い。アンドリュお兄ちゃんだぁ~久しぶりぃ~」
「アルテイシアさん、久しぶりです」

シムボット同士が笑顔で抱き合うと、そのやり取りにイアンが片眉を挙げる。
s3-13 (49)
「そいつ・・・お前の”妹”なのか?」
「はい。私はぁ、アンドリューお兄ちゃんの後に作ってもらったぁ、アルテイシアですぅ。よろしくお願いしますぅ。
 ある意味じゃダイアナさんの隠し子ですぅ。 お話も伺ってますぅ」
「はっは!隠し子かよ!」

ダイアナが作ったシムボットはどれもダイアナの『子』であり、アンドリューの『弟か妹』となる。
会社を立ち上げて数は増えていたが、量産シムボットなどよりも超絶デリケートな自律思考型のものは
その価格のせいもあるがイアンが全ての名前と顔を覚えている程度の台数しか売れていない。

ダイアナがくすくすと笑いながら、
「アンドリューの少しあとに作った、タラ先生専属のコだよ。基本的にはタラ先生が作ったコだよ」と付け加えた。
s3-13 (50)
だからイアンにはその存在についても語っていない。

「へえ、知らなかったよ。俺らの式に来てなかったのは?」
「わたしは大学でお仕事してたからぁ。でもおふたりの結婚式はアンドリューお兄ちゃんのライブ中継で拝見してましたぁ」
「美人な隠し子なら大歓迎だよ、よろしく」

「わ~嬉しいですぅ。でもイアンさん今女の人でダイアナさんの前なのにそんなこと言うなんてぇ、すごぉく女タラシですぅ」
「・・・・・・・お前、やっぱなんかダイアナくさいな」

舌足らずにニコニコ話しながらも、ダイアナを髣髴とさせる鋭い物言いをされてイアンは苦笑。
タラ教授と一同が再会の挨拶をしたあとでエリンが不思議そうに尋ねる。

「ねえ、ダイアナ。前から思っていたのだけれど、昔のクリスマスに移動装置作ってたわよね。
 どうして使わないの?長距離は無理だといっていたけれど空港近くとかにばら撒いておけば仕事の移動も楽でしょう」
「その質問にはわたくしが答えよう」
s3-13[1]
「ええ、タラ。ぜひ教えて」
「行過ぎた技術はどうしても雇用を失わせてしまうのだ、エリンよ。
 ましては我々は人間から雇用を奪うと批難されがちな、哀れなるシムボットたちの親だ。
 たとえ不便であろうとも科学は人々を幸福にするための学問。他分野と全ての人々には多大なる敬意を払う」

能力の割りに金には頓着ない姿勢を貫いてきたダイアナも笑顔で頷いた。
そしてタラ教授はふふふと挑戦的に微笑み、

「ただ金儲けがしたいのであれば、そこらの大学で経営学なぞを取ってCEOにでもなればよいのだ。
 科学という人類の最高学問の徒たるわたくしたちは、そのような低俗な志を持ってはいない」

大学中退したものの経営学をとっておりCEOに上りつめたイアンを当てこすりでからかいつつ、
理系至上主義のタラ教授は説明を終えた。
「その”多大なる敬意”を俺には向けねえのか」とイアンがツッコむとタラ教授は口角だけ上げ、
s3-13[3]
「あなたを個人的に嫌っているわけではないから心配する必要はない。わたくしは誰にでもこうだ」

初対面で童貞捨てた話を要求されたアレックスなどは余計な火の粉を恐れて口を開かないが内心で深く頷いた。
確かに彼女は誰にでもこうだ。

イアンは胸中で『これだから理系の技術屋連中は嫌いだ』と毒づく。
シムボットの会社を立ち上げてから、こういう人間と顔を合わせる機会が本当に多い。
能力と変人ぶりが比例することを身に染みて感じていると、
常識的な礼儀とコミュニケーション能力があるダイアナは本当に奇跡だ。

「さて、作業に取り掛かるまえに残念な知らせがある。
 ダイアナ、お前の予定では1週間で全ての開発研究が終わる予定だったと言っていたな」
「・・・。うん・・・」
s3-13[4]
タラ教授は一瞬何かを計算するかのように目線を宙にそらしたのち深く深くため息をつく。

「諸君。アンドリューと、このアルテイシアと、あとダイアナの幼馴染の元にいるというダイアナが全てチューンしたシムボット。
 この3人を助手に使ったとしても、解毒薬の作成には1ヶ月半かかるぞ」
「「そんなに?!!」」

この教授を招くのに六千万ドルもの金額を払う決断したイアンとアレックスの声が見事重なった。
しかし彼女はそんな2人を見つめて笑う。

「このダイアナを一体なんだと思っているのだ。 入学当時から他の研究室のジジイ共が狙い続け、
 わたくしが20年かけてきた自立思考する電子頭脳の開発を在学の2年で進めた娘だぞ。
 ままごと遊びよろしく適当に混ぜ物を作って、そんな姿にさせられたとでもお思いか?」
 s3-13[2]

恩師タラ教授からのこの堂々たる賞賛にダイアナはもじもじ。

「今時10歳前後で飛び級してくる者も居るのに何故17になるまで大学に来させなかったと
 マーガレットを批判する無礼者も居たほどだ」
「~~~~ 先生、あたしのことはもういいって!」

「とまあ・・・だからこそ、この通り常識を持った良き娘だというのもある。わたくしは躾のできてない天才猿は好かぬ。
 要するにわたくしが言いたいのは持っている能力が違う以上、時間が掛かるのはどうしようもないということだ。
 車でいえばこの娘は世界最高速度のブラッドハウンド、わたくしはせいぜいブガッティ・シロンだ」

ダイアナは昔と変わらず、少し血色の悪い頬を素直に染めて、まだもじもじしていた。
エリンがひらめく。

「ダイアナが作ってたタイムマシンがあるじゃない!未来に行って出来上がってるものを取りに行けば?」
「・・・この家に引越しのときに壊しちゃったんだよ、エリン。先生はどう思う?アンドリューがいるからデータはあるよ」

エリンの提案はとっくにダイアナ自身思いついてはいたし、既に恩師タラ教授の回答も予想がついているが
目の前の皆に説明のためにとダイアナはあえて尋ねてみせた。

「そちらの分野は完全にわたくしの範疇外である以上、無用なリスクは排除させていただく。 
 先日エリンの子たちが使ってきたというタイムポータルとやらもあるそうだが、詳細の仕様が不明である以上、
 我々が作業日程を縮めるのに使うのはよろしくない。時間をかければ同じ結果にゆくのであれば安全が一番。
 諸君、よって完成日は一ヵ月半後が確定だ。以上」
s3-13[5]
大胆不敵なタラ教授、不幸なる雇い主2人へ尊大なる態度で完成予定日を通達した。
アレックスとイアン、がっくりはしたが解毒薬ができないわけではないのが救いかと文句は出ない。
エリンが耐え切れず「ねえねえ!」と少女のような質問をぶつける。

「あなたから見て私たちを車に例えるとなあに!?」
「・・・・。ロバだな」

ロバ!!!
愚鈍と貧農の象徴たる1馬力以下の動物に、女王陛下と公爵とビリオネアが括られてダイアナが「先生っ」と諌める。
その罵倒にしか取れない表現に尋ねたエリンすら絶句。

ちなみに男でありながら女の身体にされ、人前で驢馬呼ばわりされ、もはやアレックスは完全に電源OFF状態である。
もういい。早く寝室に戻ってしまいたい。

「ただしエリンは可愛らしい特別な白いロバだ。さらにわたくしがシルクのリボンも着けてやるとしよう」
「あら❤ありがと」

よくわからない、ほのぼのとした空気のなか、アルテイシアが「データ同期できてますぅ」とのんびり告げた。
s3-13[7]
「それで最後のシムボットはどこにいるのだ、ダイアナ」
「連絡したら今日すぐ来てくれるって」
「よろしい。お前は気にせずそのあたりで遊んでいるといい。あとはわたくしの仕事だ」
「お誕生日のお休みだったのに本当にすみません。よろしくお願いします、タラ先生」

ダイアナが恩師に畏まって御礼を述べると彼女は「気にするな。身体を大事にな」と優しく微笑んだ。










「リズ~急にごめんね~本当に大丈夫だった?」
「全然いいよ。今日は桜子は昼寝しすぎてたし、あたしも暇な時間あるから余裕余裕」
s3-13[8]
「ありがと~。しゃこらこちゃ~~~ん❤ダイねーしゃんだよ、こんばんにゃ~❤来てくれてあいあとにゃ~」
「・・・・・・・・・・・・・・。ん」

桜子はキュッと眉根を寄せた。
このダイアナねえたんは、いつ赤ちゃん言葉を止めてくれるのだろう?

「あんたツワリは?どう?結構ツワってん?」
「んもーさ~ すんごいツワってる~~~」
「ツワってっかー・・・だよなー。あたしももう二度とツワんのはムリだわ」

2人は造語で会話をしつつリズはしみじみ頷いた。

「・・・・で?アレクサンダーとグレンツはどこよ?あんたマジで言ってんだよね?」
「うん・・・・・・・あそこ。あのねリズ、できるだけ穏び」

できるだけ穏便に刺激しないでね、の言葉はリズの大爆笑にかき消される。

「ぶははははははははは!!マジ女になってるよ!!美人じゃん、2人とも!・・・・・・あっ、美人ですね!つかもういいか!!!
 いいじゃん、美女!ふたりとも!美女だよ!すっげ笑える!!!」
s3-13[11]
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

憮然としつつ、イアンとアレックスは動かない。
その爆笑につられて、やっとエリンも「んふっ」と一緒に噴出し始めた。実際ちょっと我慢していたのだ。
くっくっくっくと肩を震わせて「やだ、リズちゃん。つられちゃうじゃない」とどんどんエリンの笑いは大きくなる。

「だってめっちゃ女になってるんだもんよ、エリンさん!あはははははは!!!」
「もう!あっはっはっはっは!そうよね!」

爆笑の渦の中、かつて産後のリズの元に贈られた丸いシムボットが話しかける。

『それじゃあオーナー、わたしはダイアナさんのラボに行ってますね?』
「あっはっはっはっは!!オッケー!ぶははははははは!」
『桜子さん、マルちゃんはこれからお仕事してきます。ねんねのご本はママに読んで貰ってくださいね』
s3-13[19]
「ん・・・・ あちた?」
『はい。マルちゃんはちゃんと明日の朝はおはようしますよ』
「ん。 てらちゃ」

桜子が生まれてすぐの頃、
リズと庸一宅のシムボットとなった”マルちゃん”ことシムボット・マルコは滑るように移動してゆく。
『丸いから”マル”ちゃん』と日本人の庸一がぼそり呟いたのをリズが気に入り、そのまま名づけられた。

「つかツワってんのにうちらが泊まって平気なん?」
「うん。むしろちょっとリズと話したい。本当によかった?」

心身ともに疲れきったダイアナ、すでに母となった幼馴染リズに色々聞いてほしいことがある。

「よかよか。庸一は好きにするっしょ。んじゃ、グレンツさん・・・・いや、こうなると奥さんって呼んだほうがいいかな?!
 ぶっははは!!お邪魔しまっす 」

完全におちょくってくるリズに対し、イアンは桜子の前であるため中指の代わりに人差し指を立てて応えた。

そしてリズと庸一の娘・桜子といえばシムボット・マルちゃんが居なくなってすぐ、アレックスを見つめて歩み寄ってきた。
知らない人のフリで通そうと思っていたアレックスだったが、その無垢な視線に耐え切れず声をかけた。
s3-13[13]
「こんばんは、桜子ちゃん。お母さん達と来てくれてありがとう。今日も可愛いお洋服だね」
「・・・・・」
「・・・・・わからないよね。はじめまして、のほうが・・・いいのか。お茶会ごっこも元に戻ったらしようね」

アレックスが情けないやら恥ずかしいやら溜め息混じりに辛く独り言つと、
桜子はすすすと寄ってきた。

「アレおいたん、いたいいたい?」
「!」
「まあ、すごい。桜子ちゃん分かるのね?」とエリンもびっくり。
「ん」

そして桜子は臆することなくアレックスに最強の上目遣いで見つめて「いたいいたい?」と再び訊いてきた。
かわいい!
女の子はなんて可愛いのだろうか!!
未来からやってきた我が子達━━というより金髪のバカがひどすぎたため一層父性が刺激されるアレックスである。
s3-13[18]
「いたいいたい?」
「ありがとう、桜子ちゃん。こんなになっても元のようにお話してくれて嬉しいよ」
「ん」

そしてイアンも堪らず尋ねる。

「・・・・な、桜子。俺が誰かも分かるかー?」
「アンたん!」
s3-13[16]
「天才か! すごいなー、桜子。でもなんで分かんだー?お前」

桜子のほうこそ『なんでそんなことを訊くの?』とばかりに首をかしげるしぐさをみせた。
全然違う女の姿にも拘らず、しっかり正体を見抜いてもらえてイアンはニッコニコ。
密かに折れていた男の自尊心もなんとなく回復する。

「久しぶりだなー、うちに泊まんのー。桜子お前風呂もメシも済んでんなら、もう寝るか。俺が本読んでやるよ」
「! ん!」

イアンの絵本の語り口はすごく面白いので桜子は即同意した。
「来いよ」と彼が開いた腕の中に、びょんと飛びつく。

「リズ、いつもの部屋連れてくぞ」
「あぁ、すんません。ありがとうです」
s3-13[12]
リズが依然としてニヤニヤしているのでイアンは『フザケンナ』と口パクだけして桜子を抱えると
当然のように子供用のベッドもあるゲストルームへと向かう。
そうして初めての妊娠で戸惑っている妻ダイアナをさっそく親友リズと時間が持てるようにしてやった。






はー・・・・とエリンのバスローブを羽織ったアレックスは深く深く溜め息。
嫌々ながらもいつもの習慣どおり、というよりもエリンが引くわけもなく夫婦は共にバスタイムを過ごした。
今更女性の身体そのものに照れるような歳でも経験なしの男でもないが、精神的にひどく消耗した。
s3-13[20]
「髪乾かしてあげる」
「ありがとう。・・・明日にでもこの髪は切ってくる」
「そう?でもそうね、男性には辛いわね。・・・・あのねアレックス。私はあなたが”そんな風”になってても気にしないわよ。
 女の子のお泊り会みたいで楽しいもの」

フォローになっていないどころか、逆に痛い。しかしアレックスはエリンには何もかも許容の姿勢を相変わらず貫く。
丁寧にくるくるされながら乾かされ、さらにはエリンは自分のパジャマを「着るでしょう?」と彼に差し出した。
キューティクルを輝かせながらアレックスは女性もののパジャマに渋い顔。

「私は気にしないって言ったでしょう。何がイヤなの?」
「・・・情けないだろう、こんな格好は」
「あら。女性は情けない?」
「男が女性になるのはそうだよ。元々女性であることを指してるわけじゃないよ」

するとエリン、目を閉じていつものようにキスをしてみせた。
いつものように受け入れてのち、はっとアレックスのほうが驚く。

「イヤじゃないって言ってるでしょう。中身があなたなんだから、いつも通りよ」
s3-13[21]
身体の感覚の違和感は多少はあるが、アレックス視点からは世界は何も変わってはいない。
ついいつものようにキスをしたくせに、それでも「本当にイヤじゃないのかい?」と尋ねた。
君に拒絶されるのも落胆されるのも、昔も今も変わらずそれは恐ろしい。
エリンが色っぽく呟く。

「なによそんなの。わざわざ言ったことないけれど、私女性ともデートしたことあるわよ」
「・・・・。えっ」

これにはアレックス、己の姿のことも忘れて、つい、ぐぐぐっと雄の興味がそそられる。
過去の男のことなど例え話でも耳にしたくはないが、女性となれば話は別。
男にとっては性的興奮をそそるという意味で、非常に美味しいシチュエーション・・・・
内心の興奮を押さえつつ、妙に爛々とした目でアレックスが尋ねた。

「それはただ食事しただけだよね!?」と、絶対にそれ以上を期待しているアレックスの、この顔。
s3-13[22]
「・・・。 私が言うのもなんだけれど、あなたって本当私が好きよね」
「エリン、そのデートのこと詳しく教えてくれないかな」
「ん~どうしようかな~」

口先から出た嘘だったがそれはエリンの思惑通り、効果覿面。
アレックスは妻の手のひらの上で憂いも忘れたまま普段通り眠りに付いた。






ダイアナが寝ている早朝、イアンはいつものように海にいた。
その身を包むのは、このイアンがレンタルすることとなった2時間$80というウェットスーツ。
s3-13 (4)
「アンドリューお前。申し訳なく思ってんならパシってこの身体に合うもん買って来い」
「・・・はい。行ってまいります」

いつもならしないだろうに、まるで執事のようにイアンのための飲み物セットだのを持参してきたアンドリューが
神妙に応えたところで、とうとうイアンが軽くキレる。

「そのウジウジしてんのをいい加減止めろ!うざってえんだよ!男なら済んだことグジグジ引きずってんじゃねえ!」
「ッ す、いません」

そうは言っても、昨夜さっそくタラ教授が深夜までかかって引継ぎを終えても
やはりアレックスとイアンが元の姿に戻れる時期は早まりそうにないという結論だったのだ。

「でも僕、本当に買ってきます。明日もレンタルじゃ困りますもんね。同じブランドでいいですか?イアンさん」
「さっきのは冗談だよ、そんくらいてめーで買うから気にすんな。アンドリューお前。もう、そういうのはいいつってんだよ」
s3-13 (5)
「・・・?」

イアンがさらに何か話そうとしたところにタイミング悪く、アレックス夫妻が珍しくやってきた。
早朝の波乗りをしているイアンを夫婦揃って見たことはあれど、こうして合流したことなどない。
もちろんその理由といえば・・・

「おはよう2人とも。それでアンドリュー、昨日の夜はどうだった?完成時期は早まりそうかな」
「あ、おはようございます。その、それは」
「ダメだってよ」

言い淀みそうになったアンドリューの言葉をイアンはあっさり続けると、アレックスは溜め息。
しかし意外にも昨日のような動揺はもうなさそうで、
s3-13.jpg
「そうか。まあ、不可能じゃないならいい」
「だな。にしても一晩で随分落ち着いたもんじゃねーか、お前」
「まあね」

何故だかアレックスは機嫌まで良さそうだ。
妻エリンがアンドリューに今日のダイアナの体調について尋ねている隙にさらにイアンは問い詰める。

「で?なーにをエリンに言い含められたんだ、お前は」
「言い含められてなんかない。まあ・・・昔女性とデートしたこともあるから、こうなったからといって失望はしな」
s3-13 (12)
「アイツ、マジかよ!!」

アレックスの話を即遮り、ギン!とイアンは即反応する。
その声と、妙な視線で自分を見つめてくるイアンにエリンはぴくりと片眉を上げて

「・・・ちょっと。何をあなたたちは話してるのよ」
「お前両方イケんのか。なんで隠してた」

それで昨夜のアレックスへのフォローの嘘が、
思いもよらぬ形で男たちの妄想のネタになっていることを察しエリンの怒りが爆裂する。

「アレクサンダー!どうしてそう、どうでもいいことばっかりイアンに言うのっ」
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「エリン、別に俺はそういう意味で言ったわけじゃあないよ」
「うっせえな、夫婦ケンカなんざ後でしろよ。じゃあお前ら昨日の夜は女同士でヤ」
「るわけないでしょ!!」

どっかーんとさらにエリンの怒りが爆発するが、
イアンはからかいながらも聞きだそうとさらに絡んできた。

「エ、エリンさん抑えて・・・」
「私!?抑えるべきなのは私!?アンドリュー!」
「はい・・・っ!あの、イアンさん」
「てっめえ、アンドリュー男の癖に女の側に立つのか!」

こういうとき、ちゃっかり黙りつつ流れを見守るのはアレックス。
「ごめんね、エリン」などと言いながらも、その胸中ではやはりエリンの女性同士の・・・を非常に聞きたい。
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イアンにさらに「で?ホントのところはどんな感じなんだよ。デッチ上げでもいいから言ってみろよ」と言われ、
エリンは苛々としながら、

「イアン、あなた会社の立場もあるのにそういう偏見もってたとはね」
「はあ?誰がそんな小難しい話してんだ。そもそも男でレズもの嫌いな奴がいるわけねえだろうが!!」
「だからそういうのを言ってるのよ!」
「エリン。俺はそういう偏見はないよ?」
「アレックス、あなたね!あなた、そーゆーところが結局実はイアンに似てるのよ!!」
「なっ・・・俺の一体どこが!」
「揃って聞きたがってるじゃない!!」

ぎゃあぎゃあとロバ三人が言い争っているところでアンドリューは自分への視線を察知して激しく動揺した。
シムボットの彼の場合、それが誰からのものなのかもすぐに理解してしまう。

「あっ、マリア、さん」
「・・・・・・・・」
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彼女から見れば、この光景はどのように映ってるか。
大変なミスをして落ち込んでるんですと長電話をした翌朝、
普通なら待ち合わせなんていう時間じゃない早朝にアンドリューを囲むのは美女美女、そして美女。

「あっ、これは!違うんですよ!これは!!」
「・・・っ・・・ふぅ~ん。
 珍しく落ち込んでるっていうから気分転換に本でも差し入れしてあげようとか思ったけど。必要なかったかー」

それは電子書籍にもなっていないようなマイナーなもので、
マリアのコレクションの中にある少々歴史ある古書らしき本が一冊その手の中にあった。
彼女はにっこりと笑ってはいるが、その場にいる全員が彼女が笑ってないことはわかる。

「気にしなくていいよ、友達としてお見舞いに来ただけだし邪魔するつもりもないしぃー。読んでみてよ。じゃね」
s3-13 (13)
「マリアさん!この人たちは」
「え?なに?」

他のデート相手が互いにいることくらいは察してるが、そいつを紹介するのはルール違反だろうとマリアの声は低い。
非常に焦りながらもアンドリューはイアンを示し、彼女に紹介する。

「マリアさん、・・・・僕の父です。イアン、です。こちらはマリアさんです」
「やあ、どうも」

さらっとイアンの長い茶色の髪が揺れ、・・・・胸が揺れる。

「で、こちらはあの、僕の隣家に住む元公爵のアレクサンダーさん、と奥方のエリンさん。です」
「こんにちは。はじめまして」
「・・・・・・」

アレックスはきちんと挨拶を口にしたものの、エリンは何も言えない。
イアンや夫はアンドリューの顔を立てたつもりで挨拶したようだが、内心「男のこういうところはバカよね」と冷ややかになる。
そしてマリアはといえば・・・・

s3-13 (15)
「へえ!お父さんのあのイアンさんと、お隣の公爵様に奥様!?お話は少しだけ伺ってますよ~。
 実は昔ぃ、アレクサンダーさんがお店にいらしたときに対応させていただいたこともあるんです~」

ああ、そう!などと愚かな男たちが安堵して一瞬緩んだ隙に。
シムボットのアンドリューには平手打ちなぞじゃ効きはしないだろうと、機転の利いてるマリアの鞄が
彼の顎を目掛けてフルスイングで宙を舞った。








「・・・ま、あのくらいじゃないと効かねーよな」と、イアンがぽつり。

”息子”であるがゆえ普通に挨拶はしてみせたが、
どこの世にこんな美女である自分を父なとど紹介されて馬鹿にされたと思わない女がいるか。
アレックスはああいった女性の暴力は目の当たりにしたことがないので露骨に眉をひそめてはいたが、
甥のデート相手であるので無言。
s3-13 (18)
なので「アンドリュー、すぐに追いかけなさい。ちゃんと説明してこないと無理よ」とエリンがお節介を発揮するが
イアンは「余計なこと言うな」とそれを止めた。
エリンはすぐに唇を尖らせるものの、イアンの言うようにアンドリューすぐには動かない。

「━━・・・・・」
「アンドリュー?説明してあげないと!」
「そんくらい、こいつも自分で決められるだろ。いくらなんでも踏み込みすぎだ」

エリンはやっとイアンの意図に気づいて口を噤んだ。
やはり”現役”から退いて長いぶん、お節介が過ぎてしまったと「そうね」とエリンはあっさり引っ込む。
単なる遊ぶためのデート相手の1人で失ってもしょうがないといえる程度なのか、
引き止めたいと思う程度ではあるのか、それとも━━・・・・。
己の人生の選択を決められるのはアンドリューだけだろう。

しかし当の彼はちょっとだけ戸惑っている色ながらもイアンに向かって微笑みながら、
マリアが現れる以前の話題に無理やり戻す。

「イアンさん、ウェットスーツなんですけどブランドはやっぱりいつものと同じのがいいですよね?」
「あのなアンドリュー。今回の失敗でもそうだけどな、誰かに従うことで物事をやりすごすのはいい加減やめろ。
 いいこぶって思考停止して誤魔化してんじゃねえ。お前。本当は今、どうしたいんだ?」
s3-13 (16)
「でも僕は」
「いいんだよな、それで。本当に」

意図などしてなかったんだろうが、このアンドリューも昔のダイアナによく似ている。
よい子でいること。
彼の場合は『シムボットであること』ということに自分を納めてしまってる、それが彼の殻。

「・・・━━」

これでいいのか。
物理計算だのと違って、人との係わり合いに絶対正しい答えはないのだ。
s3-13 (6)
自分はどうしたいのかをアンドリューは考える。

「僕。ちょっと、飲み物買ってきます」
「おう、頼むな」

そう話す彼らの足元にはアンドリュー自身が持ってきた飲み物があったが互いにそれらを平然と無視しつつ、
彼はそのまま店だのがある方・・・
マリアが去っていった方へと進んでいった。
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「「「・・・・・・・・」」」

ここでアンドリューが普通の人間なら、
このまま既婚の彼らの格好の軽口のネタになるだろうが思わずにいられない。
シムボットであるがゆえ、彼の恋路はどこまで安穏としてゆけるのだろう?
残された3人が一様に押し黙る中、口火を開くのはやはりイアン。

「ま。俺らができることは何もねえしな」
「そうだな」
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アレックスも相槌しかうてない。
しかしエリンは「ね。アンドリュー、このあと仲直りして帰ってくると思う?賭ける?」などと軽口を展開した。

「お前なあ」
「エリン」とアレックスまで諌めるようすを見せる。

本当に男はバカね。
アンドリューの心配ばかりが先立ってイアンまで気づいてない。
エリンはそんな彼らをからかうように笑いかけ、

「何を心配する必要があるの?あのマリアちゃんてコ、女の子達にあんなに思いっきり妬いてたんだから
 別にアンドリューがシムボットだから・・・、っていう心配はいらないじゃない?」
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「お。そういやそーか」
「・・・。そうだね」

彼の”父”イアンは視野狭窄だったと、心の底からほっとしたように息を吐いた。
そしていつもの調子に戻る。

「で、だ。てめえ、よりにもよって”女の子”達、だと?」
「なによ。あなただって、そーんなナリしてるくせに」
「エリン?ナリなんていう言葉はやめておこうね」

「俺が言ってんのは、どこの誰が”女の子”っつー歳だってんだつってんだ。こーの三十路過ぎのオバ」
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それをイアンが言い終わる前に、
今度こそキレたエリンは砂を持ち上げると彼の顔に向かって容赦なく投げつけた。
アレックスはそのまま2人を放って、ちゃっかり砂浜のジュースに手を伸ばした。





「マリアさん!」
「・・・・・・・・・」

名前を呼ばれようが、ずんずんずんと無視してマリアが怒りのまま進んでも
回を重ねるごとにアンドリューの声は近くなり・・・・滑らかにマリアの元へと近づいてゆく。
捕まらないようにしていても簡単にアンドリューの手は自分の腕に。

「っ、離してよ!こういうの、何なの!?」
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「さっきの、僕の嘘だと思ってますよね。離しません」
「何よ、あれっ。あんなくだらないこと言うなんて、もしかして酔ってる!?オールでもしてたんじゃないの!」

飲食できないアンドリューが酔うわけないやと冷静な脳みその部分は言うが、収まらない。
・・・こんな朝早くにピクニック準備までしてあげて、サーファーの女もいた。
昨夜、嬉々としてアンドリューを慰めてやったのが本当にバカみたい。

「アンドリュー、落ち込んだのが本当かどうか知らないけどさーあ。
 昨夜あの人たちと一緒にいて電話でもあたしと話してさぁ・・・・・あたし悪いけど、こーゆー振り回され方って無理だから。
 マジで落ち込んでるんじゃないかと思ったのにホンット気分悪い」
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そういうその辺りの男と違って、アンドリューだけは、純粋で、少年みたいで、
それで
それで
他の女の子とかと遊んでようが、ココ一番ってトコではアンドリューはあたしが一番ってはずだったのに、
あんな大嘘ついて、マジに慰めてあげたなんて!
ばかみたい、ばかみたい!

「二度と連絡してこないで。・・・・離してよ!」







「で。私は仲直りするから、そのままアンドリューは戻ってこないに500$ね。!」
「レート高いね、エリン。でも俺もいままで通りに仲直りするほうに賭けたいけど、あの様子じゃすぐには無理かな。
 今日のところは現状維持で1人でひとまず戻ってくる。かな?」
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アレックスは穏やかに語ると、エリンが賭けたのと同じベットの金額を呟いた。

「意外にそういうところであなたイジワルよね、アレックス」
「そう?だって、ああいう様子になった女性を宥めるのは中々大変そうだろう?」

ここはじっくり時間を掛けるタイプのアレックスらしい観点。
すかさずエリンは「それは私のことも含めてるのかしら?」などと夫婦で軽く戯れた。
そしてエリンに砂まみれにされたのを海で流してきたイアンに、アレックスが声をかける。

「イアン、お前はどうする?」
「んなもん。すぐに連れ戻してくるに1500$に決まってんだろ」
「強気だな」
「”父親”に、あんな大嘘の見得切って飛び出したんだ。そこまでできねえでどうすんだってんだよ」
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イアンは口の中に入った砂を最高にかっこつけた角度で吐き捨てた。















「いいから話を聞け!」

その声音にも、音量にも驚いて、マリアの頭からまず怒りが吹き飛んだ。
でも驚きはそのまま、目を丸めて声を荒げた彼━━アンドリューを見つめる。

「昨日僕が、やらかしたって言ったろ!?ホントに、”アレ”が、イアンさんでアレックスさんなんだよ!」
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「は・・・はぁ?」
「信じられないならいい!実物見せるから!来て!」
「ちょ、ちょ、ちょちょ」

知り合って数年来、敬語も恭しい態度も投げ捨てたアンドリューにとっさに対処できない。
アンドリューが腕をひっぱろうとしてもマリアが反射的に抵抗してみせたので、
彼はなんと彼女を抱えあげた!

「わ、嘘でしょ?!降ろしてよ!」
「絶ッ対に、降・ろ・さ・な・い!!」
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これに怒・・・れるわけもなく、かかかかとマリアの顔が真っ赤になる。
早朝でよかった、これが真昼間だったら夏のビーチへ向かう人ごみのなか、とんでもないことになってたに違いない。

心臓が苦しいくらいに跳ね上がってく。
最高に照れくさい気持ちのまま、
マリアはアンドリューの手によって再びイアン達のもとへ輸送されてしまった。

到着すれば「あら❤おかえりなさい」と完全にニヤニヤという声音でエリンが2名をお出迎え。
アレックスが穏やかに「仲直りはできたのかな」と婉曲ながら自分たちの賭けの結果を尋ねる。

「・・・・まだだけど、します!」
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口調をいつもの通りに戻したものの、アンドリューの声音はなんだか普段とは明らかに変わっている。
そしてマリアはやっと降ろしてもらったものの真っ赤のまま言葉も出ない。
しかし彼女は先ほどのようには逃げない。

「で、マリアちゃんは納得したのか?コイツの説明で」
「~~~なんかもぅよく分かんないんですけど、勢いで連れて来られちゃったっていうか、わかった・・・ような?
 ていうかああいうのズルくない・・・・ズルくない・・・・

イアンの問いに、まだ真っ赤のままマリアはぶつぶつと何やら呟いている。

「でもまあ、あそこまでアンドリューが言うならうそじゃあないのかもしれないから・・・って思ったんです・・・」
「ほーう。なるほどなるほど」

ホントああいうのズルいよ・・・・ズルい・・・・
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「ちょっと僕たち、うちの研究室に行ってきます。ちゃんと見せないと納得してくれないみたいなので」

アンドリューはマリアの手を引いてイアン達の自宅地下のダイアナのラボへ大またで歩いてゆき、
その背中に彼らは呼びかける。

「おう。つかタラはまだ起きてんのか?完徹だろ、そこまでしなくていいってつっとけよ」と、イアン。
「そうだな。ちゃんと休んで働くようには言っておいてくれ、アンドリュー」と、アレックスも同調。

十二分に彼らが距離を取ったところで、
イアンが低く呟いた。

「お前ら二人。現金で明日までに払えよ」

エリンが悔しげに指を鳴らし、アレックスまでも大げさにため息をついた。



→第14話
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