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第17話 マーガレットⅢ AminaⅥ

←第16話



若かりし日のヒルダ・サウスは美しい人だった。
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子供の頃からサウス公爵家への嫁入りが決まっていて、そのための教育に疑問を持ったこともない。
むしろ学内でも選りすぐりの美貌と気位であったので当然の責務だと自負してたほどだった。

しかし年頃になれば恋愛小説だので『自然に芽生える恋』へ憧れを抱くようになって、
彼女はセオリー通りに一番身近な距離の近い年頃の男に惹かれた。
それがヒルダの実家の庭師としてバイトに来ていた植物学専攻の男子学生である。

━━ちなみに許婚で後の夫であるジョン・サウスと会うことは当然あったが、あの通りの分かりにくすぎる男だったので
平均的な愛想がある庭師の男の方がずっと分かりやすい魅力があった。

そしてヒルダが庭師との間に芽生えていたプラトニックな愛情の絆を振り切り、義務を果たすべくジョン・サウスと婚姻した夜。
庭師との一件もよくよく知っていたジョンは新妻に言い放つ。
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「君に他にも男がいるのは知っているし、私は無理強いする気はない。私の”心配”も結構。 ・・・・いずれは必要になるがね」

彼なりに彼女への同情があってのこの発言、ヒルダは衝撃と恐怖と複雑な恥辱でいっぱいになった。
後のジョンは宣言の通りに新婚でも外で女遊びしている気配をうっすらと漂わせ、行き場のない新妻は庭師の男の下へ。

で、庭師と男女の仲に結局なったあとで「やはり不倫だから」などと悲劇的に破局し・・・
それからゆっくりと一旦はなかなかの甘い雰囲気の中でジョンとの距離を縮めアレックス達が産まれた。

しかし父親となったジョンは自身が大きな流れに逆らうつもりはないものの、
この公爵家の特異性から息子達は少しでも引き離してやりたい。
母親のヒルダは、双子を海外の寄宿学校になど手放したくないという、育児方針の決定的な違いでジョンとは険悪になり、
子供と引き離された彼女はまた孤独となり庭師のもとへ・・・・。

「支援会発足いただいてありがとうございます。これで研究室も閉じなくてすみました」
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「微力ながら、あなたの大切なものを守れてよかったです」
「・・・・僕は・・・。・・・・なにもできなくてすみません」 
「・・・そんなこと言わないでください」

要するに望まぬ結婚をした夫ジョンと同じく、ヒルダもまた流されるまま生きざるをえず初恋の夢を振り切れずにいるのだ。



そんなジョンとヒルダの不幸で泥沼な夫婦の事情を、子供のころから何となく察していたアレックスとウィリアム。
不幸中の幸いがあるとすれば、
ジョンが望んだとおりに不仲の両親から距離をおいて友人たちの中で楽しく育ってゆき、
ジョンが託した願いのとおり、それぞれ愛せる女性を見つけることもできた。


━━しかし、やはりセオリー通り。
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あまり好いてはいないはずながら、自分たちの母親にどこか似ている女性を選んだサウス家の双子たちである。








「・・・・すごい部屋だな~。わかっては、いたけど」

マーガレットの住んでいた街にジョン・サウス公爵がやってきてから10日後、ジョンの外遊に合わせた外国での再会。
指定された部屋の入り口には黒服の男がやはりおり、非常に気まずい思いをしながら入った。
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「ようこそ、ヨーク様。滞在中にお世話をさせていただきます。お茶でもなんでも、お言いつけを」
「あっ、はい!」

そういえば前もそうだったが、
ホテルなのに家来?執事?っぽいひとがいる!と、正式な滞在者になったマーガレットは大慌て。
とはいえ自分の存在は極秘じゃないのだろうと観光はするつもりないなど滞在予定を大雑把に伝えた。

そして親切な執事っぽい人物に勧められるまま、室内を見て回る。
一角にいかにも買いたて!といった某有名ブランドの箱が山盛りになっていて、
それらが「奥さんと、家族へのお土産なんだろうな」と考え至ったところで
マーガレットは自分のしていることの後ろめたさが募った。
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あと同時に。
確かにちょっと分かりにくいところがあるジョンだけれど、
自分が彼を待っている部屋に妻宛のものを分かりやすく置いておくなんて流石に無神経だよなという複雑ないらつきも。

その複雑な心境のまま、
部屋に篭れという指示もないのでマーガレットは観光未満に海外の街を散歩して、
豪奢な部屋でひとりで夕食を食べ終わったあたりで、もう金持ちの生活に飽きた。

「・・・暇だなー・・・」
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大学の課題を念のため持ってきておいて正解だった。
慰めは空気のように寄り添ってくれる、執事っぽい彼だけ。

「・・・あのう、そちらはお帰りはいつごろなんでしょうか?サウス卿をお待ちになりますか?」
「どうぞご指示ください。
 このままマーガレット様のお手伝いもいたしますし、おひとりで寛がれたいとのことでしたら失礼いたします」

・・・もしかして私が帰れって言べき?いや、でも私がこの部屋の借りてるわけじゃないし・・・、と
一般人のマーガレットは対応の仕方がよく分からないので無難に濁してマーガレットは引き下がった。
(残業にさせてたら、ごめんなさい!と心で謝りながら)ジョンがどうにかしてくれるだろう。

数人を引き連れた賑やかさを伴って重くドアが開いて、ぱっとマーガレットは顔を輝かせる。

「おかえりなさいっ」
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体面もなく熱烈歓迎とばかりにマーガレットが駆け寄ると、ジョンは眩しそうに少しだけ目を細める。
引き連れていた黒服の人間たちはホテルの居室の玄関ホールを境界線に入っては来ていない。
ジョンは慣れた動きで執事にジャケットを脱がせて引き渡し、さらにコーヒーを淹れさせたあとで彼にやっと帰宅の命を出した。

「待たせて悪かったね・・・来てくれてよかった」
「も、もちろん来ます!でも、こういうところって何もすることがないもんですね・・・
 さっきの執事の人もいつまでいてもらうべきか分からないし、もう普通に課題やっちゃってました」
「課題?こちらに呼んで悪かったかな」

勉学に支障をださないように、と気にしていたジョンは素直に顔を曇らせる。

「いえ、これは来月まで時間があるので大丈夫です。そういうのに限って私ギリギリまでやらないので」
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「・・・。着替えてはないんだね。・・・気に入らなかったかな」
「? はい?」
「あちらの部屋のだよ」
「はい。私の着替えは執事のひとがそっちのタンスにしまっちゃいましたけど何で知ってるんです?
 あ、そっか、そういう指示してくれてたんでしょうか?」

マーガレットが話してるのは寝室のことだろう。
話が噛み合ってない具合にジョンは例のプレゼントの山がある部屋へ、微妙な表情の彼女を連れてゆく。

「君に買っておいた、これのことなんだが」
「あっ? ・・・ああ~っ!奥さんへのお土産すごい買ったんだと思ってた!・・・あっ!うっわっ、すいませんっ」
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本音をぽろっと盛大に漏らし、自分への贈り物だったかとマーガレットは赤面した。
マーガレット宛のカードも置いておいたのだが他人宛のプレゼントだと思って覗き見すらしなかったのだろうと、
彼女の純朴さと、誤解を招いた自分のまずさに「妻宛のものはいつもスタッフに適当に任せてある」とジョンは呟くしかない。

「じゃ、これはあなたが選んでくれたんですか?こんなに?お忙しいのに?」
「・・・一つの店でばかり買ってしまってすまない」

庶民で学生のマーガレットには雲の上の高級ブランドの山、さらに妻へのものは他人任せという言葉は
簡単に彼女の心を浮上させた。
そしてすぐに彼女は叱られる子供のようにうなだれて、「・・・あの、実は私。やきもち妬いてしまってました。すみません」と、
ジョンにもとっくに分かりきっていたことだったが隠さず素直に謝る。
その可憐で痛々しいようすにジョンは彼女を強く引き寄せた。
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「やはり君が居なければギターは弾かなかったよ、マーガレット。君が必要だ」

目を大きく丸めたあと
、マーガレットはそれはそれは可憐に恥ずかしそうに下唇をかみながら微笑んだ。

そのあとはマーガレットはクリスマスを迎えた子供のようにプレゼントの開封を楽しんだ。
ワンピースにセーター、コート、帽子、スカーフにバッグ・・・
帰ってきたときのジョンは着替えすら期待していたようだったのでもちろん着替えすらした。

こういう高価な品々が欲しいわけじゃなかったが、
彼が愛情表現として時間と手間を割いてくれたなら素直に喜ぶくらいがきっといいと、大人ぶることすらしない。
本心のまま「でも私こういうこと目当てじゃないですからね!」と笑顔を咲かせる。
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「そのようすでは説得力は全くないがね」と、他人なら嫌味にとられかねないトーンのジョンの冗談に
彼女の笑い声が響いた。
自分のすることを好きな女性がこうしてまっすぐ受け止め、楽しんでくれるという幸せにジョンはすべてが解れてゆく。
飾らない彼女のこの空気が好きだと、彼はさらにマーガレットに静かに惹かれた。






家族で目立つ存在でもなく、
何か特別な才能があるわけでもなく、勉強が出来るわけでもない平凡なマーガレット。
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高級ブランドとスイートルームに包まれ、
国内随一の大貴族の当主であり、議員としても存在感が強いジョン・サウスに自分を乞われていることに陶酔する 。

とはいえ。
若い18歳の女性にはこの再会までの10日という体感時間はとても長く・・・
そのせいでジョンはあの最初の頃よりもう冷めてしまっているかもしれないな。
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自分の恋心が傷つきすぎないように、そう予防線として考え至っていた。

だって特別な何かをあげられるほど、
自分は特別じゃない。
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クラスでも物語でも、ちょっと脇役になってしまう程度の私に対する彼の恋なんて、
きっとすぐ色あせて恋遊びで終わってしまうかもしれないんだから、と。


しかし30代になったジョンからすれば、
既に余生だと割り切っているジョンには10日なんて早いもの。
輝かしい時間を知ったあとの灰色のいつもの日常は、マーガレットへの思慕を凄烈に深めてた。

寝室に彼女を連れ込んだもののベッドに急がず、酒も煙草も介入させず。
ひそやかな笑いを含む程度に静かに話をしては思い出したようにキスをする。
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今までの幾多の遊びの女たちへと違って、定型文の褒め言葉をジョンはひとつも使わない。
夢ではなく現実だと確かめるように指先と唇で、首から上だけを品性をもちつつ撫でて愛でることを繰り返した。
反復するほどにマーガレットが身を捩じらせる動きが大きくなっても、性急にならないようにと動かないまま時を過ごす。

これが恋ということか。
欲しいにもかかわらず、本当にいいんだろうかと性欲を押し付けることに躊躇して
そのかわりに唇同士を前戯してるも同然に重ね続け、高校生のように一線だけ守ってる。

唇がひりつき始めるくらいの時間を重ねたころに、
とうとうマーガレットが悩ましげで少しだけ鼻を鳴らして腰掛けのソファにくったり倒れこんだ。
子供でもあるまいし煽るだけ煽られて辛い。
つらいの、と目で語るマーガレットにジョンは被さり、甘い赤い髪の中で恍惚として潤んでる空色の瞳を見下ろす。
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「そろそろセックスしたいんだがいいかい」
「!?ふへェーっ!!?すんごいことおっしゃいますねっ!でもっ、そうですねっ・・・よ、よ、・・・よろこんで・・・

一瞬のち2人は同時に小さく笑いを噴き出した。

「女性を口説くのは不得意なんだよ。・・・好きな女性には、もう。一体どう言うべきなのか皆目わからない」
「はい。もう十分です」

再度噴出したマーガレットの笑い声でムードはないが、そこは紛れもなく愛情に満ちている。








「・・・・うっそみたい・・・・」

数十分寝ては再戦、飲んで食べて寝ては再戦を繰り返して、時間感覚もないまま窓の外の色で朝を知る。
ジョンもさすがに体力消耗で眠り心地ながら逃さないかのように彼女にまだ重なる。

「ジョン、寝なくてだいじょうぶだった・・・?今日もお仕事、でしょ・・・」
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マーガレットの口調も布以外のものもすべて脱ぎ捨てた距離でジョンに投げかけられ、足で彼を軽くたたく。
対してジョンはといえば低く含み笑いしながらうつ伏せて、起きようとする気配はない。

「・・・今日は土曜で公務はない。どっかのクリケットだかポロだかに確か誘われてたが公式行事でもないし行く必要はない」
「ダメ」
「必要ない」
「ダーメー」
「・・・・私は行かないよ」

もう知らない、とマーガレットがうつ伏せるとジョンは彼女の温かみを逃がさないとばかりにすぐ重なる。
マーガレットは昨夜贈られたプレゼントを横目で見ながら、

「ね。プレゼント、本当にありがとう。嬉しかったよ。でももう最後ね。好きだから会いに来てるのに、ああいうこと目当てみたい」
「・・・。・・・・わかったよ。そうしよう」
「それに、あーんな高いもの、あーんなに沢山。毎回持って帰ったら愛人やってるー!って、皆にわかっちゃう」
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ゆくゆくは娘ダイアナにも引き継がれる鋭い物言いで、でもマーガレットは笑みをふくめた柔らかい声でジョンを諌めた。
愛人、とはっきり自称されたジョンが背後で切なそうに肩口でゆっくり息を吐く。
マーガレットは愛人であるという紛れもない事実をマーガレット自身に戯言で触れられただけで罪悪感で苦しい。
よりによって一番愛しい女性を二番手に押し下げて虐げてるのだ。

「・・・・すまない」

ジョンは他に言葉が見つからない。
外の世界では、いや家族の前ですら堅く閉ざしているジョンの奥深く。
本来はきっとナイーブで、そしてまだ青年のままの部分がこうやって傷つく姿を見て、
マーガレットは自分がどれだけ深く彼の心に食い込んでいるかがわかった。

ホントに遊びじゃないんだね、
浮気相手だからなんて私から割り切ってごめんね。

「ちがう。ごめん。もう言わない。ごめんね」
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一緒に迷い込んだ場所から、もう戻れない。







マーガレットはこのようにジョンの公務にひっそり寄り添うだけでなく、
眠るように出番を待って放置されてる国内のサウス公爵家の領地へも秘密裏に招かれた。
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そこにも当然の使用人達はいるはずなのに気配はなく、まるで妖精のようにいつも完璧なものが提供された。

大胆不適な行動だとは分かりつつも、マーガレットは豪奢なホテルや煌びやかな外遊より
こちらのほうがとてもすきだった。
どこも地平線の向こうまでサウス公爵家の領地で、黒服の男たちも視界にすらいない。
自由になった気がする箱庭に、相変わらずジョンの素人ギターの音色が平和にどこまでも響く。

「ほら、また中指触ってるよー」
「横から色々と言うからだよ」
「ちーがーうよー。ほら。だ、だだ、だー。こらっ!中指はどうしたのっ!ちゃんとやるっ」
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「マーガレット?」

スパルタぶったマーガレットの物言いにジョンが手を止めると、「いじめすぎ?」と彼女が笑ってジョンも微かに口角だけあげる。
すぐまえの夏休みの時期にはジョンの息子の双子達も家に戻っていたが、
彼らも彼らなりに国外の友人宅に遊びに行ったりという年齢になっていて、ジョンとは国内外の方々で日々を過ごした。
いまは秋のさかり。高原はすこし涼しすぎてマーガレットは彼の体温に寄り添う。

「この辺は花が多いね」
「昔はここでも狐狩りをよくやっていたよ。私の代で止めにしたがね」
「狐っておいしい?シチューとかにするの?私シチュー好きなんだ」
「・・・食べはしないよ。今日はシチューを作らせようか」
「えっ、狐食べないんだ!?でもダメ~。私ね、○○っていうところの缶詰のシチューが好きなんだ」
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「缶詰・・・?非常用のものをいつも食べるのかい?」

育ちも階級も年齢さえ違うのに、ふたりはその差異を不思議と満喫していた。
どうでもいい話題をいつもいつも楽しみ、すぐに飽きられるかという杞憂は消えて、この関係は次にくる冬で1年となろうとしていた。
言わない・・・というよりも言えないだけで、もはやジョンから寄せられるものが愛であると知っていたし、
マーガレットも同じくらいの愛を抱いていた。

「マーガレット、ピアス似合っているよ」
「要らないって昔ちゃんと言ったのに、いっつも持って来るよね」
「君が気にしていたように沢山でもないし、財布に入るサイズで目立ちもしないからいいだろう。現にいまも髪で目立ってはいない」
「~~~~そういう政治家の屁理屈って、きらいー」

「これでも何かの助けになるよ、マーガレット」
「色々あればまあ、コーディネートには困らないけどねー。ジョンてば、どうでもいいことを難しく言うよね。理系オタクさん!」
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このときには実験物理学を専攻していたというジョンが、その方面で頭脳明晰だったらしいことは知っていたが
マーガレットはからかって笑って流し、ジョンも黙ったままギターを弾き続けた。







→第18話




もしもOriginにログインできなくなったら

久しぶりにTIPSです。
たった今やった解決方法をだだだっと書いてゆきます。
検索でたどり着いた、困ってるOriginユーザーさん皆のお役に立ちますように。






■管理人に発生した事象

Sims3起動にあたりOriginを起動したところ「パスワードの有効期限切れ」としてログインできなくなった。
これは週に一度程度ログインしてても、ある日突然訪れるらしい。
通常であれば「パスワードリセット→登録メアドにメールが来る→メール内リンククリック」で即解決できる事象。
が、管理人の場合は登録メアドが古すぎて上記リセット手順が踏めなくなってしまった。


補足:
私のOrigin登録のメアドがYahooメアドだったのですがログインを年単位でしていなかった結果、
Yahooエールのパスワードリセットがやっぱり必要になっており(笑)
そのために誕生日入力をしなくてはいけなかったのですが誕生日デタラメ登録していたらしく、
そのメアドは永久にログインできない状態となってしまってました。


■解決方法

時間の無駄なのでEAのサイトのお問い合わせページへ行ってはいけません(笑)
Originにログインできない以上、結局電話問い合わせなのですが
EAサイト上に表示されてる番号が日本国内番号ではありません

管理人はEA 公式ツイッターで問い合わせようと思ったところ、
EA公式アカウントのプロフィールにヘルプデスク電話番号がありました。そこへおかけください。
このサイトではのちに番号変更される可能性も考えて電話番号は載せないでおきます。


■ヘルプデスクとの電話によるパスワードリセット手順

まずアナウンスが流れますが、
この時点で外国人(か、もしくはバイリンガルで日本語がサブ使用になってる日本人)ぽい訛りバリバリです。
びびらないように!!(←いざとなったら英語で話さなきゃいけないのかと気合入れる:爆笑)

が、交換手の方も同じく少しだけ日本語の文法がおかしな方でしたが、きちんと会話は成立します。
安心してください。
確認手順は以下の通りでした。

①まずメアドが機能してなくてログインできない旨を説明する

②アルファベットを読み上げる形で現メアドを伝える。
 たとえば「rigunoeru@」とかのメアドなら、「あーる、あい、じー」という感じで。
 (RとLなど音で分かりにくいアルファベットのときはLondonのLです等で確認しあいます)

②本人確認のため交換手から「ひみつの質問※」を尋ねられるので、それに回答する
 (※Originアカウント登録のときに自分で質問&答えを設定しています)

③交換手が新メアドに変更作業をしてくれるので新メアドを伝える

④電話が繋がってる最中に新メアドにパスワードリセットのためのメールが到着

⑤メール内のリンクをクリックすると、そのまま新パスワード登録画面に飛びます。私はこのあたりで電話切りました。

⑥新パスワード登録完了になったらOrigin起動。上記③のメアドと⑤のパスワードを入れれば問題なく起動します!



以上です。通話時間は大体10分程度でした。
当然ながら、上記手順はこの記事が書かれた現在時点での情報ですのでご了承下さい。

なお、この件に関する「どうしたらいいですか?」というお問い合わせは
私はEA公式スタッフではないので一律お答えしておりません。
当記事はあくまで参考例としてお考えくださいますようよろしくお願いします。

第16話 マーガレットⅡ AminaⅤ

←第15話



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ジョンが自分の夫婦生活の現実を明かしたあとのマーガレットは明るくいることに努めた。
名曲”スタンド・バイ・ミー”の有名なメロディーを「だ、だ、だだ、だーだ」と、拙い彼のギターに合わせて何度も口ずさむ。

しかし彼の小休止のたびに訪れる沈黙に、先程の彼ら夫婦の話題への気まずさがジワジワと沸いてきた。
なにか気の利いたことを言ったほうがいいんだろうか、と。

するとジョンのほうから「何かな、ソワソワして。訊きたいことが?」と切り出されてしまった。
彼女はうにゃうにゃと濁そうとするも人の上に立ち慣れている柔和さでジョンはさらに促した。

「あのー・・・こんなこと、訊いてしまうのは本当に大変恐れ多いんですけれど」
「今更だが。どうぞ」
「お子さんがいらっしゃいますけれど。さっきのお話で。あの、奥様と・・・別れようとか、そういうのは、ないんですか」
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するとジョンは見事なストロークで、じゃらんとギターを掻き鳴らし、それが上手かったためマーガレットは驚く。
ジョンは「これだけはよく練習したんでね。それっぽいだろう」と、
初対面の昨夜には想像もできなかったような、いたずらっぽい目で微笑んでみせる不意打ちに心臓が変な動きをしてしまう。

「君は歴史の勉強はちゃんとしてきたかな、公爵家の起こりは?」
「そりゃあ上からサウス家、ベンジャミン家、ベイリー家といえば小学生で覚えさせられますから勿論知っていますよ。
 初代の女王様の弟妹が分家となって今の三大公爵家になったと習いました」

王家に跡取りが居ない場合は公爵家から女性優位で王位を継承してゆくというのは、この国の常識。
とはいえ、この当時の時点では女児がいないサウス公爵家には関係ない。
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ジョンは「あまり知られていないが」と手首をぐるりとストレッチさせながら、

「公爵家というのは王室のベンチ控えみたいなもので、
 既に子がある結婚の場合は離婚をするには当代の女王陛下の許可調印が必要になる」
「なるほど。・・・・えっ」
「そう。こんな法律が残ったまま女王陛下はあの痛ましい事件でお隠れになってしまったんだよ。
 そして現在の王位継承者は即位を拒んでいる。・・・そうなると我々夫婦は一体今どうするべきか分かるかい?」

目の前の議員でもあるジョンが答えを持ってないのなら、一般市民で学生のマーガレットが答えられるわけがない。
彼女が沈黙しているなか彼は続ける。

「現王位継承者に即位するよう説得し続け現行法に則るべきだの、新法はやはり必要だの方々でごたついていてね。
 このあたりの混乱は我が家の夫婦問題とは別にニュースでも時折やるが市井の人々の生活には関係がないから
 議会で話し合われる優先順位も低い。みんな色々大変そうだ」
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当事者の三大公爵家の当主であるにもかかわらず、このジョンの諦観たっぷりの他人事のような口ぶり。
マーガレットは難しい政治の見識などまったくないが、目の前の1人の人間の夫婦事情に絡みすぎていることを知り、
適当な相槌を打つしかなかった。

そうして時間が経過するとギターを奏でる彼の指は限界を迎え「今夜はここまでだな」と切り上げる。

「マーガレット。明日は店に寄らずに直接こちらへ来なさい。こちらから店には言っておこう」
「あっ、はい!お気遣いありがとうございます。正直今夜は見張られて送迎されるのも恐かったので本当に助かります」

ほーっと大きな安堵の溜息をつく彼女に、ジョンは微笑を浮かべる。
わあ、笑った!笑った!と、非常に珍しいものを見れているのがわかるだけでマーガレットの心は舞い上がる。

「あっ・・・あ・・・でもあの!すみません・・・着るもの、またたぶんコレになっちゃうと思うんです・・・
 私こんなホテルに着てこれるような豪華なドレスとか自分で持ってなんかなくて。いつもはお店で借りてて・・・」

「寒いのにドレスなど着る必要もないだろう。大学に行っているそのままで構わないから温かい格好で来るように」
「はいっ」
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そばかすを美しく輝かせてマーガレットは大きく笑い返した。





その帰り道、マーガレットは夜遅くまで開放されている大学図書館にレポートの仕上げのために寄った。
あんなサウス公爵家の夫婦の内情を知ってしまっては、やらしい対岸の火事視で新聞も見てしまう。
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”公爵夫人様がブリッジポートの植物園で支援会”という記事・・・・吊り目がちの美人が写っている。

「ん~~~~~~~~・・・・・・・」

この美人が、ジョン・サウス公爵の妻であり彼らの双子(アレックス、そしてウィリアム)の母か。
今のジョンは外で女を求めてるようだし絶対セックスレスだろう。かといって離婚もできない、と。

(あーあ、なんだかな~)

下世話な想像をしつつ、モヤモヤイライラするような心地のまま記事を読んでいく。
そこには植物園の主幹スタッフでもある若き植物学の研究者が、
昔に公爵夫人の実家で庭師の一人として働いていた縁でこの度の支援会発足となった書かれていた。

一見微笑ましいエピソードに息が止まる。
ジョンが言うには、自分たちの結婚を急がされたのは彼女が実家で庭師に恋をしたからだと彼は語っていた。
で、この新聞記事と合わせて想像するに・・・彼の妻は今でもその庭師とは切れてはないのだ!
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(なにそれ!)

ただの新聞なのに下品なポルノを見てしまったかのような気持ちになって厭うように新聞を放り投げる。
話を聞かされただけのマーガレットでも連想するのだからジョンだって当然・・・
いや思い起こせば彼の様子からいって確実に彼の妻は元庭師の男とは続いてるに違いない。
・・・セックスが絡んでるか否かなど分からないし、知りたくもないが。

「素敵な恋を」なんて、彼は自分にどんな気持ちで言ったのだろう。
もう30も過ぎて女の接待を受けているのにジョンは恋などしたことないと語っていた。

妻がいまだに他の男と切れず、公務で妻も連れずに国内外を飛びまわり、彼の子供たちも確か他国の学校だとか。
高貴な家の婚姻なんて庶民の自分には分かるわけないが、これは誰が何が悪いんだろうか。
でも不幸だ。間違いなく。
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彼の妻ヒルダ・サウスも同情されるべき立場なのかもしれないが直接知り合いでもないので、
マーガレットは完全にジョンだけが心を寄せる。
無表情な彼がギターに向かい合っていたときだけ見せていた和らいだ目の輝きを思い出し、心臓が縛られるような苦しさが沸いた。

冬の冷えが一層ひどくなってきた。






彼らが知り合って3日目。
ジョンは公務中でも、つい油断すると左の指先を気にする仕草が増えてしまっていた。

しかし昼過ぎから重たそうな雪が降り始めた。
既にマーガレットを派遣してきたナイトクラブには彼女の送迎はこちらですると言い含めたし、この天気で彼女は来ないだろう。
そもそもジョンさえ店側にうまく言ってやりさえすれば彼女が本当にこちらに来る理由はない。
ところがマーガレットはギターを抱えてやってきた。
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いじらしいという表現ぴったりに「こんばんは!仰って頂いたとおりに普段着ですみません!」と鼻を赤くしながら。

「・・・。この大雪に君は律儀なものだね」
「えっ?!ダメでした?あの、あの、でも、お約束していたので今日もやるかなって」
「入って暖まりなさい」
「・・はい・・・・」

ジョンは皮肉ともとられかねないほどの直球な言葉を述べるだけ述べて、相手が戸惑っていようが説明をしない。
感情表現が極めて下手すぎるジョンのこういったところは他人に壁を感じさせ、
特に須らく人当たりがよく、感受性が鋭い彼の息子アレックスにすら誤解を与えて続けている彼の性質のひとつである。

マーガレットはわかりやすくしょんぼりした顔を見せた。

「・・・あの、申し訳ありません。私」
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「座りなさい」

ジョンが暖炉へ導いてタオルを渡してやると、帰ると申し出ようとしていたマーガレットは表情を和らげて礼を言えた。
幸い、彼女には古い時代の無口な祖父がいたので彼の難しい性質にピンときたのだ。

表情が薄く、基本難しい顔ばかりしているようなところも祖父にそっくり。
けれど祖父がギターを弾くときにマーガレットが一緒に歌うと不思議と絆を感じ、祖父の愛も素直に伝わってくるようで
マーガレットは祖父が好きだった。対して祖父もまたそうだったらしく彼女にだけ彼のギターを与えてくれた。

「あ、ギター出します。お弾きなりますよね?」
「君さえよければ自分でやろう」
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「もちろん!どうぞ」

ギターケースから、サウス卿がいそいそとギターを取り出している!
思っていた以上にジョンが楽しみにしていたようなので、ついマーガレットは含み笑い。

「いまの笑いは?マーガレット」
「だって、すごく楽しみにしてらっしゃるようなので」

ほぼ表情が動かないながら、「そうだな。今日も公務中につい動かしてしまったりしたよ」と、ジョンが左指を動かすので
今度こそマーガレットははっきりと笑った。
ジョンがケースを開けると、ギターは濡れ防止のビニールに包まれている。
もはや何のメリットもないのに、こんな準備をして自分のため夜の雪を踏みしめてやってきた彼女のいじらしさが
改めて静かにジョンの胸に迫った。
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「そんなにお好きなら、ご自分のを買い直してたらよろしいかもしれませんね。もう止める方もいらっしゃらないのでしょう?」
「・・・どうかな。ひとりになれば、また私は弾かなくなる気がしているよ」

言ってみて気付く。自分は”彼女と”、ギターを弾ける時間を楽しみにしているようだと。
ごく普通の・・・可憐な学生で、一応彼女の弱みも掴んでいることも手伝い、
他の人間よりは壁を下げて接してもいい状況となっている現状が自分は心地いいらしい。
ジョンはらしくない自分の変化にすこし、気付いた。

一方でマーガレットはふうん、と頷きつつ、昨日と同じようにメロディーを彼のギターに合わせて口ずさむ。
とはいっても本物の講師でもないので指導らしきものは殆どしない。
単純なコードの繰り返しということもあり、だいぶメロディーがそれらしく続けられるようになってきた。
しばらくの時間が経ってから、ふと先程の会話にまたマーガレットが戻す。

「本当にひとりじゃ弾かなくなりそうですか?」
「そうだよ。君は自分が思っている以上にいい先生だよ。君と弾いているから楽しいんだと思うね」
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手元のギターを奏でることに気を取られ、そしてマーガレットがあまりに自然に尋ねてくるので思わぬジョンの本音が出た。
内容も内容だったのでマーガレットは小さく息を吸って目を丸め、彼女の白い肌は赤くなってゆく。

「君は大学でも人気者だろうな、想像が付く」
「え、私、別に中心人物とかじゃないです!勉強もスポーツも特別では・・・普通に友達とガヤガヤやってるけで・・・」
「いいことだ。派手な目立つ者には敵も多いものだよ」
「えーそうですか?でも、そんなこと言ったら、━━━━」

”すごく目立つ”公爵さま”は敵だらけになっちゃうじゃなないですか”、と
ジョンの中のよい部分ばかり見ていたマーガレットは大きく笑い飛ばそうとしてしまったが、
立場と職業柄、実は本当に敵が多いのかもしれないと思いついてしまい止まってしまった。

マーガレットにとっては気まずい沈黙。
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対してジョンも彼女が言わんとしてしまった軽口と、彼女の居心地悪さの察しがついていたので流石に続きは促さない。
ただ助け舟のつもりで少しだけ話題を方向転換してやる。

「私もね。自分の立場は理解してるが、実際の人となりは凡庸だという自覚はあるんだよ」
「えっ。そんなあ・・・」

マーガレットが反射的に否定してやりたくとも、そもそもジョンの人となりを知っているわけじゃない。
まだ共に時間を過ごすようになって3回目の夜だ。

「何か飲もう。君は酒はやめておくかい?」
「ごっ、・・・ご相伴します!でも弱めのでお願いしますっ」

するとジョンはごくごく微かに口角を上げるとギターを置いて、冷蔵庫からビールを持ってきた。
それはこの部屋には似つかわしくない味も薄くアルコールも軽い安い銘柄━━学生のマーガレットのよく飲む銘柄で驚く。
彼は「こいつは学生の頃から好きでね」とわざわざ用意させたらしいことを匂わせた。
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高級暖炉だが火を囲んで床に座り、ギター片手に缶ビール、なんて。まんま学生の飲み会だ。
初日の”セックスを前にしての女のお出迎え”とは大違いの気安さで、ジョンは缶のまま乱暴な乾杯をして2人は語らいだす。
マーガレットの大学であった笑い話を起点に話題はジョンの大学時代の話へ。

「私より少し上の世代にヒッピーが流行ったものでね。それで私は父親にギターを取り上げられたんだが、
 大学の専攻だけは我がままは通したものだよ。といっても卒業後の進路にはこの通り、全く影響がなかったんだが」
「! へえ、そうなんですか?大学では何を専攻なさってたんですか?私は文化人類学です。
 今は近現代の都市部と地方部のファッションの変遷を当時のファッション雑誌の刊行内容に合わせて分析してます」
「私は実験物理学だよ」
「?」
「実験物理学」
「?」
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マーガレットにはサッパリで、頭の中の?マークを誤魔化すように彼女はビールをぐいぐい飲み進み、
その間ジョンに実験物理学において自分がどういったことをしていたかをざっくりと説明してもらって、何とな~くは理解した。

「えっと、つまり発表された他人の論文の内容の実験と同じ事をしてたんですか?」
「そう。再現性の確認のためにね」
「? 誰かがもう実験して結果が出たから論文が出たんじゃないんですか?」
「それが不変の結果だと誰かが検証しなくては意味がないだろう」
「? ? 実験物理学はいつも他人の研究をなぞるんですか?」

これはマーガレット、完全に口が滑った。
初日のように恐ろしい怒りをもらうかと思いきや、ジョンが発したのは「は!」というあからさまな嘲りの発声ののち、

「そっちこそ。ファッション雑誌を見るのにわざわざ大学が必要かい?」
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「! ちょっっとっ!」

彼女が叫んだ拍子に安ビールの缶は簡単に凹み、2人が同時に目を丸めて同時に笑いを噴出した。
そしてマーガレットはわざとらしい納得顔で頷く。

「なるほどなるほど。つまりは、サウス卿は典型的な理系オタッキーなんですね」
「そちらも典型的な文系バ━━ ・・・・ 典型的な文系じゃないかね」
「今!絶対!バカって言いましたよね!」
「言っていない」
「うっそぉ、言いましたよ、殆どおっしゃってましたよぉ~!」

口ぶりとは逆に、マーガレットはケタケタと学生同士の飲み会のような馬鹿笑いまで・・・早くも酒が回ったらしい。
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ジョンは無表情ながら胸中ででおおいに呆れ、食事は摂ったのかと尋ねると
彼女からは「途中で店に入るつもりが雪がひどくで時間がなくなって何も食べていない」と返ってきた。

一転してジョンは顔を引き締めると、外で護衛をしている人物とは別の種類の・・・ 落ち着いた執事のような男性に声をかけ、
また話が盛り上がった頃に軽食が運ばれた。
マーガレットは恐縮しながら、安い学食とは大違いの、凝ったパンで出来たサンドイッチを微笑んだまま齧った。

「あの・・・・あの。お優しいですね、サウス卿。本当に色々すみません」
「謝る必要はない。君は私のゲストだ」
「すごい。私、公爵様のゲストなんですねー。ご馳走様です」

うふふふと赤い髪を揺らしながら、白い肌を染めたマーガレットが気持ちよさそうに1人笑う。
つられてジョンも微かに笑みを浮かべた。

マーガレットが食べ終えて、再びちびちびとビールを飲んでいるうちに
ジョンのギターから出るものは、ちゃんとした音色になってゆく。
食事が落ち着いたタイミングでマーガレットは初めて歌詞をつけて歌いだした。
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単純なコードの繰り返しの曲であっただけに、
歌声がつくだけで途端に豊かな音楽として花開く。
不安定なジョンのギターに上手く上手く合わせてくれている、伸びやかな声。


ジョンももう手元をじっと見る必要もないほど、単純なコードの演奏を繰り返しながら
マーガレットの顔を初めてのように見つめた。
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もしも彼女と同じ大学であったら、
同じ歳であったら。

自分は講義の合間、大学のキャンパスの芝生の上で
こんな素人ギターで遊びながら彼女とどれだけ彩り豊かな時間を過ごせたのだろうかなどと
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眠りにも落ちないうちから、そんな夢を見た。

曲を2回くらい繰り返し、
マーガレットが笑顔と指先で合図してきたタイミングで
流石にジョンも指先の痛みが辛かったので例の素人ながら見事なストロークで演奏のフィナーレを迎える。
若い日の夢にまで見たとおりに自らギターを弾いたのだ。
ちゃんとした曲を。
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指先の痛みすら誇らしいとジョンは思えた。

「━━ すごいっ!すごいすごい!弾けた弾けた!すごーい!やりましたね、指痛かったですよね、でも本当にすごかったです!」
「君が良い曲を選んでくれたおかげだよ。プロの歌が入ると、途端に私の演奏でもそれなりに聴こえる気がするものだ」

プロ、と言ってもらえた!しかも公爵という貴族のひとに!
自分はただのバイトのコーラスガールで、しかも明日にはクラブも辞めようというのに。

「私みたいなのにプロだなんて、ありがとうございます。すごく嬉しい退職金もらっちゃいました」
「事実だよ。私は自分の腕前くらいは分かっているつもりだ」
「・・・・・・わっ、私こそ・・・。 はは、クラブで、歌って、頑張ってましたけど。自分にすごい特別な才能が、ないのは・・・
 知ってるんです」

笑いながら言ったはずのマーガレット、声がずっと震えてしまった。
自分で言って自分で傷ついてしまう。
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対してジョンとしても自覚はあったのかと黙する。
彼のギターに合わせられた先程の彼女の歌声は巧いがそれだけだ。
例えば路上ライブをして”巧いな”と立ち止まってもらえても曲が終わらないうちに、何故か飽きられ去られてしまうだろう。
しかしジョンの鈍い表情筋は、そんなの残酷な感想は幸い表には出さない。

「クラブで他の・・・ソロやってる人の歌って、やっぱりすごいんですよね。売れるために色々あるのかもしれないですけど、
 ・・・・・私じゃ、あんな大きいクラブでステージ持たせてもらえないだろうなって、分かってるんです。
 だから、あの。今回諦めるきっかけもらって良かったと思ってますよ、・・・なんて」

酒のせいで勝手に盛り上がった感情のままに本心を吐露して勢いが止まらない。
酔いで心臓が早い流れのまま、マーガレットは半泣きで続ける。

「あの。わたし、あなたがすき、みたいなんです」
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「・・・・・・」
「・・・酔ってるから。言っちゃいました・・・でも、分かってるんです。どうしようもないって。私なんか」

ジョンの顔は動かない。
1秒、2秒、・・・・5秒経って、
なんとマーガレットから彼に跨るように近づいて目を閉じて唇を重ねた。
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といっても相手が応えなくてもいいように深くではないが重ねるだけ、
けれど気持ちをこめて長く、長く・・・。

マーガレットが離れる気配がして、
共に目を閉じてジョンが彼女を引き寄せてしまおうと手を伸ばしかけたよりも早く彼女は離れてしまう。
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目を閉じていたために彼の挙動にマーガレットは気付かず、
声を震わせながら小声で呟く。
できるだけ軽く、嘘の笑顔で。

「・・・・今日は、私でどうでしょう?」
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手の届かない地位の相手だ。そして彼がこの都市を明日出てしまえば接点などないのだから、二度と会えない。
初めて会った夜にジョンは誰でもいい女を彼は抱こうとしていたのだから、
”誰でもよいなら今夜は私でどうぞ”とマーガレットは申し出たのだった。
そうやって安売りをしないと、庶民で学生の自分など彼には近づけない。

ジョンは恥ずかしさで泣きそうになっているマーガレットの震える睫毛に見惚れる。

初日に好きな人とでないと出来ないなどと彼女は堂々と宣言していただけに、
ジョンとしては彼女にそんな行動を取らせている自分が情けない。

いい歳をして立場もあり、妻も子までもあるくせに、
押し殺し続けて学生の頃のまま、成長させられていられなかったジョンの内側の部分は御し難いほどに彼女に惹かれている。
だからこそ、

「できない」
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そんな安い扱いを彼女にさせるわけにいかないし、したくもない。

しかし説明が足りなすぎる彼の返答はマーガレットの心を殺すには十分な威力で、
居たたまれなさにマーガレットはぼろぼろと涙を零しながらコートだけ引っつかんで部屋を駆け出た。

彼女のギターと共に1人部屋に取り残され、この三夜の彼女との逢瀬を思い起こす。

サウス公爵家の嫡男として生まれてから、
幾度もこんなことはあっただろうと己の心を律するが既にジョンの頭は彼女を追いかけることを考えている。
けれど既に彼女はもうホテルのロビーか、もしくはもう大雪の中を飛び出してしまっているだろう。
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そこには衆人環視の目が無数にある。
公爵であるジョン・サウスは彼女を追いかけて引き止めることすら出来ない現実。

育ちが良く感情の起伏も乏しかったジョンは、そのとき生まれて初めて憤りを物にぶつけて灰皿を投げ飛ばした。





そして翌、4日目。この都市を訪問してきたジョンが帰る日で、マーガレットがナイトクラブ在籍の最終日。
惨めな心のマーガレットは「もうジョンに会いたくない」と考えたところで、
そういえば彼がクラブに上手く言ったのであればもう本当に彼のところに行く必要はないとやっと気付けてホッとしていた。
でも祖父の形見のギターを置いてきたことは大後悔している。

夕方になって家に帰る途中、ナイトクラブの強面の用心棒に攫われるかのように店に連れて行かれた。
監禁でもされるのかと思いきや、店の出入り口には見覚えのある黒服の人間たち。
促された楽屋で副支配人に相当豪華なドレスを投げられ、この異常な対応にまさかという思いは、
ガランとした客席の中の重圧感ある存在を見て確信に変わった。
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「・・・・・・」
「・・・・・・」

気まずいマーガレットだったが慌てて丁寧なお辞儀をすると、ジョンからは瞬きでだけで返事が返ってくる。
そんな互いの動きの大きさが、そのまま立場の差を示していた。

どうして呼びつけられたのか素直に尋ねようとしたマーガレットに、背筋を伸ばした支配人が指示する。

「マーガレット。サウス卿はこれから街をお発ちになるが、最後にお前・・・君の歌をご所望とのことだ」
「・・・はいっ?私もう今日辞めるんですけどっ?」
「それが何か関係があるかね」

素のまま支配人に素っ頓狂な返事をしたマーガレットに”公爵”が重々しく言い、支配人が小声で急かす。
大混乱のマーガレット、支配人に背中を押されながらジョンと目が合うと、彼は彼女にだけ分かるようにひっそり微笑みかけて
眉の動きだけで茶目っ気を出してステージを示した。

「!」
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失恋はともかく、これがジョンなりのギター教室のお礼ということなんだろうと、ようやく理解した。
やだ、泣きそう。迷惑かけてばっかりで、すごい忙しい人なのに。

この都市でいちばんのナイトクラブのステージの中央にマーガレットは立った。
今まではライトも当たらない位置でコーラスだけしてたのに。
お忍びでやってきたジョン・サウスのため、バックバンドも店の一流どころ。
もう店内の全員からはマーガレットが公爵を身体で篭絡したと思われただろうが、どうせ退職日だ。
他の人間にどう思われてもいい。
ジョンに会えるのもこれが最後なんだと雑念を切り捨てたマーガレットの表情が変わり、歌う曲を彼らに頼んだ。

『突然のことで・・・・一流の皆さんに囲まれて私の粗が目立ってしまうと思うんですけれど頑張ります』
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ジョンもマーガレットも、これから歌われる曲は分かりきっている。
3日間ジョンが奏でていたものよりも相当上質な『スタンド・バイ・ミー』のイントロが流れ出す。
人が居ない店内にふさわしく、水面のように静かで美しい。

懐メロばかりだった少年たちの青春映画では霞んでいたが本来これはラブソングだ。

あなたがいれば怖くないから傍にいて、傍にいてと呼びかけて繰り返す。
マーガレットが飲み込んだ涙はそのまま歌声に乗った。
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行き場のない想いが蔦になってマイクから絡みつくように伸びていき、辛いまま店内を這いずり回ってジョンに向かってく。
明らかにマーガレットの歌の何かが変わっていて、自分自身でも驚いた。

歌い終わったあと彼女を特別に評価していなかった店内の面々も驚き顔で、
バンドメンバーからも贈られた拍手は公爵の手前のお義理ではないだろう。
ジョンが微かにだが頷きながら拍手しているのを見て、マーガレットは会心の出来だったことに確信を得た。

支配人もまた、公爵への媚び半分本気半分で彼女の退職を慰留させたい旨を匂わすと、
ジョンは驚くことに「それは許さんよ」と恐ろしいほど冷たく切り捨てる。
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かと思うと支配人に今回の特別な計らいに感謝すると懐柔もしてみせたあと早々に邪魔な彼を追い払った。

店内は人払いされて、やっとマーガレットとジョンが2人だけで直接言葉を交わすこととなる。

沈黙したままジョンは煙草の紫煙を吐く。
そのときマーガレットはそれはジョンの溜め息なのだと気が付いた。いつも彼は溜め息を煙で誤魔化してるのだ。

「まるで泣いているみたいに歌うんだな、君は」
「そう聞こえたのだとしたら、あなたがそういうお気持ちなんですよ」
「・・・そうか」
「そうですよ、きっと」
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マーガレットは嘘をついたがジョンは納得しているようだ。
そのせいで彼女の中に、少しだけ、もしかしたら彼も別れを惜しんでくれてるのかなという期待が顔を覗かせてしまいそうになる。

「いい歌だった。驚いたよ」
「実は私も驚きました。今のはちょっと、・・・私なかなかでしたよね?」

歌手の夢を昇華したマーガレットが心から嬉しそうだ。
はしゃぎすぎぬように、けれど我慢できないマーガレットが一流ナイトクラブのステージの感想を語るのを聞いているうち、
昨夜鍵をかけるべきなのだと収めた気持ちが零れる。

「君には実に楽しい時間を持たせてもらったよ。・・・私には夢のような時間だった」
「そこまで楽しかったのは私の力じゃないです。サウス卿。やっぱりご自分のギターを買われたほうがいいですよ」

マーガレットが少しだけ苦笑するとジョンは煙草を消した。

「初恋の夢だよ、マーガレット」
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息を止めたマーガレットの指先の、ほんの爪の先だけジョンが触れると痺れのようなものが走った。

黙ったまま息を潜める。
それでこれから私、いや自分たちはどうするんだろうかとマーガレットが思惑っていると
表情の薄いジョンとやっと目が合って、あまりにそれが辛そうな瞳だったのでマーガレットから彼の手に自分のそれを重ねた。

「去りがたいが・・・今日は私はこのまま・・・ ━━ 家に戻る」
「私はどうしたらいいですか?」

惚けきったマーガレットから発せられる熱はジョンにはかなり魅惑的に届いてくるが、これ以上予定は覆せない。
公爵など我侭放題だろうと思われがちだが実際はそんなことすれば各方面にどれだけ皺寄せが行くのかも知っている。
心を二の次にし、流れに身を任せ自分を律してばかりのジョンの余生のなかで見つけてしまったものが
このマーガレットとの時間だった。
ひとりの人間に戻れる時間。

「日を改めて会おう。それまで君のギターは預かっておく。昨日忘れていっていたからね」
「祖父の形見が人質ですか?じゃあ嫌でも行かなきゃですね!」
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マーガレットとジョンは同時に指を絡めたのち、空気を震わす程度ながら同時に笑った。
そんな心からの笑いで緩んだ途端、
空が崩れ落ちるような恐ろしさに襲われかけるマーガレットの胸中を察するように
ジョンは少し眉根を引き締めた。

「マーガレット。終わらせたいときはいつでも・・・君にからにしていい。私に引き止める資格はない」
「・・・・」

ジョンが背負っているもの━━特に妻と子たち━━を暗に匂わせられて、始まったばかりであるものの
マーガレットは頷くしかない。

「今日はこのままお発ちになるんですよね?連絡・・・私、取れないですよね、どうしたらいいですか?」
「私から手紙を送るよ。君は会えるときに来てくれれば嬉しい。・・・ただし学業は疎かにしないように」
「はい。それにしてもお手紙ってクラシックですね。素敵。さすが”公爵様”ですね、サウス卿」
「ジョンでいい」
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表情も声音も静かで動かぬものなのに、
その一言だけで彼から確実な思慕の情が伝わってきてマーガレットは頬を真っ赤に染め上げ俯いた。

「あのっ!あの、あの、・・・てっ、手汗すごくなってきちゃっててっ、す、すみません・・・!」

さすがのジョンも俯いて笑いを堪えた。







後日、マーガレットのシェアハウス寮にジョン・スミスという、ひどい偽名の手紙が届く。
中にはジョン・サウス議員を含んだ外遊する視察団がオランダ入りしたということで、
一般就航便のオランダ行きの最上クラスの航空券よマーガレットの名前でとってあるというホテルを示したカードが入っていた。




→第17話




作業中断してます→再開しましたw

いつもご訪問&拍手いただきありがとうございます(◍´͈ꈊ`͈◍)いきなり秋になりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか?

私は早くも娘が小走りできる程度に歩くようになり、
外遊びなども始めた&PCをしているとマウスを私も触らせろと怒るので(笑)作業できる時間が正直減っておりますが、
合間合間で次話を書き進めています。

そうそう。某ブランドで↓のようなベビー服を見つけてしまい、飛びついてしまいました。
20170901081548abe.jpg
猫と蜘蛛・・・・ 買わないわけにいかなくない!!?(店内で心の中で大興奮)
猫と蜘蛛ですよ、猫と蜘蛛!!蜘蛛ちゃん!!アラー///(分からない方はSeason0へGO★)
こちらで皆さんにじゃないとこんな話できないから、ブログでするという(笑)


で。
ここまで近況を書いていてご報告。件名のとおりストーリー作業が中断しています。

これは管理人の私生活のせいでなく、
画像アップローダーが不調のようで、PCから現&旧アップローダー両方使っても画像のアップロードが出来ないためです。
↑のシャツ画像は、
この不具合を受けて試しにとスマホからスマホ版でアップロードしてみた画像です。
スマホ上でもPC表示にすると画像アップロードができないのでブログをお借りしているFC2さん側の要素と思われます。

TOP画像もはやくも半年間(!)イアン&アレックスのままなので
現在のストーリーに合わせてマーガレットさんにしようと思ったのに残念です。
ベビー服の話&もう少々時間がかかりますというご報告でした。


この記事を書いたあとで娘の習い事に行った後、昼寝の隙に試したら解消してましたw

なお次話は文字が95%できています。
ダイアナが親になるということで、ダイアナの両親のお話。正直書いてて楽しいです。







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