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第0話 愛しき問題児たち problems






頭の片隅では「何でお前が仕切るんだ」と思いつつも、イアンは茶髪のダニエルから目を逸らせない。
自分でも反射的に似てる、と動物じみた直感を覚えさせられるほど、顔が、行動が。
実に似てるのだ。


「レオの家、中もあんまり変わってない~」
s3-0 (1)
ただ正直見知らぬ他人でもあるので(なんせ数分前に現れた)親しい態度もとれず、なんとも奇妙で居心地が悪い。
エリンは2人自分の息子が来たと分かって目をキラキラさせながら、珍しくソワソワした気配。
そしてダイアナといえばソワソワしてるものの注目してる対象は・・・・

「ダイアナ!中入るぞ」
「! もうちょっと!もーちょっと!!アンドリュー、待って!ここは360度で写真写真ね。サンプルとるのマズイかな」
「結構な硬度ありますよ、これ。削るとなると━━━」
「おい、ダイアナ。アンドリューも」
「もうちょっとー!お願いお願い!」
「すいません、僕もこっち付き合います」

もしもダイアナが犬なら尻尾振りすぎて千切れる勢いだろう。
眼前でぷりぷり揺れる妻ダイアナのお尻をちゃっかり堪能したあと、溜息だけ残してイアンも室内に入った。
s3-0 (3)


アレックスの混乱はそれはもう相当で、まだ一言も何も発してないが目で
ずっと「あれが?俺たちの?」とイアンに問いかけて続けてる。


が、一方で未来から勝手にやってきた一同━━━━
とくに紫髪レオと金髪ラフィは文字通り"我が家のように”迷わずキッチンへと進んでゆく。
自分のテリトリーに”見ず知らずの他人”が!と、やっと覚醒したアレックスは戸惑いながらも彼らを追いかけた。

「ラフィ、お湯沸かして。」
「待って、レオ。おやつ欲しい。なんか甘いもの・・・あった」

金髪ラフィが迷わず開いた戸棚のひとつは常備の菓子類をしまってる引き出し。
さらに紫髪レオも茶器をしまってある戸棚を同じように迷わず開いた。
そんな彼の行動にアレックスは目を見開き、エリンはぱああと一層目を輝かせる。
s3-0 (4)
「母さん、何飲みたい?コーヒー、お茶?」
「え、あっ・・・そうね・・・いまはコーヒーがいいわ」
「だって。ラフィ。牛乳も出しておいて」
「うん。あ、人数的に1コチョコ余るよ。これは母さんのぶん。どーぞ」

紫色がエリンにだけ当たり前に尋ねて、金色もエリンが定めたとおりに従って甘やかす。
エリンは嬉しそうに大好物を差し出されて「ありがとう」ともぐもぐ摘んだ。
まるでアレックス夫妻のような・・・・このデジャブを感じさせる流れにイアンは口を引きつらせる。
息子共までエリンの絶対王政か。

「なあ、レオ。部屋の中だと見えにくい。もうサングラス外したい」と、金髪ラフィがぶすっと声のトーンを落として愚痴る。
「しょうがないだろ?もうちょっとだけ辛抱しとけよ。あとは俺がやるから」
s3-0 (5)
「・・・・。女モノとかダサイよ」
「ったく・・・・ダニエル!ラフィがサングラス外していいかだってさ!」
「死人が出るから、たぶんまだダメ━━━━!」

冗談なのは分かるが、どういう意味だ。
そしてアレックスがとうとう息子達に向かって尋ねる。

「・・・・君達、どうして場所が分かったのかな」
「? だって実家今でもこのまんまだよ?・・・ていうか父さん、超わっかい。なんか、ヘンテコだなあ」
「・・・・・・」
s3-0 (7)
金髪のこの言い方だとアレックス夫妻から独立はしてる・・・大学生以上か?
20年近くにわたって中身が同じままかよ、と思いかけてイアンは自分の生家を思い出した。
物心ついたときから独立するまで、家具は入れ替われど作りつけの収納に納まる食器だのの場所は同じだった。




やっとダイアナがやって来た。
そもそも持ち主・・・がこの中の誰なのか分からないが、
勝手にタイムマシン削って資料採取はいかんだろうと道具まで揃えた時点でやっと気づいたらしい。

「あれ、ちょっと端っこだけ削ってもいい?」
「あたしのじゃないから、だめー!あたしが怒られちゃう」と即却下のダニエル。
s3-0 (9)
ではダイアナが作成者の名前を聞こうとしたところで、
すかさず厳しい顔したイアンが尋ねる。

「なんでアレを使ったんだ、お前ら」

そんなイアンの顔に一番ショックをうけて声を上げるのは茶髪ダニエルから。

「作ったのはあたしじゃないよ、怒っちゃヤダ!」
「使おうって言ったのはダニエルだったけどね」と、金髪ラフィ。
「お前が”あるもの使わないのはバカ”ってわざとデカい独り言いって、ダニエルを煽ったからだろ」と、渋い顔の紫髪レオ。
s3-0 (11)
「でも元々タイムマシンがあることを知って私たちに共有してきたのはレオちゃんですよ」と、紺髪ジュアがきっぱり告げる。
「・・・ジュアがノリノリで起動したんだろ」
「あっ、ひどいです!それは皆がお願いしてきたからやったんです。レオちゃんだって私のお手伝いしたくせに!」

「ちょっとー、レ~オ~。ジュアいじめないでよ!」
「いじめてはないだろっ!すぐに女同士で組むなよっ」

「俺はダニエルの命令で乗る順番のくじ作っただけだよ」
「ラフィ、あんた結局クジの順番守ってなかったでしょっ!」
「だって見たかったんだよ」
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ぎゃあぎゃあわあわあ━━━━責任転嫁、責任転嫁、責任転嫁、責任転嫁、転嫁。
その所在は擦り付けられあって行方不明になる勢いのなか・・・

「うっせえ、黙れ!」

イアンの一喝で、ぴたっと子供達は黙る。

「要するに全員共犯ってことだな」
「「「「・・・・・・・・・・」」」」

「でも結局一番最初に使うって言い出したのは、ダニエル?お前なんだよな」
「・・・そぉ、だけどぉ・・・・」
「”お前の父親”は、ああいうもん遣っていいかどうか判断することぐらい、ちゃんと教える奴だと思ったんだけどな」
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イアンはわざと第三者のごとく言い放つ。
たとえ自分の娘?だろうが、やっぱりまだ知らない相手だというのも手伝っていた。

厳しい言葉をぶつけるイアンに、ダニエルが大ショックの表情で口をきつく結ぶ。
そして大人たちも『やっぱりこういうときに毅然してこそイアンだろう』とイアンに信頼を寄せている彼らは安心もした。



が。

「う・・・・・・・・・っ」
s3-0 (17)
「な」
「う・・・・・うううううううう~~~!!」

イアンに厳しく睨まれ、ダニエルの大きな目からぼろぼろぼろっと涙が溢れ出してゆく。

「な・・・、おい?」
「ううううううううう~~~~~~~~~~~~~~~~」

ダニエルが呻きながら次々に涙を流し、そのたびにイアンの方がうろたえる。

「・・・。ダニエ~ル?」
「うあ・・・あああん~~~~~!嫌いになっちゃやぁだ~~~~~、うあぁぁぁ~~~~ん!」

とうとうダニエルの泣き声が爆発し、ばたばたと涙が零れ続ける。
すかさず友人のジュアが「よしよし、ダニエルちゃん。だいじょうぶですよ~」などとあやし始める。
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「あーあ・・・こうなると大変なんだよなー・・・・」とはーっと溜息の紫髪レオ。
そして「♪泣~かした~、泣~かした~♪イ~アンが泣~かした~♪」と茶化すのは当然金髪ラフィ。
ウッドヤード家の双子がそれぞれにイアンに非難めいた視線を送り、響き渡るはダニエルの泣き声。

イアンの印象を引きずって気の強そうな女の子だと思っていただけに大人たちは驚いた。
腰をかがめ、イアンは声音を和らげて彼女に歩み寄る。

「ダニエル?」
「あたしのこと見て可愛くなくってってガッカリしたからそんなに恐いんだ~~~」
「バッカ、そんあわけあるか。俺に似てそこまで可愛いくせに

このイアンの、初対面のときから変わらない高慢さ・・・呆れるアレックスはちょっとだけ片眉を上げる。
イアンにダニエル。
自身の魅力を自ら堂々と肯定する故に若干それらを下げる要因になることを理解しているのか、してないのか。
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「だって、すごい嫌われた~~~~~!すごい恐いもん~~~~怒ってるもん~~~~~」
「いや、嫌いとかじゃねえだろ!いいからまずは落ち着け、ダニエル!」
「!! うええぇぇぇ!!恐いぃぃぃぃ!!」

ウソ泣きじゃないのがより恐ろしい。
人を見る目は確かだけにイアンは彼女が自分に対して心底怯えてるのが分かって内心相当焦る。
自慢じゃないが今まで生きてきて、まるでいじめっこのように女を泣かせたことは一度も無い(色恋沙汰は別として)

「・・・わかった。わかった、から。もう怒ってねえから。泣くな泣くな、たのむから。
 嫌いじゃない、んなことあるわけないだろ?自分にここまで似てるグレンツを嫌いになるバカがどこにいんだよ」

するとダニエルが涙に濡れながらも自身の可愛さを理解してる表情で尋ねた。

「・・・・・似てる?」
「よく似てるよ、正直な話。俺がこの顔で何年生きてると思ってんだ。
 お前に会えて嬉しくないわけじゃないんだ。それはお前も頭いいから分かってくれるよな?」
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見れば見るほど、よくよく自分に似ているダニエルはイアンの中の”自分大好き”部分を最高にくすぐる。
プライドが高く、本当は泣きたくないから唇をきつめに結ぶ。
そんな表情だけで彼女の気持ちも分かるほどだ。

あとは"親”の欲目を除いても、これなら世間でも美人だと評判だろうという客観的な自分の感想もイアンを満足させていた。
ぐっすん、とダニエルは頷きながら首を傾げながら話を続ける。

「あたし悪いことをしに来たわけじゃないんだよ?」
「そうだよな。それはわかった。じゃあ何で来たんだ?ちゃんと教えてくれるよな」と、イアンの声音はさらにさらに柔らかくなる。
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そのイアンの豹変振りにエリンとアレックスは内心ぎょ、とした。
普段あれだけ不遜な彼のその柔らかいトーンの話し方はダイアナが知る限り、ダイアナ自身にしか向けられない。
ダイアナにだけは抜群に甘いイアン。
ただ自分は女の涙を堂々と武器に使うなどしないが、
ダニエルに堂々と使われたのを見て、こうなっちゃうのかと妻としてはダイアナは苦笑い。

「あのね、あたし大学で考古学専攻してて古代文明の研究してるの。
 でも調べたかった遺跡が、”ここ”でいう来年に洪水で水没しちゃうのね。
 だから、その前に写真撮ったりとか・・・資料集めておきたくって。
 そうしたらあたし達のころにも残ってる遺跡の文字の解読とか色々使えるの」

やっとダニエルもほっとしたように饒舌に語りだした。
彼女にとって、やっと自分が知っている”いつものイアン”になったからだ。

「へえ、考古学か。お前はクラシックなグレンツなんだな。ま、悪いことしに来たわけじゃないのは分かった」
「うん❤」
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ダニエルはまた来たときと同じような笑顔を取り戻すと、いつもしているようにイアンにしがみつく。
さすがにイアンの方が戸惑って、ついダイアナの方を見たら笑い返される。
そして少しだけ苦笑交じりに自分と同じ色したダニエルの髪を軽く撫でた。

「ただこっちで無闇に変なことはすんなよ?ダニエル」
「は~い❤」

ええええええ!お説教は━━━━!?
イアンに対して、義理の父として尊敬してるアンドリューが一番驚いた。
こういう事態があっても『頼りになる!流石イアン!』・・・・というのがお約束のはずだったのに、
我らが砦であるはずのイアンがアッサリ陥落してしまったのだ。
そうなったら残るのは・・・・

「じゃあ用事が済むまでここにいるのね。部屋なら沢山あるもの、家族なんだから使っていいのよ。もちろんお友達もね」
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今も昔も。彼女自身が楽しいことの方を優先しがちのエリン。
しかもそれが”家族”とあっては悩む必要すらない。

「俺たちの子供だというなら、そうしたほうがいいね。使い勝手は分かってるだろうけれど、ちゃんと今のルールを守ってもらうよ」
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イアンが態度を軟化させたもの手伝い、
また(将来のではあるが)家族を迎えて嬉しそうな妻エリンを甘やかすのは一流のアレックスがすぐ同調。


既に”過去は塗り替えられない”と知ってるダイアナなどは良くも悪くも人よりも一歩先行く思考回路で、
子世代の彼らのことよりも『いつになったらダイムマシンの話していいのかな~』などと考えてるのが丸分かり。
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これでは早々に、彼らの滞在はなし崩しに認められることになってしまう!
グレンツ家"長男”アンドリューは奮い立つ。

「ちょっと皆さん待ってください!」

キリッと異議アリの声を上げる。
親たちが頼りにならないなら、僕がしっかりしないと!

「昔あれだけ大変なことがあったじゃないですか。僕はこのまま皆さんに帰ってもらったほうがいいです。
 たとえ勉強のためでも、・・・・・なんでもタイムマシンで解決していいということじゃないと思います」
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しん・・・・。
場が静まり返り、かつてタイムマシンで一番苦労したはずのイアンすら”長男”の指摘に少しだけバツが悪そうにする。
丸め込まれた自覚はあるが、正直ダニエルが可愛いのでどうしようもない(だって自分にそっくりだ)
喉もと過ぎればなんとやらというやつだった。

すると、こういうときに口が回る人間が動き出す。
なんとつい数十秒前まで泣いてた、『もう一人のグレンツ』・・・・ダニエル。

「なんでタイムマシン使っちゃいけないの?」
「・・・・あなたはこれで昔どういうことがあったか知らないから、そういうこと言えるんです」

タイムマシンに母ダイアナを放り込んで、
ある意味ではキューピッド、ある意味ではイアンの苦難を与えたのは自分だ。
アンドリューは毅然として言い返したが無知扱いされたダニエルはむっとしてアンドリューへと歩み寄る。
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「ちゃんと知ってる。でももう来ちゃったんだし、過去に起きたことは誰にも変えられないんでしょ?
 もう起きちゃってること、アンドリューがとやかく言うことじゃないんじゃないの?」
「な・・・・」

「大体タイムマシンがなかったら皆こうやって家族になれてなかったんだよ!それもアンドリューは否定するの!?」
「こ、この・・・・いけしゃあしゃあと・・・何てこと言うんですかっ。僕がいつ家族を否定しました!?」

「し・て・る。少なくともあたしにはそう聞こえますぅ~」
「し・て・な・い・で・す」
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イアンに対するのとは大違いの偉そうな態度のダニエルとアンドリューの間でバチバチバチィッと激しい視線がぶつかり合う。
ダイアナは「まあまあ」と2人をとりなしながらも笑ってしまった。
シムボットであるというこは関係なく、これも”兄妹ゲンカ”ってことになるから正直ダイアナとしてはちょっと微笑ましい。

ただイアンは動物的な直感のようなものでダニエルを我が子として身近に感じてるようだが、
そーゆー類の直感はとんと疎いダイアナは実際ぴんとは来ていない。

(この子があたしの子かあ・・・・。・・・・・。・・・・ボインちゃんだなあ・・・)
s3-0 (32)
いいなあ・・・。
かつては胸の小ささがコンプレックスだったダイアナだが、”何故だか”はともかくとして、いまや人並みのサイズはある。
とはいえ自分の遺伝では絶対にないであろう、
ちょっと動くだけでエリン以上に揺れるダニエルのかなり豊満な胸には注目せざるをえない。


そしてそんな中、金髪ラフィがあはははと笑いながら、”未来”でもお気に入りのロッキングチェアで揺れる。

「すごいねえ、この2人。初対面でも仲悪いや。レオ、俺のぶんのコーヒーとってー」
「自分で立って取りにこいよ」
「けちだなあ・・・自分で取るくらいならいらない」
「お前がお茶のみたいって言い出したんだろう」
s3-0 (35)
ギィコ、ギィコと寛ぎながら「そうだけど、面倒」と言い放つラフィ。
とうとう我慢の限界のエリンが動き出す。

「ねえ!あなたたちは兄弟なのよね、どっちがお兄ちゃんなのかしら!?」
「「俺」」

同時に彼らの声が重なると、紫と金色はにらみ合う。

「俺のほうがマトモだ」
「俺の方が大人だよ?色々」
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ラフィが何かを含ませて言ったところで、
唯一客人としてお行儀の良かった紺色の髪の少女ジュアが呆れたように口を挟む。

「ラフィちゃんもレオちゃんも双子なんですけれど、どちらがお兄ちゃんか分からないんです」
「・・・分からない?」と、自身も双子だったアレックスがオウム返しに尋ねる。

「それを訊くとお父さんが・・・・アレックスさんが。とっても怒るらしくて・・・だから私たち誰も知らないんです」
「? 俺が?」

はて。
そういう教育方針なのか・・・長男次男の区別なく、助け合えだとかそういうことなんだろうか?
今のアレックスにはそういう考えはないし、そもそもそんなの当たり前だ。全く見当がつかない。

「だから皆でタイムマシンの話をしてたときに、レオちゃんとラフィちゃん、
 どっちがお兄ちゃんなのか知りたいねってお話にもなったんです」
s3-0 (30)
「「だから俺だって」」

再び双子の声が重なった。
そんな彼らが・・・・”僕よりも年下の妹とイトコ達”が観光気分でやってきてることに”長男”アンドリューは憤然。

「ダニエルさんっ!あなたそんなことのために皆連れて来たんですかっ!」

途端にダニエルは「なによっ、いじわるアンドリュー!いじわるっ」としっかり憎まれ口はききながら、
またぐっすんぐっすんと繰り返しだす。

「ダニエル止めろって。アンドリュー、変なことはしないようにするから見逃してくれないかな」
「・・・しかし」
「そもそも父さんは理不尽なことを俺らにするようなひとじゃないんだよ。
 まだ俺らが産まれる前の父さんに訊いて理由を教えてくれるならそれでも良かったんだけど・・・理由が分からないにせよ、
 自分自身のことはちゃんと知りたいんだ」
s3-0 (37)
紫髪のレオことレオナルドは真っ直ぐにアンドリューを見つめる。
その確固たる決意にアンドリューも「分かりました」と渋々頷いた。

行動を起こすときに陣頭指揮を執るのは間違いなくダニエルなんだろうが、
影で彼らを支えてるのはこのレオナルドだろう。
そのくせ彼はでしゃばりはせず、まだ涙目のダニエルに「お前はチョコ食べてな」などと笑いかけている。

「レオ・・・レオナルド?」
「なあに?母さん。   ━━━━・・・っていうのもちょっと、・・・おかしいんだけどさ。父さんも母さんも、すごく若いから。
 俺らと歳近いって変な感じだね?」
「きっとあなたにとってはそうね。あなた、綺麗な目ね」
「これは母さんの目だよ。みんなに言われる」

そう言ってレオの照れた笑みはまだ大人のそれよりも素直で、まだまだ可愛らしい。

「それでもう一人はラファエルだからラフィなのよね?レオナルドに、ラファエル!」
s3-0 (39)
エリンはかつてイタリアでアレックスと隠れ住んでいた昔を思い出して、明るく笑いかける。
レオナルドもラファエル・・・ラファエロも、有名なイタリアの三大巨匠の2人だ。
もちろん最後のひとりはミケランジェロだが、その天使ミカエルを由来とした名前の人間はもうフランスにいる。
故ウィリアムの息子ミシェル。

「あなた達は大学生くらいなのかしら?」
「そうだよ、皆同じ学年。俺たち全員同じ大学に進むことになってダニエルとラフィと俺は考古学。ジュアだけは工学科。
 といっても俺のメインはバスケだけどね」
「! あなたプロになるの?」
「なりたいから努力はしてる。けど毎回メンバーに入れるわけでもないって感じだよ」
s3-0 (40)
その話に高校ではバスケットをしていたイアンがヒュウと口笛と共に感心する。
レオはそんなイアンにも慣れた様子で彼に軽く笑いかけながら言葉を続けた。

「キツいけどね。でも好きなことだから楽しいよ」
「そう・・・そうなの!素敵ね」

このいかにも『気配り君』な息子レオも、ちゃんと自身の好きなことをしてるというだけでエリンは最高の幸せを噛み締めた。
(ちなみにラフィの方はもう見るからに好き放題にしてると分かっているので、いい)
自分の子供の頃とアレックスのかつてのことがあるだけに、彼女にはそれがとても嬉しい。

「あなた達、どっちがお兄ちゃんか知りたいって言ってたわよね?それにしてもどうして”今日”来ることにしたの?
 私まだこの通り・・・・出産予定日どころか妊娠もしてないのに」
「ダニエルが調べたい遺跡がある所は雨季と乾季があってさ。
 乾季の決まった曜日にしか遺跡に入れないんだとかで、俺らが生まれるよりもちょっと早めの入りにしたんだ」

すると「飛び飛びでこっちに来るのとかも正直面倒ってのがあるんだけどね」などと金髪ラフィが合いの手を入れる。
s3-0 (43)
レオはそれについて気まずそうに微笑み、

「ま、正直言うとそういうのもあって・・・アンドリューに怒られてもしょうがないってのもあるんだけどさ。
 でも出産直前に知らない俺らが来るのも母さんのストレスになりそうだし、俺らもそれまで手伝いとかできそうだろ?」

誤魔化さず、でも真っ直ぐ誠実に・・・・・そう来られてはアンドリューも改めては怒りにくい。
さらに金髪ラフィが明るく言い放つ。

「でも父さんも母さんも、俺ら仕込むときは俺らがエジプト行ってるときにしてね」
「「「「ラフィ!」」」」

子世代さらにイアンとアレックスまで加わって、いい加減にしろと彼の名前を叫んだ。

「・・・・・あのねえ、ラフィ」
「なあに?母さん。コーヒーとってくれる?」
自分で取りなさい。それより私、あなたの顔もちゃんと見てみたいわ。サングラス、取ってくれないの?」
s3-0 (41)
するとすぐさま、エリン夫妻の双子の金髪ラフィを除く子供世代が、チラチラチラッと視線を不穏に交し合う。
まだ涙目のダニエルに、友人ジュアが「でもラフィちゃんもこのままサングラスで生活なんてできないですよ」と耳打ちした。
なんだというのか。
紺色の綺麗なおかっぱを揺らしながら、ジュアはアレックスの顔をまじまじ眺めて尋ねる。

「あの・・・アレックスさんは心臓悪かったりしますか?」
「え?あはは、いいや?おかげさまで普通に健康だよ。なに、・・・未来では何かあるのかな」
「あ、いえ!そういうことじゃないんです!ご心配お掛けしてごめんなさい。そういうことでは・・・ないですけど・・・」
s3-0 (38)
ほっとしたアレックスが彼女に続きを促すかのように優しく微笑んだ瞬間、
ラフィの「ダニエル!これ返すよ!」という言葉と共に、ハデな女物のピンクのサングラスが彼女の胸元へ放られた。

「え・・・あ・・・ きゃん!」

丸い弧で飛んでいったサングラスは勢いはないものの、完璧なコントロールでダニエルの豊かな胸に当たり彼女の手中に。
そして金髪ラフィは「よっし!」などと、セクハラ感満載にガッツポーズする。

「サイッテー、どこ狙ってんのよ!」 
「ラフィちゃん、メッ!」
「お前、そういうのはやめろよ」
「直に触ったわけじゃないし別にいいだろ?そんな皆マジになるなよ」
s3-0 (45)
連れの3人から叱られようが金髪ラフィは平然。
今日現れてから彼はずっと、こうだ。


こんな調子でマイペースかつ傍若無人でセクハラ放題のラフィの顔がずっと気になっていたエリンは、
とうとう現れた彼の顔にあんぐり口を開ける。
流石に注意しようと思っていたアレックスなぞは本当に言葉が出てこない。
s3-0 (42)



そんなエリン夫妻のうしろで、「とりあえずコーヒーでも」と口をつけていたダイアナとイアンなどは
誇張じゃなくラファエルの顔を見た瞬間に同時にコーヒーを噴出した。










自分達の富の意味を理解している以上、普通に現れた見知らぬ若者達をこんな無条件で受け入れはしないが、
この彼らといえば見覚えある現象と共に何も無い場所から突然現れたうえ、
あきらかに自分を感じる顔立ちだったり、家の中の勝手をわかっていたりして、
そうであることの証明はある意味では十分だった。

最後のこれは決定打。
ラファエル・ウッドヤードの顔立ちは、見まごう事なき━━━━




















「だって泣いてるより怒ってるほうがずっといいよ。ダニエル、今とっても輝いてる」
s3-0 (2)
”母親”エリンから受け継いだ完璧な金髪、かっきりとした眉、目元のアクセント。
しかし母の要素がこれだけあるのにもかかわらず
母譲りで双子のレオナルドと揃いの珍しい真緑色の目は、”父親”アレックスと同じように笑みに合わせて綺麗な三日月になる。

「すぐ適当なこと言う!こッのエロラフィ!」
「うん、そうだね。ごめん。適当なこと言っちゃった。正直意味は無いよ」

怒りのダニエルの言葉にも、ラファエルはその名のとおり天使のような顔であははと笑う。
父親そっくりの顔で「そんなでかい胸してるから、つい狙っちゃった」などと言いながら。







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>miruさん
miruさん、こんばんは~(。◕∀◕。) メモ帳に!うん。私も書いています(笑!)
あとがきと0話にコメント寄せていただいてありがとう///;長かったから読むのも大変だったでしょう!
TOP画は子世代にしようかなとも思ったのだけれどラフィのことがネタバレになっちゃうし、
あとやっぱり彼らが中心だしねっ////ということで大事な4人達にしちゃいました♪

あとがきはそう、miruさんにはコメ返事も含めて結構すでにお話していたことだったんだけど
これを書きながら当時のことを思い出したりして私も懐かしかった~///
やっぱり一番はmiruちゃんも引っかかった(この言い方www)
パンプキン-イアン-ダイアナの△関係ですよ、ええ!!イアンこの野郎となってもらってこその!こその!!(*´∀`*) !

ちなみに前回のコメントのとおり、そうwww
アレックスに関する部分がとってもたくさんでしたわよ、奥様www改めて本当にどうもありがとう(ノ∀`)あはは
流石です、会長さん(そっと会員証発行)

まさかの相関図にさっそくご注目とは!(。◕∀◕。)!
マリアさんは人間ですよ、人間ですよ(サラーっと問題のあるネタバレだよ!:ひっでえwwww)
そうだよね・・・シーズン2では散々騙しを入れちゃったから、ついつい疑って読んじゃうんだよね・・・miruさん?
<※アレックスのS顔をご想像いただきたい>
そうそう!良くも悪くも苦労をしていないのが子世代なので良い意味でちょっとおバカでお軽い、そんなイメージにしています✦

未来から子供が来た、ヤッホイ!とはいかないのが親世代の彼らです!(ただしエリンは除くwww)
アンドリューは今までのエリン・ダイアナよりも主役主役させる気はないのだけれど、
一応主役というポジションで彼は出してゆくつもり❤

ダニエルとイアンのやりとりはもう一番やりたかったところよ?///(書いてる本人が一番楽しんどるwww)
ちなみにダニエルの気質はそのまま子供の頃のイアンのものを踏襲してます!かつてイアンの父ロビンが言っていたとおり「甘えんぼの泣き虫」❤
自分大好きなイアンなので自分に似ているダニエルというだけで自己愛をキュンキュン刺激するんだよね^v^
そんなオナゴが目の前で(இ ω இ`。)フェフェウェェされたら、もうねwww
同じグレンツがイチャイチャしてるなんて、・・・━━━━ ごちそうさまです(なんという自給自足wwwww)
自分の好きなものは好きというぜ、それが強さだぜ!www

おっしゃるとおり、すでにけっこうな伏線をぽいぽい入れてますよ!シーズン2の桜子懐妊自体もある意味伏線だしね!?
ジュアちゃんについては次回がダニエルちゃんたちとの出会い回ですぐにやりますよ!双子たちの長男次男問題についても、ゆくゆくね❤

そして、はい。はい。(・ω・)はい。ご紹介します、アレックスの息子ラフィ君です、ええ。
色違いで泣きボクロ有りでセクハラ魔人のラファエル・ウッドヤード君です。
>はぁ?!!!
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww(言ってる光景を思い浮かべて爆笑)
おお、意外な予想!実はレオの顔は男性化エリンの系統なのです~~~
『エリン顔のレオ』の中身がアレックス、『アレックス顔のラフィ』の中身がエリンということ(`・ω・´)b
具体的な特質についても既にうっすら分かっている部分があるけれど、それがどういうことなのか。楽しんでくださいな(ムフフ)

師走で忙しいけれど、シムズはせっかくの趣味だもんね❤空いた時間に人生をより楽しくしてくれるのが趣味ってもんだ(*´∀`*)
既にはじまっていすシーズン3の予告動画では新しい試みを入れるので時間がかかりそうなのだけれど、
ちょっといい感じになりそう✦
ヒントは・・・・そうだなぁ・・・miruさんが喜んで叫んでくれたら嬉しい•(*థ౪థ)
ただ残念なことに歳末の一番暇になるであろう時期にこのシムズPCを家人が研究論文で使うので年内完成は難しそうなのだけれど(´・ω・`)、

追伸:24をシーズン2から観始めました(あっか━━━━━━━━━━━━んwwwwwwwwwwwwww)

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