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第39話 白と黒 ±0

←第38話





翌朝、昼近く。
ぱか、と目を開けると完全に酒が抜けた感覚。
またイアンと顔合わせるのかな、などと考えながら低血糖気味にふらつきつつ1階のキッチンへ行くと、
最初に目がつくコンロテーブルにイアンからのメモがあった。
s2-39 (10)
朝食のことと、犬のブーツのために全部のドアは隙間を空けておけということ。
さらに彼らしい気配りで、買い物できる場所や方法についてが箇条書きでマニュアルのように分かりやすく載っている。

リゾート内での買い物なら、イアンへの部屋付けでダイアナが支払わなくて済むらしい。
いきなり現れた自分でも問題なく買い物できるよう、話も通してくれてるんだろう。
・・・・未来に戻ったら生活費をまず返さなきゃいけない現状に情けない気持ちになりながら、
行儀悪くその場で立ったままダイアナはサンドイッチで朝食を済ませた。

「うーわーあー・・・・」
s2-39 (11)
南国の海だけじゃなく、隣には藁葺きの小屋付きプール!!
水着くらいは買っちゃってもいいよね?一番安いやつ。あとでお金返すんだし。
うん。
自分に言い訳しながらも初めて南国の海にやっぱり心が踊らずにはいられないダイアナがプールサイドに行くと、
てっきりサーフィンでいないと思っていたイアンがいた。

「よう。起きたか」
「うん、おはよう」
「で?酒は抜けたか、酔っ払い」
「・・・う、ん」
s2-39 (5)
酒の勢いもあっての昨日の自分を、ダイアナは少しだけは反省してる。
でも肩や胸が今までにない軽さがあるのも事実だった。
てっきり仕事でもしてるのかと思いきや、なんとイアンはハガキを書いてるらしいく、驚いてるダイアナの視線に気付くと
「意外か?」と笑い、

「意外に俺は筆マメなんだよ」
「お父さんとか友達?」

ダイアナがテーブルのハガキを見つめてる隙に、イアンの目は無意識に彼女の足から顔にかけてをじっくり見る。
肌が美しく細いのに、女独特の柔らかさがある足。
かなり自分好みの足をしていると思いつつ、イアンは平然と、
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「昨日お前と話しただろ?エリンにだよ」
「エリンに手紙!?初めてだよね?」

「いいや。旅行先で互いに時々やりとりすんだよ。つっても一言くらいしか書かないけどな、何となく続いてんだ。
 ガサツなあいつだしな、ヘタすると昨日の食べたメニューとか書いて寄越すよ。
 ”昨日は鴨のステーキだった”ってな、小学生の日記かってな」

エリンに出会った頃が、相当遠くに感じられてイアンには懐かしい。
当時と目的は大きく変わったが気紛れの文通は気紛れに復活し、親友として実際いい関係にあると思う。
けれども自分のイラつきのまま八つ当たりしてダイアナに背中押されるまで頭を下げられないとは、ガキの部分があるもんだ。

「古風でいいだろ。見るか?内容よりも住所の方が長いけどな」
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リゾートハウスに複数用意されてた切手付きの絵ハガキには、
イアンらしい自信に満ちた、くっきりとした文字で『バレーにちゃんと戻る。悪かった』とだけ。

ぐ、とダイアナは胸がつまる。
ストレートで男らしくってカッコいい、と結局ダイアナの中のツボを押すからイアンという人間は困る。
ちょっと前なら「も~やっぱりカッコいいよー、イアーン❤」なんて思っちゃってるエピソードだ。・・・・今でも思うけれど。

「咳も収まったみたいだな。
 ダイアナ、お前の部屋だけどなバカンスシーズンで明後日からだが一番人気だとかいう水上ヴィラにしたからな。
 買い物の金は気にしないでホテルん中で必要なもん揃えろ」

「どうもありがとう。お金あとで返すから」
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いつもの16歳のダイアナのような、でれっとした愛想笑いはない。
そして何かを秘めて物言いたげに、じっとイアンの目を空色の瞳で何度も見つめてくる。

「・・・どした?」
「! 別に。何も。本当にお金、返すから。ぜんぶ」

プロムのドレスとかのお金と、誕生日プレゼントのピアスとか、前に泊まった時の服も全部全部。
そんなことを考えているダイアナから発せられる、ぎこちない空気を、イアンは敏感に受ける。
一応無事を確認するため彼女が起きてくるまで待ちはしたが外出した方がいい。

「・・・・お前がそうしたいなら、そうしろ。
 まあ、どーせならお前も楽しんで過ごしてけ。ヨットでもスパだのヨガだの、映画だとか何でもあるしな。女は好きだろ。
 時々はメシにでも付き合えよな」
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イアンは絵ハガキ片手にふらっと立ちあがって会話をさりげなく締め、「ちょっと出てくる」と告げると
ダイアナはあからさまに雰囲気が和らがせた。

「いってらっしゃい」
「・・・ああ」

あちらとしてもイアンにいなくなって欲しかったようだ。









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リゾートの敷地は相当に広い。
一般客のハネムーナー向けの水上ヴィラから、イアンのような富裕層向けのリゾートハウスまで。
敷地内移動は基本ゴルフカートで、イアンの要望で専用執事は常駐してもらってないものの、
隣のプール専任の待機スタッフが声を張り上げて呼びかける。

「グレンツ様、お送りいたします。どちらへ?」
「! あー・・・そうだな、とりあえずラグーンプールまで」
「はい、どうぞ。あちらの車にお乗りください」
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イアンのハウスの専用のプールたちとは別に、リゾート宿泊客全員が利用できるプールもある。
ちょうど店やらスパも集るリゾートホテルの中心地にも近く、水上ヴィラ群もこのあたり。
時間つぶしにも(目の保養的な意味で)いい。

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目の保養といえば、あの自分と同い年だと言ったダイアナ。
ずいぶん色気、・・・というよりも垂れ目と肌の白さのせいで、妙なエロさがある。

ダイアナの母親のマーガレットも妙な色気があるし(懸想したことはないが魅力は十分認めてる)
かつてアレックスの親父が相当年下であっただろうマーガレットに手を出したのも分かる。
生来の女好きのイアンの思考は誤魔化しなく、そんなことを思う。
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あのダイアナだからこそ奇妙すぎるこの状況を受け入れはしたが、
『未来のダイアナ』は『16歳のダイアナ』と接するよりも相当難しい。
時間を超えたことによる互いのギャップもあるし、
何よりダイアナが自分に対して何かしらのマイナスな感情を抱いてることは間違いない。

が、心底本気で嫌われてるようには全く思えもしない。

そんな状況になる原因を推察して色々思い浮かんで、イアンの中で有力なのはやはりこれ。
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━━━━ 未来の自分と色恋沙汰でモメたか、というところだ。
ただし今更そういうモメるような付き合い方を誰だろうとするはずはないし、
何よりダイアナを無闇に傷つける事はしないと未来にむかっても誓える。

しかし昨日の犬のブーツの女医への突っかかり方、
イアンが尋ねた「自分は結婚できてるのか?」という質問への反応と、そんな感じがする。
こういう直感は実によく当たる。
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ダイアナが27歳というなら未来の自分が37、8歳か。
ってことは未来の自分はその歳でも独身なのかと、ダイアナの嘘のせいでイアンの予想の一部はズレた。

まあ、あのダイアナに手を出したなら、自分の男の部分は納得もする。
肌が美しく、引き締まったいい脚をしたエロそうな雰囲気のある女は、いつでもイアンのツボだからだ。
かつて初対面のエリンをナンパし、彼女が水着になった時にもしっかり水着から伸びる足はチェックしたものだった。

(まあ、避けたいならしょうがないっちゃあ、しょうがないんだが)

あれだけ懐いてる、あのダイアナが、自分が彼女を置いて外出するのをあからさまに喜ぶほどになるとは。
何があるにせよ、このイアンは彼女に何もしていないわけで。
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そのような扱いをされるのは、はっきり言って面白くはない。













「っ・・・! っ・・・1100$・・・!!!」
「はい、最近はカジュアルラインもリリースされまして、人気のラインとなっております。お気に召しましたか?」

値段もカジュアルでしょう、というニュアンスで店員は臆することなく勧めてくる。
こんなの買えるわけない!!

「・・・もっ、もう少しお手軽なのってありますか?」
「はい、お着替えが楽となると紐で結ぶビキニがよろしいですか?」
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イアンのツテのあるダイアナが値段を気にしてると思っていないらしく、
超高級ブランドのタグ付き水着がどんどん出てきたうえに、さらに価格が上がってダイアナは完全に参った。
このリゾートにあるお店じゃ金銭感覚が違いすぎる。

ネットで安く買うとなるとイアンのクレジットカードを借りなきゃいけないと肩を落とす。
イアンと自分の住む世界は、ここまで違うのか。
「また来ます」と、ダイアナは来るつもりはないのに雰囲気よく退店するため告げる。

「お待ちしてます。あと近々、こちらのカードをお持ちの方のみお越しいただける宝飾展を開催する予定がございます。
 今年のメインは世界でも指折りの大きさの全5色、虹色のカラーダイヤをご案内予定です。
 ご入札方式にてご購入もいただけます」
s2-39.jpg
「はあ・・・・」
「グレンツ様と是非お越しください」

黒光りする高そうなイベントカードを渡され、ダイアナはやっとショップを出た。
お店じゃ当たり前にシャンパン出されるし、本当に別世界だ。

「はあーあ・・・   ”人生に必要なもの。それは勇気と想像力、そして少しのお金だ”、だなあ・・・・」
「えっ」
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大き目のダイアナの独り言に反応して立ち止まった男性と、
次の瞬間おもいっきり衝突してしまって、
彼女は鼻をしたたかに打つ。

「!おっと、と・・・失礼」と、その男性。

「いえ、やだ、すいません」
「ケガはありませんでしたか」
「大丈夫です。むしろヨソ見しててごめんなさい」

ダイアナと同じ言語を話す、その眼鏡の男性に明るく笑い返す。
ちょうど彼は喫煙所からの帰りだったのか、タバコの香りがふわり漂ってきた。
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「良かった。さっきのはチャーリー・チャップリンの言葉?それでつい立ち止まってしまいました。本当にすみません」
「! こちらこそ。昔CMで観たことがあって。・・・ちょっとここのお店、色々売ってるものが私には高いから、つい」

ダイアナがつい溜め息混じりに言ってしまうと、
その男性━━━━ トムは同意とばかりに頷き、初対面の人間に対して過度でない笑みを浮かべる。

「いやいや、分かりますよ。私も今じゃあこういうところに出入りはするが━━━━正直服は着れればい主義ですからね。
 靴下などはワゴンセールで十分という人間です」
「あはは、あたしもそうです」

「ここには休暇で?」
「あっ、えーと。はい。家族の知り合いの、コネで。そちらは休暇ですか?いつも楽しく友達と映画を拝見してます」
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雑誌で映画業界で有名なトムを見たことがあり、ダイアナは勿論覚えてる。
奥さんは高いブランドとかに出てるモデルのアデルで、軽快なアクション映画をプロデュースしてるひと。
『この時代』だと映画監督を始めたばかりで子供が産まれる前かな?とダイアナは頭の隅で計算した。

「どうもありがとうございます。夫婦で休暇ですが、妻はまだ仕事の関係で少し遅れてましてね。
 今週は映画でも観て過ごしてます。そう、チャップリンの映画をやってましてね。そいつを久し振りに観ようかと」
「! あの、失礼ですけど泊まってる人は誰でも見れる奴ですか?ミニシアターの??」

イアンがそういえば映画も観れると言っていた。

「ええ。部屋で予約をしておくんですが、映画館というよりも学校の視聴覚室のようなものですよ。
 今週は20世紀前半特集なので、毎日空いてますがね」
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「あの、すみませんが何時から次の上映があるか、とかご存知ですか?」

「あと10分で始まるので、よければ案内もしましょう。空いてるなら予約もいらないかもしれない」
「助かります」
「これからやる映画は━━━━」

頼んでもないのに、トムはネタバレ抜きの上映予定映画について解説を始める。
イアンと全然タイプが違うし、別に好みじゃないけれど、いいひとだ。

当然2人はシアター入り口から別行動となったが、
上映後には他の年配の宿泊客たちと共にチャップリン映画について、ワイワイと喫煙所で盛り上がることになった。
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部屋に戻ってすぐ、ダイアナと顔を合わせてひと嗅ぎで気付く。

「お前タバコ吸うのか?」
「! あ、やっぱり匂いする?」

ダイアナは黒髪に空気を含ませるように触って、ますます匂いが広がる。
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匂いは平気だが、近くで吸われると咳き込むことがあるのでイアンは煙が苦手だ。

「悪いが、ここは禁煙でな。吸いたいならプールサイドにでも灰皿を用意してもらうか」
「違う違う。あたしじゃないよ。さっきまで映画一緒に観てた人が吸ってただけ」

「へえ、もうダチができたか。同い年くらいの女グループでもいたか?」
「友達っていうほどでもないけど男のひとだよ。イアンよりもちょっと上くらいかな。
 シアターまで案内してもらって映画観たんだけど皆で盛り上がっちゃった。ジュースとか色々ご馳走されちゃった」

映画館に案内してくれたトムも居たけれど、特にダイアナが盛り上がったのはリタイアした元気な老人たち。
孫扱いされて甘えてしまったけれど、自身の祖父母と接したことのないダイアナは非常に楽しかった。
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思い出す彼女が浮かべるそれは、
『16歳のダイアナ』は見せても、ここにいる『未来のダイアナ』がこのイアンにはまだ見せてなかった初めての笑顔。

「・・・ほーう・・・・」

そしてまたダイアナはイアンから少し距離を取って、犬のブーツの方へと居なくなる。
イラッとした。
それなりにナンパもされるだろう。
が、だ。
何があったにせよ、自分がそこまでひどいことをダイアナにするわけもないのは分かる。分かりきってる。
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で、何かあったにしても、いい歳こいてガキみたいにその態度か?
そのくせ、さっさと男にホイホイナンパされて隠しもしねーで、堂々と当てつけかよ?
あれだけいっつもくっついて来やがってるくせに、と事情が分からな過ぎる上に自分が大好きなイアンには非常に面白くない。
別に惚れてるわけじゃないが純粋に不愉快だ。

これから数年後にエリンから指摘される、
『あなたみたいな自信家の人は今でも変わらずにダイアナは自分のことを好きだと思ってそう』という指摘はズバリだった。

「おい。話がある。シャワー浴びたらメシにする」
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無駄にぐだぐだするなど大嫌いなイアンは、決定事項として言い放った。










リゾートハウスのプールに囲まれたディナーテーブルで、
まだイアンの強い瞳から逃げ気味にダイアナはカップを見下ろす。
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「こういうプールで、外で夕飯とか素敵だよね」
「腹も膨れたし本題に入る。
 お前と俺に未来で何があった?いや、何があるんだ。ただのダチっていう関係でのケンカじぇねえよな」

イアンの単刀直入&剛速球に、ダイアナの脳は一瞬ブレーカーが落ちた。

「えっ、なんでっ!?」
「・・・バレないとか本気で思ってんのか、バカが。いいか、ダイアナ。
 全面的に力にはなる。金を返す返さないなんざ、はっきり言ってどうでもいい。
 ただ俺の周りにたまたま居た女に当たるわ、結婚の話題振っただけで怒るわ━━━━ 
 しまいには、何もなきゃナンパされた話をこっちに寄越すような当てつけとか何なんだ?何があったんだよ」
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「!? はっ・・・はあああ!?ちょっと待った待った!当てつけなんかしてないよ、そもそもナンパじゃないから!
 皆で居たって話したけど・・・ってゆうかさ!自分がそーゆーことしか考えないから全人類そーゆー考えだとでも思ってんの!?」

イアンは図星をつかれただけに、むかっとした気持ちが湧く。
下心なしで女に近づくわけがない。若くていい女は結局好きだ、そういうもんだ。そうに決まってるだろうが、バカか。
身勝手なる全男性代表として、イアンはダイアナの主張を鼻で笑う。

「そうに決まってんだろ」
「だからイアンはそうなんでしょ。アレックスなんかは違うと思うけど!?あたしの友達も違うし、イアンだけだね!」

ばち、と厳しい視線がぶつかる。
が、イアンは一息吸って落ち着いた声で、さらにズバリ。

「お前と、デキてたのか」
「・・・━━━━・・」
s2-39 (32)

「で、終わった。か」
「・・・・・違うよ。・・・~~~~~ そもそも始まってもなかった!
 あたしが告って調子に乗ったけど『そういうこと』もなーんもしてないし、時々お出かけしてデートごっこしてもらっただけ!
 ”ダイアナちゃん”だからね。イアンにも、エリンにもみーんなにとってあたしはさ!」

ああ、いやだいやだ!
どうしてこう傷を触るんだろうかと、何も知らない過去のイアンでも張本人だけにダイアナは止まれない。
愛憎に満ちて完全に女の顔になったダイアナから、聞いたこともないような黒い声が出る。

「ホント、今なら自分のバカさ加減に笑えるよ。
 こっちは形振りかまわずに言ったのに同情されて振ってももらえなかったの。
 可哀相だからってデートごっこでオママゴトしてくれてたんだって」
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「・・・」
「今ちゃんと考えれば、そもそも嘘でもスキとも言ってもらってないのに舞い上がってたなんてホントバカだし、
 ・・・・━━━━ あたしもバカだけど、そもそもイアンだってあたしをすごいバカにしてる・・・!」

そうだ、ずっと根底にあるのはその悲しみと怒りだ。
周りのために『いいこでいよう、いよう』と気付いたら優先順位を下げていたダイアナの自尊心が奮い立つ。
あたしにだってプライドがある。

そうして暫く睨みあったのち、イアンはそのまま低く言う。
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「俺は悪かった、とは言わねえぞ。
 正直言って『この俺』ならそんな馬鹿げたことは絶対しない。そんなガキ扱いして適当になんざ、絶対にだ。
 本当にお前の言う通りなんだとしたら最低だとは思うけどな」

今度こそダイアナは立ち上がった。

「あたし、嘘なんか言ってない!!」
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「そういう意味じゃねえよ!お前に知らせてないことがあるんじゃないのか、って話だ」
「!え、・・・!?」

ダイアナの視点だけの話で納得できるかとも思ったが、
イアンは自分自身だからこそ未来でもそんな馬鹿なことするわけないからこそ言い切れる。
本気で来られたら本気で返す、昔アデルにしたようなことはもう絶対にしない。ダイアナになら尚更だ。

今の話は『ダイアナにとっての真実』なんだろうがイアンには強い違和感があるし、実際に事実ではない。
イアンは未来の自分を想像して、考える。
何でそんなことをする必要があった?

「この俺がそんな下らないことやると本当に思うのか?お前にだぞ?」
s2-39 (44)
チビガキだった頃からの仲良しの思い出が、ダイアナのなかでグルグル巡る。イアンのなかにも。
積み重ねた思い出と、信頼と、友情と、まだ男女のものでなくとも愛情だってある。

全てを覚えてるダイアナはそれがあるからこそ許せなかったけれど、
自分のことでいっぱいいっぱいだったダイアナはイアンが指摘した点など思いつきもしなかった。

つまりイアンは過去で仲直りするって分かってたから、自分とままごとをしたということ?
だってそれなら振っちゃって、それで良かったんじゃない?
しかし自分のことであるがゆえに客観的に見れない青いダイアナは、
17歳の夏失恋したときからのイアンの恋人が過去にやってきていた自分自身とは結びつかない。

「・・・・」
「・・・・」

互いに無言のままで考えつめる。
s2-39 (43)
一方でイアンは考えるのをやめた。
正解を知る人間がおらず答え合わせができない以上、時間とエネルギーの無駄だ。

「さっぱりわかんねーな。わからないから考えるのやめだ」
「・・・う、ん」
「にしても、俺がお前とねえ」

ダイアナは妙な恥ずかしさで顔が熱くなり、元来の愛らしさが顔を覗かせる。

「・・・・・・・な、なんもしてないから」
s2-39 (45)
黒く刺々しく怒りを爆発したと思えば、次には白い純真さと共に丸くもなる緩急は、イアンを引きつける。
じろじろとその顔を見ていたが、イアンはからかいもせず真顔のまま尋ねた。

「で、仲直りお前はしてくれんのか」
「えっ」

「やられた分はやった張本人の『未来の俺』に怒れ。ブン殴るなり蹴り飛ばすなり家ん中壊すなり好きにしろ。俺が許す。
 でも”この”俺にはもう、つっかかんな。正直理由も分からないんじゃ別人同然だろ?
 大体こんなとこで知り合い俺たちしかいないのに、そんなのも寂しいだろ」

ダイアナにも一番いい落としどころのようにも感じた。
そしてそうだ。元の時間に戻ったら、もう思うようにやってしまえばいい。
昨日から妙な清清しさがあるのは感情を剥き出しにしてるからだ。

「・・・でもさ仲直りってどうするの?・・・あたしが謝るの?」と、明らかにやりたくないというダイアナ。
「俺も謝んねーぞ」と、同じくやりたくなさそうなイアン。

・・・・。

「じゃ、いつも通りだ」
「うん。だね」
s2-39 (41)
感情が昂ぶったのか、少しだけ涙目がちのダイアナの瞳が暗闇でランタンの反射で輝いた。
夜空に溶けている黒髪のせいで水色のそれは星みたいだとイアンはふと思ってしまったが、口には当然出さない。
この話の流れでそんなコナかけるようなことを言えるはずもないし、言うような性格でもない。

と、ふと思いついてイアンが苦笑気味に息を吐く。

「え?イアンなに?」
「いや、昔を思い出してな。・・・アレックスがいなくなったとき、お前が俺にエリンのこと相談しただろ」
「う、ん」
「・・・━━━ お前のことだからエリンと俺がモメたってのは気付いてただろうけどな。
 俺は元々エリンとああいう事があった以上、元通りオトモダチなんてことはできないような小さい人間だったんだよ。
 でもお前が変えたんだ」
s2-39 (48)
「あたしのおかげで器が大きくなったんだ?」とダイアナが笑うと、
「いや違うな。やっぱ器のデカさは元々だな」とイアンも非常にわざとらしく言った後で笑って続ける。

「で、今はお前に、昔の俺と同じようなことしろって言ったも同然なんだよな。因果なもんだ」
「・・・”エリンとああいう事”ってさ、実はエリンと付き合ってた、とか、・・・だから?」

付き合ってた、という綺麗な表現でダイアナは率直に尋ねた。
実際エリンとイアンがどういう関係だったのかを結局ダイアナはこの年になっても知らない。
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イアンがエリンを・・・・と言うのは知ってるけれど男女の仲になったことあったのか、
詳細はアンタッチャブルになってたことを今のダイアナは気持ちのまま訊いてしまいたいと思った。

「へえ、未来のお前でも知らねえのか。プロポーズはしたんだよ、アレックスか俺か選べってな」
「う・・・え、えええっ!?」
「アレックスもそいつをどこまで知ってんだか俺も知らねえけどな。今更誰も口にしねえしな」

驚きと同時にダイアナに湧いたのは、強烈な後悔。
何かあったのかなとは勝手に想像もしてて、そして仲直りして欲しくてイアンに頼んだのも自分だ。
でもそこまで大きな話になっていたとは思わなかったし、
なにより自分が恋して泣いて傷ついたからこそ、かつてのどれだけ残酷なことをイアンに頼んだかが分かってしまった。

「・・・・・あの、あたしそこまでの話があったとか知らなくて、ごめん、なさい」
s2-39 (46)
「! はっは!だから、相当昔の話しだろーが!いつか笑い話になるだろうよ、いつかはな。
 それに知らなかったからいいんだよ。結果的にいいとこに納まったしな。悪かったな、そういうことを言いたかったんじゃねーよ」

本当にそれを笑い話にできる日が来ることは、このイアンはまだ知らない。

「???」
「単純に、お前も俺と同じようなことになるよーな歳にマジでなったんだなって思ってな。
 ━━━ って、そうさせたのは未来の俺か。 
 ・・・ったくタイムマシンだと?よくもまあ、こんな素晴らしくややこしいもん作ってくれたもんだよ」

「へへへ♪実はちょっと自慢しかったんだよねー」
「・・・・あのな。言っとくが全ッ然ッ褒めてねえんだよ、このバカ!オラ、中入るぞ」
s2-39 (37)
ごん、とイアンの拳骨が優しくダイアナの頭へ落ち、
ダイアナがすかさずやり返しながら室内に向かってゆくのを、犬のブーツはやれやれと見送った。
やっと安心して今夜は眠れそうだ。



→第40話



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Re: タイトルなし
miruさん、こんばんは❤

いよいよ南国編のね!もうこれがやりたくての1話からのパンプキンですから、
書いてる私としてはも~~~フルスロットルなわけで!!(*`・ω・)-3-3-3
miruさんにも、この始まりそうで始まってない過程をドキドキしてもらってとても嬉しいです♪

そして出してゆきますよ~イアンが落ちるに至る『ダイアナの女としての魅力』!
前主人公エリンが色気色気なブロンドちゃんだったし、イアンだし(笑)やっぱりイアンの相手である以上は
『セクシー』『色気』『エロス』、これらをちゃんと持って欲しかったのですけれど・・・・
正直天然ぶりっこダイアナにはそれが欠けていた・・・!(お前本当に親かというほどの、この言いようwww)
>実は顔も体も中身もイアンにとってダイアナちゃんはドンピシャなんだよね。実は!
(`・ー・´)ニヤァ その通りなんですな
ダイアナのイメージは、時折本当にひざがピンクで、
女性から見てもホレボレするような綺麗な艶かしい足の女性がいると思うのですが、そのイメージです!
肌スキンを変えたら本当に足が綺麗で////親ばかな私、とっても嬉しい(*´∀`*)
ちなみに唐突ですが、イアンは足フェチですが、足フェチの性格をネットで検索したら「M」とあって爆笑しましたwww
これが奇跡かwwww

久し振りのトムですよ❤南国が合わない男・トム!(笑)
後から到着するアデルとトム、そしてイアン・ダイアナとが勿論絡んでゆくのでそこも楽しみにしてもらって嬉しい♪

実は最初のプロットの段階では「未来で自分とダイアナがもめた」というのにイアンが気づくというくだりまでは決めてませんでした✦
でも今回の話を書いていて(今回は文字全部書いて→撮影でした)、書き進むとアラ不思議・・・いつものイアン節ですよ、ええ(笑)
ダイアナはともかく、イアンはそもそも受動的なキャラクターじゃないので良い意味でも悪い意味でも、
よく動いてしまうんだよねっ(;*>∀<)
ちなみに悪い意味で動くっていうのは、うん・・・・下半身的な意味です(これはひどいwwww)
冗談です。半分。(www)

ケンカで擦れ違いのジリジリはこれにて終了なので、どうかご安心を♪
書いてて私も楽しくはない過程だったので・・・
やっぱり恋 愛 的 に 惹 か れ は じ め て ジ リ ジ リ が 私一番好きですから!
好きですからーーー!!!(はあはあはあはあ)
次の回から、きっと多分・・・ニヤニヤしてもらえるよ~な展開の回が始まります(そのはず!)
ちょうどキリのいい40話だし❤色々な意味でキリよくしたいなあと思うのですよ(*´∀`*)でへへへ ふひひひひ
 
前もお話したかもしれないけれど『完璧である(そうあろうとしている)イアン』なので
私の頭でどれだけそんなキャラクターを書けているのかは、いつも不安なのです。
ダイアナちゃんの天才設定なんかもそうだけれど、あれは完全にお勉強だけだし。
(天才、といっても、シムズの特質の通り、シムズのとんでもグッズ開発に特化しているし)
でも『本当にいい落しどころ』だと読んで感じてもらえる展開を書けていて本当によかった。ありがとう////

そもそもシーズン2自体、ラブコメちっくを目指していたので切ない展開はこれにて終了します!きっと!!
ところ・・・が!
さてカップルが成立してゆくとして・・・・アチチの2人を書くとなると、
どうしても避けて通れないのがラブシーンなのですが今一番悩んでいるとしたらコレです(爆笑)
だって・・・イアンでしょ!?も~~~~どうしましょう~~~!?/// ←今さら赤面で純真ぶらんでもwww
脳内で手順(爆笑)とか考えつつ「あたし、なに考えてんだろう(真顔」となってます(大爆笑!!)
いまだ本当の本命とのラブシーン自体、出てないし!!!!(イアン・・・wwwww)
今まで通りの描写レベルだと思うけれどイアンが他女性とのウフフが多かった分、差別化できるのかが悩みです。
(真面目に語ってるようでウフフの話っていうwww)

そしてTOP画にも感想ありがとうございます♪
赤=イアンはもう説明不要だと思うのだけれど黒化ダイアナに、ちょうど合うんじゃないかなあと///
そう。ダイアナの欠点(個性)があるとしたら・・・胸ですな!(きっぱり)
エリンとの差別化だけれど水着になると本当に顕著で黒背景に同化しているはずなのにペッタンなのが分かる(´;ω;`)ブワッ
でもそこがいい。欠点こそが個性かつチャームポイントだと思うのでね!
エリンでいえば、ぽて唇。当然そこがいい!と言う人間も勿論おりますが^v^  ←wwww

楽しいコメントありがとうございました❤

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